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新感覚!解決しないミステリー小説ロンドの旅 Part2ソナタの旅Chap2アントワープの事件

14.猛進

楽団を運営する会社の事務所はブリュッセルにある。ソナタは女性から預かったお金で電話をかけ、適当な理由をつけてアポイントを取った。電車移動の費用もそこから捻出する。目的地までの所要時間は1時間程度だ。

ホテルを出て真っ直ぐ駅へと向かう道中、朝の冷え冷えとした空気に全身が包みこまれ僅かに思考を鈍らせる。無意識にコートのポケットに手を入れると左手に何かを掴んだが、いまはそんなことを気にしている場合ではなく、一刻も早く女性を探し出さなければならない。彼女の命に関わる問題であり、もし最悪のケースになればソナタ自身が深い深い後悔の念に苛まれることも分かっているが、一方で、すべてが罠である可能性も忘れてはならない。女性のことを疑いたくはないが、自身が放置された殺害現場からああもあっさり脱出できて今に至るまで自由の身であること、事件の重要人物である女性と道端で遭遇したこと、その女性に助けられ"クライアント"に迫ろうとしていること…まるで何者かが描いたストーリーの登場人物のような気分であり、何もかもが仕組まれているのではないかと勘繰るのはごく自然のことであろう。だが、罠であろうが仕組まれていることであろうが、ソナタはやるしかないのだ。家族を守るため、一連の"著名者殺し"の真相に辿り着く…華奢な体にはとても収まらないほどの大きく、そして強い闘志燃やし、目をバチっと見開き一心不乱に前に突き進む。

クリスマス前のアントワープの駅は賑わっていた。人々は厚手のアウターを羽織っているが、ソナタはルンビニから予期せずこの地を訪れることになったのでやや薄着だ。当の本人はそんなことは何らお構いなく、自動券売機に並びチケットを手に入れるとブリュッセル行きの電車に乗り込んだ。座席に腰をかけると昨日女性と共に購入した軽食を口にしながら、これからのことを何パターンも想定してシミュレーションを繰り返す。安全な未来はとても想像できないが----。

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