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新感覚!解決しないミステリー小説ロンドの旅Part2ソナタの旅 Chap2アントワープの事件

19.威圧

幼馴染は無気力状態の娘から楽器と弓を取り上げると自身で音を奏で始め、30秒ほど弾いて手を止めた。

 ほら!みんななら分かるでしょう?どんどん音程がズレていくわ。この2弦をよく見て。

幼馴染は熱が冷めやらぬまま声を荒らげ舞台を降りて観客席の前の方に座っている審査員たちに娘の楽器を差し出した。彼らが2弦をよく確認すると、何かで傷をつけられたような跡が複数箇所に見られる。同時に、場内は響めきさまざまな憶測が飛び交かった。

 静かに!

見兼ねた団長の一喝によりすべて人間が声を発するのをやめ、静まり返った。

 いまはオーディションの最中だ。全員集中してほしい。さあ、次は君の番だよ。ステージに戻りたまえ。

周りと同じく多少の動揺はあるものの決して平静を装っているわけではなかった。団長として、いま優先してやるべきことを考えたうえでの言動であり、これにより他の審査員も次第に冷静さを取り戻していく。だが当人である幼馴染は未だ昂りを抑えきれず、娘は放心状態のままで、その場から動くことができなかった。そんな膠着した状況を1人の女性が動かす。コツコツとハイヒールの足音が聞こえたかと思うとステージの中央で止まった。

 さあ、弾くのよ。

 …ママ。

幼馴染は楽器と弓を持ち無表情で仁王立ちする母親の言葉によって我に返ったかのように見え、再びステージへ上がると楽器を受け取った。娘は自身の母親に肩を抱かれながらゆっくりと舞台袖に戻って行く。それはほんの数分の出来事だったのだが、審査員やスタッフにとってはまるで何時間もの長い時に感じられる。幼馴染は何とか気を落ち着かせステージ中央に立つと弦を含めて楽器や弓の状態をよく確認して、問題ないことが分かると軽く音出しをした。審査員たちは幼馴染のタイミングで演奏が始まるのをただ待ち続けている。

 始めます。

幼馴染は自身を鼓舞するためあえて口に出してから楽器を構え、音を奏で始め、さっきのことがまるでなかったかのような、非の打ちどころがない演奏をやってのけた。本当は2人目が終わったあとに1人目の演奏者もステージに戻る段取りになっていたが娘は現れなかった。

 お疲れさま。これでオーディションは終わりだ。近いうちに結果を連絡するから待っていてくれ。

団長がそう告げるとスタッフたちは撤収作業、審査員たちは審議に入るため楽団事務所に戻る準備を開始した。団長はすぐさま幼馴染の元に駆け寄りフォローに入る。

 勇気を出してあの子の楽器のことをみんなに伝えてくれてありがとう。誰にでもできることじゃない、素晴らしいことだよ。

 私は…あの子と正々堂々と勝負して勝ちたいの。そうじゃないと、これまでやってきた意味がないわ。

 あぁ、そうだな。今日は早く帰ってゆっくり休むんだよ。

そうしてメンバーは会場を後にした。団長は楽団事務所に戻り、団長室で1人オーディションのことを考えているとドアをノックする音に気付く。中に入るよう促すとそこには会場の舞台袖で係員をしてた楽団スタッフが立っていた。

幼馴染は怒りを露わにしながら舞台袖からステージの中央へと駆け進む。娘は首を下げたまま動かないでいた。

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