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目で読む、書き写す、声に出して読む 文章を味わう

沢山の本を読むことがいいのだと思っていた。いろいろな作者の、いろいろな物語に触れることこそが、自分の世界をより豊かに広げてくれるのだと。

でも最近は、もうちょっと時間をかけて、1冊の本に向き合いたくなっている。物理的に新しく本を買うのが難しい、というのももちろんある。そういう状況がまずあって、そこに適応した、というだけなのかもしれない。それでもいい。今はじっくり本を読みたいのだ。

本棚に、読む時間そのものが心地よい本たちのコーナーを作った。本を読みたいときには、そこから1冊取り出して、読む。

週末はNY在住のアーティスト近藤聡乃さんのエッセイコミックを読んでいた。『ニューヨークで考える』の1巻と2巻。『不思議というには地味な話』。

聡乃さんの世界は、すごく不思議だ。聡乃さんは作品を作るとき、子供の頃の感覚や記憶がテーマになることが多いのだそうだ。しょっちゅう幼少期のことを考えているのだとか。

わたしは滅多にそんなことを考えていない。すっかり遠くにあるもののように感じる。だからだろうか、聡乃さんの文章を読んだり、イラストに触れていると、すごく不思議な感じがする。感じることがないところにそっと触れられるような?触発されて自分の記憶を思い出す、というのでもない。とても新鮮な気持ちで、なんだかちょっと妙だけれども、赤ちゃんでもなったような感じが少しする。新しい視線で何かを見ているような感覚というか。物音が一切しない、すごくシンとした静かで真っ白な世界に、ぽつんと体育座りをして座っているような。そして、それは決していやな感じではなくて。ちょっと心細くはあるような気はする。

聡乃さんの作品にもっと触れたいなあと思って、でもやっぱり本なら紙で欲しくて、とりあえずインスタグラムで#akinokondoをフォローしてみた。時折聡乃さんの描く少女がタイムラインに現れてくれて、とても嬉しい。

聡乃さんの本は3冊しか持っていない。全部読み返してしまったので、今朝は田尻久子さんの『みぎわに立って』を手に取った。1番読みたい『猫はしっぽでしゃべる』は実家に置いたままで手元になくて、次に好きなこの1冊にした。波際にも、雲が浮かぶ空にも見える空間に立つ人の後ろ姿が、淡い青とピンクで描かれている。青は、田尻さんが1番好きな色だそうだ。この装幀もとても素敵だ。

田尻さんのような文章が書けたら素敵だろうなあと、ふと思い立って、一章分だけ書き写しをしてみた。そのあと、声に出して読んでみた。目で字を追って読むだけでも充分素敵なのだけど、書いてみても、声に出してみても、やっぱりすごくいい文章だった。好きだなあ。。。

本が常にある生活はもう本当に長くなるけれども、急に新たな付き合い方を覚えたようで、新鮮な気持ちで楽しんでいます。

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