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神田桂一さん「書きたい記事を書きたいから、僕は売り込みをします」DANROオンラインイベント「フリーランスのライターとして生きていくには」

昨日は、オンラインイベントに参加しました。「ひとりを楽しむ」ウェブメディアDANRO主催で、テーマは「フリーランスのライターとして生きていくには」。

ゲストの神田桂一さんのお人柄なのか、イベントでは終始中央線沿いサブカル的ゆる〜い空気感が漂っていましたが(ところどころ爆笑してしまった笑)、それでいて、目から鱗的なためになる情報も豊富で、参加してよかったです!

ということで、備忘録も兼ねて、イベント中にとったメモをもとにレポートをまとめておこうと思います。
(このイベントはライターコンサルの中村洋太さんに教えていただきました。ありがとうございました!)

イベント概要

テーマ:「フリーランスのライターとして生きていくには
主催者:DANRO(ひとりを楽しむウェブメディア)

ゲスト:神田桂一さん(フリーライター)
週刊誌『FLASH』記者、ニコニコニュース編集部記者を経てフリー。『スペクテイター』『POPEYE』『ケトル』『yomyom』『週刊現代』など。著書に『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』(宝島社・菊池良と共著)。
(*DANRO掲載のプロフィール情報を引用)

聴き手:亀松太郎さん(DANRO編集長)

「書きたい記事を書きたいから、売り込む」

イベント開始直後に飛び出したのが、神田さんのこの発言。冒頭からいきなりぐぐっと心をつかまれました。

神田さんはフリーライター歴10年以上、著書の『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』の販売部数は15万部(!)を超えているとのこと!そんな大ベテランの神田さん、いまもガンガン原稿の売り込みをされているのだそう。

どこかで、原稿の売り込みはまだ実績も仕事もない新人がするものという思い込みがあったのですが、自分がやりたい仕事をするために売り込む、という神田さんのスタンスに「本当にそうだなあ」と納得。。

売り込みをする理由と方法については、以下のようにお話してくださいました。

・依頼された仕事だと、やりたくない内容も多い。
・書きたい記事を書きたいから、売り込む。
・編集部に「売り込みの電話です」と電話をかける。
・メールアドレスが載っている場合は企画と原稿を送る。
・ほとんど無視されるけど、全然めげない(気にならない)。
(無視された場合でも、ちがう企画を持ち込んで採用になる場合もある)
・今でも、売り込みはする。
・DANROでの神田さんのコラムは、以下のような流れで生まれた。
神田さんがfacebookで「青春に関してのコラムを書きたい、こんな企画を考えているけど、どこかでかけませんか?」と投稿。
(よく思いつくままに、全方位的な企画の提案をしてる)
亀松さんがその投稿をみて、個別でメッセージを送り、アプローチした

編集者としての亀松さんコメントにも、励まされました。

・ライターさんが売り込みがあっても、媒体に合わなかったり、単純に読む時間がないという場合も多々あるので、かならずしも原稿がよくなかった、というわけでもない。諦めずにいろいろなところにアプローチするのが大事かも。
・ライターさんによって売り込みのやりかたはいろいろ。手紙を書くひともいれば、編集者とよく飲んで関係性をつくる、というひともいる。
・ある程度の実績があり、編集者とのつながりもある場合、SNSで全方位的な提案をするのも仕事につながることもある。

ちなみに、イベントでは神田さんが実際に雑誌の編集部に売り込みをしたときのメールも公開してくれました(*雑誌名、実名などは伏せたうえで)!驚いたのは、そのメールがごくごくシンプルな内容だったこと。

記録をもとにメモしているので、一部異なるところもあるかもしれませんが、ざっくりこんな感じでした。ご参考までに。

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××編集部様

お世話になります。ライターの××と申します。

(窓口がわからなかったのでここに送ったという趣旨の説明)
(書いた記事の簡単な説明)

もしお時間があったら感想などをいただけると幸いです。
よろしくお願いします。

連絡先+原稿の添付
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神田さんのキャリア遍歴その1 ZINEを作る

神田さんの売り込みスタンスのあとは、ライターとしてのキャリア遍歴のお話に。亀松さんが終始にこやかに質問を投げかけ、神田さんがゆるゆる〜と答えているのをリラックスして聴いているうちに、いつのまにか10余年の道のりの一緒に辿っていた感じでした。

まずは、「ライターの仕事をしたいというのは、いつから意識していたの?」で始まり、学生時代から新卒で就職した会社を辞め、ZINEをつくったあたりまでのお話。
(ZINE=個人でつくれる雑誌のような紙媒体)

・高校生の頃から雑誌が大好きで、雑誌をつくるのは楽しそうだとライターの仕事に興味があった。
・就活では出版社2社を受けたものの、不採用。一般企業に入社するものの、馴染めず退職。
・退職後、失業保険をもらいながら、ライターになろうという気持ちを持ちつつ、無職のままぷらぷら。
・2chのスレで大学生が出版社をつくるというスレがあり、大学生じゃないけど書き込みしているうちに盛り上がり、オフ会に参加して仲良くなった。
・オフ会で知り合った大学生たちとノンフィクション系のZINEを作って売ったら、想定以上に売れて自信がついた。
・この頃から雑誌に原稿の売り込みを始めた。
(ただフリーライターとして経済的にやっていけるほどではなかった)
・そのときの大学生たちが卒業後に続々と出版社に入り、横のつながりができた。
・そのうちのひとりが週刊誌『FLASH』で未経験募集のお知らせを教えてくれた。

それまで自信がなかったのに、ZINEが売れたことで自信がつき、この頃から原稿の売り込みを始めたとのこと。ただ、フリーランスでこのままいくのも心もとなく、ZINEを作った仲間から週刊誌『FLASH』が未経験可の求人募集をしているときいて応募し、無事採用になったそうです。

神田さんのキャリア遍歴その2 週刊誌『FLASH』の記者になる

26歳で週刊誌『FLASH』の記者になり、5年間勤務。当時の編集部はオフィスというより部室のようなかなり自由な雰囲気で、めちゃくちゃ楽しかった、とのこと。

・採用後、ニュース班に配属になり、直後にlivedoor事件を取材。
・放火や殺人など、あらゆる事件を追い、取材で全国を飛び回ってた。

週刊誌『FLASH』での勤務経験は、その後のフリーライターの活動にかなり生かされているそうです。

・週刊誌で働いたことで、文章の書き方などを含め、ライターの基礎を一から全部教えてもらった。
・「商業誌は部数なんぼで勝負」のメジャー媒体を経験したことで、企画の出し方などを含め、勉強させてもらったのがすごくいい勉強になった。

とても好きな仕事だったものの、強い愛着を持つサブカルチャー分野を書く仕事に挑戦してみたいと、30歳のタイミングで転職。

某エンタメ企業に転職するものの、3ヶ月で退職

某エンタメ企業への転職し、同社が出している月刊誌の編集部スタッフに。

・月刊誌リニューアルのタイミングで、大好きなカルチャー雑誌の編集長が同社に移籍することになり、その雑誌のようにすると聞いて、ついていった。
・でも実際にはワンマン経営という社風から自由な雑誌づくりが難しく、3ヶ月で退職を決めた。

退職後は人生の夏休みのつもりで、エジプト、ヨルダン、シリア、トルコへのバックパッカーの旅へ。ところが、旅の最中にカルチャー雑誌『ケトル』の創刊メンバーに加わらないかと声がかかり、断腸の思いで旅を中断して帰国し、編集兼ライターとして参画されたそうです。

カルチャー雑誌『ケトル』で働く、そして書籍の出版へ

『ケトル』では村上春樹の文体を書く経験をし、のちに『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』の出版へとつながる。この書籍化に向けての売り込み話も印象的でした。

・10社以上売り込みしたけどだめだったけど、発売翌日には重版がかかり、結果的には10万部以上売れた。
・マーケティングより、自分が面白いと思ったことを信じる方がいいな、と思った。
・SNSを使ったプロモーションはあまりしなかったけど、自分で企画してイベントをしたりはした。
・(亀岡さんコメント)全世界で500万部売れている『サピエンス全史』も最初は出版を断られたらしい!

<Q&A>

*時間の都合により途中退出してしまったため、ほんのさわりだけのご紹介になりますが、実際にはもっといろいろなQ&Aが飛び交ったのだと思います。

編集とライティングどちらがすき?
・編集はクリエイティブな仕事ではあるけれど、いい仕事にするための雑用も膨大にあり、自分には向いてないと思った。
フリーライターとして生活していくのって?
・40代独身ならやっていける。専業主婦の妻と子供を養うのは難しいかも。
・比較的原稿料がいい週刊誌の仕事で収入を確保して、カルチャー紙でやりたいことをやる。
・年齢があがるとフリーライター仲間はどんどんいなくなっていく。
・ライティングだけではなく、漫画の原作を書くなど、仕事の幅を広げている。

イベントに参加してみて

1番印象的だったのは、冒頭にも書いたように、大ベテランの神田さんがいまでも原稿や企画の売り込みをされている、というところ。

「売り込みは仕事や実績のない新人が行うもの」
「依頼仕事は実績と実力のあるライターさんだからできること」

そんな思いこみがあったのだけれど(もちろんその側面は大きいと思いますが)、「書きたい原稿を書きたいから売り込む」と言いきる神田さんはとても格好良かったし、わたしもそういうスタンスでやってみたいな、と思いました。

それから、イベント中に兼松さんがコメントされていたのだけど、週刊『FLASH』にしろ、『ケトル』にしろ、その前に神田さんがなんらかのアクションを起こしていたことが結果としてあとでつながって仕事に結びついた側面があり、当たり前かもしれないけれど、やっぱり行動を起こしていくことって大事だなあと。

ゆるゆると楽しく、それでいて励まされる、とてもいいイベントでした。

ちなみにDANROでは今後毎月同様のオンラインイベントを開催予定で、2021年のテーマは「ひとりで書く」とのこと。興味あるテーマなので、わたしもまた覗いてみたいと思います:):)

*基本的にはDANROのサポーター向けのイベントでありつつ、非会員も有料で参加できるそうです。

*DANROで読める神田さんの執筆記事はこちら。


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