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ファースト・マン 娘を亡くした父の決意

「ラ・ラ・ランド」のデイミアン・チャゼル監督&主演ライアン・ゴズリングのコンビが再びタッグを組み、人類で初めて月面に足跡を残した宇宙飛行士ニール・アームストロングの半生を描いたドラマ。

全編を通して暗く重たい。ほとんどのシーンで死の気配を感じる。
この映画のテーマの根底にあるのは宇宙飛行士ニール・アームストロングの娘の死だ。娘の死を契機にニールは宇宙飛行士に立候補する。

アームストロング役はライアン・ゴズリング


当時の宇宙飛行士は死と隣り合わせであり、常に死を覚悟しながらミッションに参加していた。
娘の死を抱え込みながら、死を覚悟しつつミッションをクリアしていく。事実仲間は実験の失敗で次々と死んでいく。

何が彼を突き動かしているのか・・その回答の一つは人類最初の月踏破の中で明かされる。しかし、今から約50年前の話である。宇宙船は驚くほどアナログだ。
この時代に宇宙空間を航行し月まで行き、着陸し帰ってくる。
完全に無謀である。

当時、アメリカ、ソ連の宇宙開発競争で、無理やり先を急いでミッションを行っていた。安全より成果を優先していたといわざるを得ない。
この映画で描かれる宇宙飛行士はハリウッド的なヒーローではまるで無く、どちらかというと、御幣があるかもしれないが「神風特攻隊」に近い。

ハリウッド映画的なサクセスストーリーの明るさは皆無


出発のシーンも音楽は陰鬱としコクピットはさながら棺おけのように描かれる。
娘の葬式のシーンで棺おけが象徴的に写されているので意図的であろう。

アメリカ宇宙開発のサクセスストーリーとして、それに関わった宇宙飛行士の苦労と成功を感動的に描くのが通常だとすると、やはり、デイミアン・チャゼル監督の非凡さで全く逆の視点で同じ事実をドキュメンタリータッチで描くとこうなる、というのがこの映画の見所だと思う。

そこで描かれるのは娘を亡くし、何かに取り付かれたように死を覚悟しつつ宇宙を目指す父とそれに翻弄される家族の物語だ。

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