新感覚!解決しないミステリー小説 ロンドの旅Part2.ソナタの旅Chap.1ルンビニの事件
15.油断
ソナタが被害者と主人の電話の録音データを再生すると、こんなやり取りが確認できた。
あ、もしもし。先輩、いま電話大丈夫ですか?
おう。台本は届いたか?
ええ。ありがとうございます。よく読んでからまた連絡しますね。
ああ、頼む。あと例の事故のシーンはよろしくな。
はい、もちろん。準備万端です。本当に轢き殺さないように気をつけますね〜笑
…思いっきりやってくれ。この作品の重要なシーンだ。生きるか死ぬか。こんなことはお前にしか頼めん。
わかりました。○日○時、○○通りですね。ちゃんとブレーキを踏むから安心してください。
ああ…じゃあよろしくな。
ええ…。
クライアントは手を震わせながら耳を傾けた。再生が終わっても目を瞑り無言のままだ。さすがのソナタもクライアントの気持ちに寄り添い声をかけるのを躊躇うのかと思いきや、意外な言葉を投げかけた。
あなたも…知っていたんですよね?
クライアントの表情はピクリとも動かない。ソナタの言葉に応じることもなく、黙り続けている。ソナタは畳み掛けるようにすぐに次の話を始めた。
あなたは、主人の自宅で戸棚にある台本を見かけた時、こう言いました。"こんなものを飾っているとはな"と。つまり台本の存在を知り、この作品には今回の事故と類似したシーンがあることに気付いていながら、警察に話さなかったことになります。
ソナタはもう一度コーヒーに口をつけた時、自身の異変を感じた。抗えないほどの強烈なな眠気に襲われたのだ。意識を失う直前、クライアントが僅かにほくそ笑んでいるように見えたが、そのままテーブルに突っ伏してしまった。クライアントが無言のままその場を立ち去ると、入れ替わりに1人の黒いスーツの男がやってきてソナタを肩に乗せて運び出し、外に停めていた車に放り込んだ。
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