共産党Fukushima Waterに込められた蔑視と差別を被災者ハラオカと考える
──日本共産党宮城県委員会に属するすげの直子市議、花木則彰元市議、金子もとる県議(以下JCP仙台青葉)は、希釈のうえ放出されてるALPS処理水をFukushima Waterと表現した。
この問題を福島県の浜通りから関東へ避難したハラオカヒサノとともに考えた。
Fukushima Waterと12年前の『福島の車』
ハラオカ「Fukushima Waterは黙っていられる造語ではありません」
カトウ 「福島県の被災地で暮らしていた当事者として問題と感じる点は?」
ハラオカ「その前に、ちょっといいですか。私は『福島の車』と言われてショックだったことを思い出しました」
カトウ 「避難途中のできごとだね。あなたについて知らない人もいるから、説明が必要でしょう」
ハラオカ「地震と津波だけでなく原発事故まで起こって、避難するほかなくなって、知り合いがいる関東を目指しました。高速道路を出て一息つこうと入った飲食店の駐車場で、ナンバーを指さされて『福島の車』と言われました」
カトウ 「ほかの場所でも言われたそうだね。そっくりな証言が新聞でも報道されています」
ハラオカ「Fukushima Waterと、『福島の車』は同じです。むしろ、どこが違うか共産党に聞きたい」
カトウ 「共産党は処理水は汚染水だから、Fukushima Waterというらしい」
ハラオカ「私が運転していた自動車も、放射能で汚染されていると考えられて『福島の車』と言われました。しかも、入店どころか駐車場から出ていけと言われました。私が近づくのも嫌だというのがありありと表情に表れていました。このとき私は何も言えなかった」
カトウ 「あなたが汚染されていると見られた」
ハラオカ「そうでしょうね。『放射能女』と見られていたということです。出ていけと言われた駐車場で、子連れの女性が逃げていきましたよ。たしかに大急ぎで避難して髪も服も見られたものではなかったと思うし、疲れ果てていたからひどい見た目だったでしょう。でも外見を嫌われた以上に、私自身が汚染されていると見られているのを感じました。放射能がうつる、です」
カトウ 「朝日新聞のAERAが『放射能がくる』と表紙にデカデカと書いていた。Fukushima Waterというレッテルは、避難していたあなたや、あなたの自動車に貼られたレッテルに似ている」
ハラオカ「まったく同じです。私は関東に定住しましたが、それでもFukushima Waterは傷つく。福島で暮らしている人は、何倍も傷ついて悲しい思いをしているはずです」
カトウ 「Fukushima Waterと書いた宮城県の共産党支部は、批判にいっさい応えようとしていません」
ハラオカ「X(ツイッター)の投稿を見るのはとてもつらかったけど、やりとりにも目を通しました。福島の人たちが、どれだけ不快に思っているか説明したり批判しているのに無視していますよね」
カトウ 「ひどい話なんだ。『福島の車』や『放射能がくる』に等しい差別であるうえに、当事者の声を一蹴して自己正当化まではじめた」
ハラオカ「Fukushima Waterの問題は、福島への差別を生み出そうとしていることが問題です。それと、差別している共産党が批判している人の声を無視して、敵対している悪者のように扱っている点も問題です。この二つがいっしょになって、差別ではなく正当な区別で、文句を言う人たちがおかしいと印象付けようとしている。しかも日頃、差別反対、レイシストをしばき飛ばせとやっている連中が黙りこくっている」
植民地としての福島
ハラオカ「福島県は勝手に植民地扱いされてきました」
カトウ 「福島県が植民地扱いされているという意見は、あなただけでなく他の福島県の人も言っているね」
ハラオカ「原発事故の前は、関東に電力を供給する植民地。この意識が、ランキン・タクシーの『原発がっかり音頭』の手のひら返しに表現されています──
(反原発集会とランキン・タクシーの『原発がっかり音頭』/動画)
──事故のあとは、暮らしにも気持ちにも土足で踏み込んで勝手なことを言ったりやったりした反原発派に、植民地とみなされました」
カトウ 「Fukushima Waterも、そうなのか」
ハラオカ「原発事故の被災地や福島県といったものを、勝手に支配しようとして利用する気だから『福島水』なんて言う。共産党や反原発派の勢力下におこうとする考えがなければ、Fukushima Waterなんて言いません」
カトウ 「共産党は、どうしても『汚染水』と言いたい。基準値以下でも、何かが混ざっていれば汚染水だ。ここに、さらにFukushimaとくっつけた」
ハラオカ「そんな勝手なことに、誰が同意しましたか」
カトウ 「そうだね、いつの間にかFukushima Waterと使われていた」
ハラオカ「汚染水とFukushima Waterでは、侮辱する対象がちがう。汚染水は国や東電やIAEAに不信感を生み出して、陰謀があるぞ、陰謀のせいで健康──たとえば癌になったり奇形が発生するぞ、とやっている」
カトウ 「Fukushima Waterは、もろに蔑視や侮辱が福島へ向けられているね」
ハラオカ「Fukushimaと言っているのだから、もろに……です。福島県が生み出した汚染水ということにしようとしています。12年前の『福島の車』や『放射能女』のように、福島県と人を傷つけたうえで成り立つ主張です。しかも非科学的です。因習をもとに差別する人たちと、どこがちがうのかということですよ」
カトウ 「搾取だね。踏みつけにして利用する。当事者たちにリターンなんてない。こんなものでリターンがあっても嫌だ」
ハラオカ「もう部外者になった私が発言するのを嫌う人もいると思いますが、福島県内には、植民地にしようとする側に何らかのリターンを求めて尻尾を振る人たちがいます。宮城県だって被災地としても、女川原子力発電所がある県としても、他人事ではないはずだけど、共産党の議員と党員たちは東北を植民地にしようとする側に尻尾を振っている」
なぜここまで疲れ果てたのか
カトウ 「あなたは首都圏からの自主避難者の帰還を助けて、この支援が目ざわりだった反原発の活動家から、私もだけど誹謗中傷や暴力を受けた。ここから立ち直って、ツイッター(現X)で発言するようになったけど疲れ果ててしまった」
ハラオカ「そんなに弱いタイプとは思っていなかったけれど、消耗が激しすぎました。Fukushima Waterがなければ、こうやって出てくるつもりもありませんでした。うんざりしているんです」
カトウ 「私との最大のちがいは、あなたが震災と原発事故の当事者で、私はあなたを通して当事者を知る立場になった点でしょう」
ハラオカ「ちがいばかりを強調したくありません。みんな同じ震災の経験者で、原発事故に直面した国民です。とはいっても、Fukushima Waterという直球の差別や、これからも被差別民として扱ってやるという共産党の強い意志を目にしたときのストレスは数倍、数十倍かもしれません」
カトウ 「当事者差別の話題はもうやめたほうがいいかな」
ハラオカ「私が言い出したことなので、このままでいいですよ。共産党は、下衆なお調子者で原発事故を利用したランキン・タクシーといっしょだし、『原発がっかり音頭』とFukushima Water、汚染魚、汚染水は根っこでつながっています。罰を福島県に与えたがっています」
カトウ 「汚染魚と言った村井あけみ。土地を強制収用してタンクやモルタルを置けといったふじしまともこ。ここにきて宮城の共産党がFukushima Water。どれもこれも呪いだし、罰を与えようとする姿勢は『原発がっかり音頭』と同じだね」
ハラオカ「福島に罰を与えろがいつから出てきたか調べたじゃないですか」
カトウ 「事故直後からだね。斉藤和義の『ずっとウソだった』もそうだったけど、自分たちは騙されてきた被害者だと言い始めた。『ずっとウソだった』の他人事から『原発がっかり音頭』の侮辱と他罰への変化が、世の中の空気を表している」
ハラオカ「当事者として、そういった圧力から逃げられなかったし、駐車場で出ていけと言われたときも何も言い返せなかった……」
カトウ 「なんとかしないといけないと、ツイッターを復活させた」
ハラオカ「以前、私がツイッターのアカウントで発言して、noteも中心になって書いていたときの批判には、福島県と県民に責任があるというような、被害者ぶっているというような、なかには金儲けしたり得していたり無駄に税金がつぎ込まれているというような意識が混じっていたのを感じました」
カトウ 「これは未だに私も感じる。私を福島県民とまちがえる人が多い。反原発運動の誤りなどを指摘するのは、みんな福島県民で、原発推進派と思われている。そのうえで、おまえらが悪い」
ハラオカ「共産党の植民地主義の背景に、罰を受けるべき福島県と福島県民という根強い心理があるからではないですか。そういうものと戦うのに、私は疲れ果ててしまったんです。自主避難者が教えてくれた『瓦礫を被災地のモニュメントにしろ』という活動家の発言。見せしめと罰を与えようとする思想は、このときからずっと変わっていません」
(了)