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ミステリー小説ロンドの旅Chap4.ユールマラの事件12.風格

 社長、ご来客中に失礼します。ここからは私がお客様をご案内してもよろしいでしょうか。

 …あ、ああ。頼む。居住エリアだ。

 かしこまりました。

 幸引様、どうぞこちらへ。

肌は白く髪は金髪ショート、明るめのグレーのスーツに身を包み、黒のストレートチップを履いた男は表情を変えない。入室のタイミングから、3人の会話を聞いていたことが推測される。近寄ると香水?と思われる良い匂いがする。何者なのかはわからないが、人としての魅力というか、言葉を2,3交わしただけなのにこれだけ引き込まれることがあるのか。心を持っていかれるオーラがある。

 社長が仰っていた元常務が出入りしていた可能性のことです。当日の入退室の記録は当然残っているのでしょう?

 それが、居住エリアへの入退室の記録は防犯カメラの映像も含めすべて消去されていました。この事実も社長が元常務への疑いを高めた理由です。こんな芸当、外部の人間には相当難しい。元常務はいまだに社内のさまざまな者への影響力を持っていますからね。

これ以上社長を野放しにしては良くないと判断しての行動なのか。考察はさておき、社長室を出ると元のホールまで戻りエレベーターに乗った。またもや気圧の変化を感じるやいなや、到着を知らせるチャイムだ。そのまま3人は居住エリアへと足を運んだ。秘書の男は表情も変えないが、視線も変えず真っ直ぐ前を見続ける。然う斯うするうちに居住エリアの入口に到着した。ここも、カードリーダーやドアが壁の中に埋め込まれていて、セキュリティ性を高める工夫が施されている。中に入ると生体認証装置があり、秘書の生体情報を読ませると先に進むことができた。

 こちらが居住エリアでございます。ここは文字どおりプライベート空間のため、普段は社長も私も入室用のカードや生体認証の権限を持ち合わせておりません。しかし現在は警察の捜査対応のときのみ、ご家族のご許可を頂戴し、一時的に私のみ居住者様の代行としてご案内を許容いただいています。

 我々は警察ではありませんが?

 ええ。社長の"判断"です。

およそ、人が生活していたとは思えないほど何もない。壁、カーペット、ドアはすべて真っ黒。リビングと見られる空間に唯一ある家具のソファも、シャワールームも、寝室のベッドも、黒で統一されている。クローゼットにはTシャツ、ズボン、アウターが掛けられ、その下には3足のスニーカーが置かれていた。衣類も靴もやはり黒で、アウターはすべて着る者から見て左側にボタンが付いている。靴のサイズは23.5〜24.0だった。どこも掃除が行き届いていて、シャツには短いブロンドの髪が一本付いているのに気付いたが、他には塵一つない。定期的に清掃が入っているのだろう。

 居住エリアの捜査は完了しました。色々興味深いことがありましたよ。ご案内ありがとうございます。最後にもう一点お聞きしたいことがありますが、よろしいでしょうか。

 ええ、もちろん。社長から幸引様に全面的に協力するよう仰せつかっておりますので。

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