バカにならない読書術/吉岡 忍、養老 孟司、池田 清彦

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読了日2019/11/27

以前にも読書術系の本を買って、
「よし!立派に感想文を書けるようになるぞ!」
と思ったのだがどうにも私はこの手の本を選べない呪いがかかっているらしい。
もしくは日本語が読めない(大問題)。
読書術に感想文をうまく書ける方法を請おうとしたことが間違いなのか、
それとも世の中感想文なんて誰でも書けるから少しわき道にそれたことを書くしかないのか。

感想文が誰でも書けると思っているのは間違いだと思うんだけどね。
夏休みに読書感想文書いてこいって言われて、
私は比較的書けるからまだしも、
書けないやつって本当に書けなくて代筆してあげたこともあるくらいなんだけど、
そもそも感想文の書き方なんて習わないんだもん書けるわけなくない?

今季の日曜ドラマでフランス料理人が再起を目指す物語をやっていて、
その店のシェフ志望の若い男の子がわざわざ魚市場で魚のさばき方を習ってきて、
自信満々(自信過剰な面もあるけど)に魚をさばくシーンがあった。
でも叱られた。
なぜなら包丁が魚をさばく前にゴボウを切っていて、
そういう匂いの強い食材を切ったあとの包丁で魚をさばくと匂いが移ってしまうから。
と男の子はあとで自分がさばいた魚料理を食べさせられて理解するんだけどね。

言えよ。

男の子が「自分さばきます!やれます!」ってアピールするんだけど、
その場を一俊離れる先輩は理由も説明せずに「いいよ、やらなくて」としか言わない。
自分がまだ未熟だからやらせてもらえないんだと感じた男の子は勝手にさばいちゃう。
で、怒られる。

理不尽〜極まりない〜。

ドラマだから仕方ないとはいえさ、
右も左もわからない若い男の子雇ってるのは自分たちなんだから、
後輩の指導くらいやれよ〜&やれないくらい余裕ないなら雇うなよ〜と鑑賞しつつ文句垂れ流し。
日本社会の現実を描いてますってことなら理解するけどね。
こういう指導力のない(自分で手一杯な)上司がたくさんいます、強いことならね。

話は大いにそれたが、
本書も読書術からはだいぶそれている。
養老センセイだものね。
でもこの人の文章って、
なんだか柔らかくて読みやすいの。
だからするする読んじゃう。
煮過ぎたうどんって褒め言葉にはならないのかな。
私はコシのあるうどんも柔らかいうどんも好きだ。

好みは人それぞれ←

2部構成の本書では、
1部目が養老センセイの語る本の読み方。
最近(といってもこの本、10年以上前のやつ)は何かと読み聞かせが叫ばれるけど、
読み聞かせを子どもが本当に理解できるようになるためには外で遊びまわることが大事なんだそうだ。

田舎生まれながら外で遊ぶ上と下のキョウダイが好きではなかった私は連中からキョウダイであるにもかかわらず仲間はずれにされていたので、
つまり外遊びをしなかった私には身にしみる話である。
まあ結果的に上も下も本なんか読まない典型的な田舎の半端なヤンキーまがいのモノになったけど。

私?
私はそれ以下だが。

とにかく読み聞かせと外遊びはどちらも同じくらい大事である、と養老センセイは語るのだ。

運動が苦手だから読書に走ったのになんてことを言うんだろう!
とがっかりしたことは言うまでもなし。
だが読みすすめて納得した。

たとえば5m先の赤い玉は「りんご」だが、
歩いて1m先まで近づいてみてもやはり「りんご」ではある。
じゃあ持ってみたらどうか。
やはり「りんご」は「りんご」である。

このとき各行程で「赤い玉」が別々のものとして認識し続けていたら、
超高性能スーパーコンピュータ通称「脳」であっても容量オーバーでパンクしてしまう。

そこで距離が変わっても変わらない存在感としてそこにある赤い玉はなんだろうか。

「りんご」だ。

と、
読み聞かせによる「インプット」と外遊びで得る情報「アウトプット」が共同作業をしてくれる。

ベストカップルか何かかな?

もはやSFにも思えてくるこの説明が最高におもしろかった。

そこから会話というテーマにも発展していくのだけど、
本当にもう養老センセイ虫好き過ぎ。
虫は関節がギザギザ(人はなめらか)だから動くたびに音がする。
でも虫は生存のためには静かに動く方が得策なのに、
そんな危険を犯してまで関節をギザギザにしておく利点とはなんだ。
生存より大事なことなのか?
それはまだわかっていないのだけど、
養老センセイの持論では、
「虫にとっての会話」=「ギザギザの関節が動くたびに起こる音」
らしい。

えー
虫って会話するんだー
なんて安直な感想でもいいのだけど、
これもこれでかなり興奮する仮説ではあるよね。
虫にとっての会話ってやっぱり生存のためにあるって考えるのが自然だから、
そうなると発せるメッセージって限られているはずよね。
「逃げろ」とか「餌発見」とか「敵襲来」とか。

でも残念なことに(←)私って日本人で妄想癖の激しい女ときているから、
とっても残念なことしか考えられない。

夏目漱石は「I LOVE YOU」の和訳として、
「今夜は月が綺麗ですね」を考えたっていうけれど、
虫にとっての会話も限られたメッセージしか発せないのだとしても、
その裏側を考えてしまう悪い癖が発動してしまうんですわこれが。

すっごい極端な話、
ミツバチが「餌発見」のメッセージを発したとしても、
その裏側にある思いって個体ごとに違っているかもしれないわけよね。
「愛するわが子(蜂の子)にプレゼントできるとっておきの餌を見つけましたわ」
かもしれないし、
「あんまり美味しそうな餌ではないかもしれない……でも今自分たちの巣は飢餓状態……こんなものでも持ち帰るしかない……」
かもしれない。

どちらもメッセージとしては「餌発見」に過ぎない。
けれどその裏側には個体ごと、
個体が目にした現実ごとに様々な訳し方がされる、
「餌発見」
というメッセージがある。

なんて想像したら止まらない。
これなんてSF小説かな?
「みつばちハッチ」があるよ!
という昭和世代の声は聞こえない。
私平成生まれなんで(大門未知子風に)。

第1部の第1章の内容でここまで興奮するのだけど、
まだまだ続くなんて楽しみだなあ!
なんて思っていたら気づいたら残りページがなかった。
1部ではその他、
日本には読字障害がない理由について。
日本語はひらがなの表音文字と漢字の表意文字があって、
脳は表音文字と表意文字では脳の別々なところを使っているからどちらかが欠けてもなんとかなるから。
逆にアルファベットなんかは表音文字オンリーだから、
脳で表音文字を理解する部分を損傷したらかなりキツイ。

また、
今の若い人が本を読まない問題についても触れられている。
本ってほぼ人だから、
人ってそれぞれ違うんだなってわかっていると本を読む。
同じ本なんてないから。

でも私たちゆとり世代っていうのは、
みんなおんなじ!仲間!よろしくね!
っていう恐ろしいまでの強迫性を持って足並み揃えて行きましょう訓練をこれでもかとさせられた。
私なんか周りの女子より頭1個抜けて大きかったからか周りに合わせて猫背になったし(気のせい)、
周りより落ちこぼれていたけど学習するまで待ってもらえず不出来なまま進むしかなかったし(やる気がなかったせい)、
それでもみんなおんなじみんなおんなじって一緒に走らされたから息切れしちゃって、
なんでみんな休めずに生きていけるんだろうなって、
膝抱えてドロップアウトしちゃった。

そういうみんなおんなじ!前提だと本は読まないんだって。
だって人=本なら本なんて何読んでも同じだし、
何より周りと同じ速度で生きていくためには本なんか読むよりも周りの顔色を見る必要に迫られるから。

ははあ〜ん。
と納得できました。

2部についても語りたい〜。
ホンマでっか!TVでよく見ると池田センセイと養老センセイと(存じ上げず申し訳ない……)ヨシオカセンセイが、
ひとつのテーマについての数ページ程度の対談が載っているのだ。

その中でセンセイ方はオススメの9冊(3人×3冊)を紹介してくれているのだけど、
この人たちは大学教授だの海外での仕事だので忙しいはずなのに、
こんなに本を読んでいるのかと驚き。
私なんてひよっこどころかまだ殻から出てないどころかたぶんまだ受精卵レベル。

ひとつのテーマについても凡人を遥かに凌駕する知識量で語るから、
話があちこち飛ぶの。
でもバラけないのね。
すごいなあ……って。

この本を読んで以降の読書が「バカ」になるかどうかは私次第だけど、
読んで損することはないな。

オススメ本、どこから手を出そうかしら。

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