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愛と書かずに愛を伝えよう。『心をつかむ超言葉術』 を実践してみた

「この本、役に立つの?」

そんな思いを持った方の少しでも力になれればと思い、始めた文章ノウハウ本実践シリーズ。7回目の今回は『心をつかむ超言葉術』を実践してみました。と言いたいところですが、本書はライティング法というよりは言葉を扱う上で大切な心構えの要素が多かったです。そこで今回は心得を紹介かつ合間合間に載っていた文章術ならぬ言葉術を実践していきたいと思います!著者の熱い想いが伝わってきたのでいつもは載せない感想も書いちゃいました。

著者はコピーライターの阿部広太郎さん。電通に新卒入社したが、配属はまさかの人事部。どうしてもコピーライターになりたかった阿部さんは社内のクリエーティブ試験を受けることに。先輩クリエーティブディレクターに特別レッスンをしてもらった阿部さんは、「向いていないかもね」と言われてしまいます。

何度もダメ出しを受け、向いていないと言われ、それでもコピーライターとして現在活躍している阿部さんが大事にしている信念を、たった1500円ちょっとで覗けてしまうんです!では早速紹介していきます。

良い広告と悪い広告

伝える手段の一つに”広告”があります。そして広告には良い広告と悪い広告があります。ごちゃごちゃと説明する前に、アップルの共同設立者の一人、スティーブ・ジョブズと、クリエーティブディレクターを務めたリークロウの逸話をご紹介します。

リーはメモ帳から5枚の紙をちぎると、1枚ずつ丸めはじめた。
全てを丸め終えると彼のパフォーマンスがはじまった。
「スティーブ、キャッチしてくれ」と言って、
紙の玉を一つテーブル越しに投げた。
スティーブは難なくキャッチして、投げ返した。
「これが良い広告だ」。リーが言った。
「またキャッチしてくれ」と言って、
紙の玉5つ全てをスティーブの方に投げた。
スティーブは一つもキャッチできず、紙の玉はテーブルや床に落ちた。
「これが悪い広告だよ」

何が言いたいか、もうわかりましたね?そうです、あれこれ伝えようとしても物事は伝わりません。核となるメッセージを伝えてあげましょう。
伝える手段が広告にしろ、ブログにしろ、まずは受け取ってもらえなければ話になりません。先ほど紹介した逸話のように、一度にたくさんの情報を渡そうとしても相手は受け取れません。それはもう具が入りすぎたカレーのようなものです。貝などのシーフード類や野菜、それに加えお肉をたっぷり入れたカレーは美味しいかもしれないですが、素材の旨みを引き出しにくくなるでしょう。
相手に届けるために、まずは一番伝えたいものを何か決めましょう。
「Less is more」です。

言葉選びに執着心を持つ

阿部さんは面白いルールを自分に課しています。それが素敵禁止。綺麗な女性に出会ったとき、感動する映画を見たとき、誰も真似できないようなパフォーマンスを観たとき、「素敵」と一言で言ってしまうのは簡単です。ただ「素敵」とひと言で言っても、その正体を見極めようとすればきっと「素敵」では間に合わないでしょう。

「素敵」すぎて、一目惚れした
「素敵」すぎて、涙がこぼれた
「素敵」すぎて、興奮して体が熱くなった

のように「素敵」を具体化できることがあるでしょう。

華麗
佳麗

のように「素敵」よりもぴったりの言葉がきっと見つかるでしょう。

「素敵」とひと言でまとめてしまうのは簡単でしょう。ただ誰かに思いを伝えるとき、そんなみんなが使うような言葉では絶対に伝わりません。感じた気持ちを正確に表現できている言葉を見つけるか、その努力をするだけであなたは周囲よりも一歩も二歩も先に進めます。私は阿部さんのこのマイルールを知り、言葉に対する思いの深さに、思わず尊敬してしまいました。

素敵禁止が気になった方はこちらへどうぞ↓
https://note.com/kotaroa/n/nb9c1f0e04e24

愛と書かずに愛を伝える、言葉を探そう

まずは事例を紹介します。ちなみに本書で出てきた実話の中で僕はこれが一番好きです。多少省略します。

一人のホームレスが物乞いをしています。

段ボールプレートには「私は目が見えません、どうかご慈悲を。」と。しかしほとんどの人は通り過ぎていきます。

そこに一人の女性が近づいてきました。段ボールプレートを裏返し、何かを書きました。

すると、次から次へと通行人がお金を置いていきます。
「僕のプレートに何をしたのですか?」とホームレスの男性が尋ねた。

女性は答えた。
「同じことを書いたのよ。ただ、言葉を変えてね。」

そこに書かれていた言葉はこうだった。
今日は素晴らしい日ですね。なのに私は目にすることができません。

光の当て方でものの輝き方が変わるように、角度を変えて言葉を生み出すだけで周囲に与える影響は変わります。今回の話では、お金を欲しいと伝えずにお金を受け取ることができました。光の当て方を探し当てるのは難しいですが、それさえ見つかれば道は切り拓けます。

そしてきっと光の当て方の答えは、自分の中ではなく相手の中にあるでしょう。言葉を変えると、世界が変わることをこの章では教えてくれました。

記憶に残るための5つの法則(名付け編)

本書では数少ない実際に活用できるノウハウです。章名の通り、記憶に残るための5つの法則をご紹介します。

・異なる単語を組み合わせる
・みんなが知る強い文脈を
・見立てて名前をつける
・すでにある名前に違う意味を持たせる
・真逆の言葉を同居させる

異なる単語を組み合わせるは文字通り、二つの単語を組み合わせる方法です。例えば「一番搾り」なんかがそうです。

みんなが知る強い文脈をは、いわゆるパロディです。僕が少しだけおでかけ記事の作成をお手伝いしたとき、この法則を使用したコピーがヒットしました。それがこちらです。

この日本の片隅に。

当時「この世界の片隅に」という映画が流行っていた際にこのコピーを使用した記事を作成しました。すると、ボリュームがあった効果も重なりヒット記事と認定されました。

見立てて名前をつけるは現象を他の何かに例えて名付けることです。本書の例がとても面白かったので引用します。

しつもんニョッキ

ワークショップなどで質問コーナーがあったとき、なかなか最初の一人が出てきません。しかし、最初の一人が手を挙げたらそれ以降は手を挙げやすくなり、次々と我こそはと質問するために手を挙げます。それをニョッキに例えて作られた言葉が「しつもんニョッキ」。なるほど、と思いました。

もう二つの法則に関しても、なるほど!と思わずうねりたくなるような言葉の作り方なので、きになる方は読んでみてくださいね。

感想

言葉術、というタイトルに引き寄せられて購入したら、「全然言葉術じゃないじゃん!言葉術というより心得じゃん!」と初めは思いました。ただ読み進めていくうちに、このタイトルに言葉術とつけられた意味が少しながら推測できました。
言葉は言い換えたら、思いを伝えるただのツール。だとしたら見つめるべきは言葉ではなくて思いです。言葉に変換する前の下準備が最も大事な言葉術だからこのタイトルをつけたのではないかと思います。
本書に書いてあることを実践しようとなると、解像度は高くないので時間がかかるはずです。ただ、ここに書かれていることを意識するだけできっと伝わる言葉を生み出せると確信しました。

「I LOVE YOU」を自分なりに訳してみる

最後に阿部さんが出したお題「I LOVE YOUを今のあなたならなんと訳しますか」に答えたいと思います。

「あ、これ僕も持ってます」

愛の一つの形として結婚があります。そして結婚は同じ場所に住む、同じ時間を過ごす、など”共有するもの”が多い印象(結婚したことないが、だいたいみんなそんな感じ)。阿部さん、どうですか?


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