moritama

趣味の映画鑑賞の記録として映画評を書いています。 特に好きなのはSFとホラーですが、完…

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趣味の映画鑑賞の記録として映画評を書いています。 特に好きなのはSFとホラーですが、完全なエンタメではなく、ひねりの効いた斬新な映像に惹かれます。 いいな、と思う作品の多くが「A24」作品だということに気がつきましたw そんなジャンルを中心に、お勧めの映画を紹介していきます。

最近の記事

デッド・ドント・ダイ ジム・ジャームッシュ流ゾンビ映画

パロディ満載のゾンビコメディ 普通に考えれば、今時ゾンビ映画はオワコンだろ・・ その意味でこのジム・ジャームッシュ流ゾンビ映画を今作るなら、こうなんだろうなという映画になっている。 まずコメディであること。 いまさらゾンビで驚くような人はいないのだから、変化球が必要だろう。 パロディ満載。 いかにもゾンビ映画に出てきて殺されそうな、不良少年少女が出てきたり、キルビルかよというようなお姉さんが出てきたり・・ まあ、色々な映画の小ネタが満載。中でもアダムドライバーのスターウォ

    • ロングデイズ・ジャーニーこの世の涯てへ 深く美しい心の闇への旅

      物語からの解放 久しぶりに物語から解放された映画を見た。 ゴダールやルイマルのヌーヴェルヴァーグに近い印象。 中国の新進気鋭の監督、ビー・ガンの長編第二作。 物語の起承転結を追おうとすると訳が分からなくなってしまう。時間からも空間からも解放された映画。映画ならではのマジックを体験するといってもいい。 だからストーリーについては触れない。 映画途中から3Dになるというのも前代未聞。どういう合図で3D眼鏡を掛けたらいいのかなと思っていたら、冒頭に主人公が眼鏡を掛けたら3D眼

      • ジュディ 虹の彼方に 伝記映画とは違う生き様を描いた映画

        ジュディ・ガーランドのデビュー当時の描写はあるが、その後の成功からの紆余曲折が描かれるわけではなく、晩年のロンドン公演の期間中に起きたことが描かれる。 したがって、伝記映画とは違い晩年の生きざまを描いた映画といえる。 晩年のロンドン公演を描きつつ、フラッシュバックで挿入される、デビュー当時の撮影所でのエピソードが今の荒んだ心身と結びつく。 彼女の身も心もズタボロにし、47歳の若さにしてこの世を去ったのもハリウッドの商業主義によるものだ。 ただし、一方でこの世界に踏み込んだ

        • 1917 命をかけた伝令 戦場に連れていかれるリアリティ

          なぜワンカット風の映像にしたのか、その必然性はあるのかが確認したかった。 結果、ワンカットで描くことがこの映画の根幹であることがわかる。 ストーリーはいたってシンプル。 通信手段が途絶えてしまった最前線に撤退の命令を伝言で伝えること。その1日が時間軸で描かれる。 ここでのカメラの目線は観客でもある私たちだ。 冒頭での命令を受け取るシーンから、我々は戦場に一緒に連れていかれることになる。 塹壕から一歩出れば、そこは回収もできない死体が転がる地獄。死臭が漂ってくるような映像が

        デッド・ドント・ダイ ジム・ジャームッシュ流ゾンビ映画

        • ロングデイズ・ジャーニーこの世の涯てへ 深く美しい心の闇への旅

        • ジュディ 虹の彼方に 伝記映画とは違う生き様を描いた映画

        • 1917 命をかけた伝令 戦場に連れていかれるリアリティ

          ジョーカー 悪の熱狂の暴走

          2019年製作、監督トッド・フィリップス バットマンに登場するジョーカーの話ではあるが、完全に独立した映画。 ジョーカーの原点を描いているが、本作より前のバットマン映像作品に登場している、どのジョーカーの過去でもない。 全編にわたり、ほぼ主人公アーサー役ホアキン・フェニックスの一人芝居。 いや、ほかにも出演者はいるのだけど、ホアキンのアーサーの視点に映画が支配されている。 その結果、観客がアーサーの視点で感情移入するので、悪のカタルシスに支配されてしまう。自分が悪ではないと

          ジョーカー 悪の熱狂の暴走

          ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド タランティーノのハリウッド愛

          この映画の背景には当時ハリウッドの新進女優であったシャロン・テートがヒッピー・カルト集団、マンソン・ファミリーに殺害された、シャロン・テート殺害事件がある。 私はその事実だけ知って、この映画を見たので、いつものタランティーノ映画を想像し、はらはらドキドキ。 ただ、今回の作品はいつものタランティーノのバイオレンス、グロは抑えている。その分、タランティーノファンには物足りなさを感じるかもしれない。 でも、哀愁漂う、ハリウッド愛にあふれるこの作品もいい!。 今までタランティーノ

          ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド タランティーノのハリウッド愛

          ドント・ウォーリー 美しい短編小説のよう

          故ロビン・ウィリアムズが映画化を切望していた、四肢麻痺の風刺漫画家ジョン・キャラハンの自伝をガス・ヴァン・サントが映画化した。 自伝は読んでいないが、映画はドキュメンタリーを意識したものではなく、過去現在の断片を紡いで一つの物語に仕立てていく短編小説のような構成。 事故による車椅子生活、絶望からの復活という筋立てはよくあるが、この構成、編集がこの映画の秀逸なところ。 それが、この種の映画にありがちな深刻さや教訓的な雰囲気を払拭し、美しさや軽やかさ、文学的な深みをかもし出し

          ドント・ウォーリー 美しい短編小説のよう

          魂のゆくえ 恋愛を超えた愛おしさ

          2017年製作、ポール・シュレイダー監督 イーサン・ホークの代表作になる作品。 抑制の利いた美しい映像。 四角に近いスタンダードサイズの画面は今や珍しいクラシックな比率だ。 カメラも対象物をシンメトリーに写したり、横移動のみだったりと 映画全体を美しく落ち着かせている。 それは、聖職者トラーそのもののようだ。 唯一、この映画でファンタジックな邂逅のシーンが挿入される。 全編きわめて文学的ではあるが、このシーンがあることで映画としての映像の 意味が際立っている。 人間はあ

          魂のゆくえ 恋愛を超えた愛おしさ

          ファースト・マン 娘を亡くした父の決意

          「ラ・ラ・ランド」のデイミアン・チャゼル監督&主演ライアン・ゴズリングのコンビが再びタッグを組み、人類で初めて月面に足跡を残した宇宙飛行士ニール・アームストロングの半生を描いたドラマ。 全編を通して暗く重たい。ほとんどのシーンで死の気配を感じる。 この映画のテーマの根底にあるのは宇宙飛行士ニール・アームストロングの娘の死だ。娘の死を契機にニールは宇宙飛行士に立候補する。 当時の宇宙飛行士は死と隣り合わせであり、常に死を覚悟しながらミッションに参加していた。 娘の死を抱え込

          ファースト・マン 娘を亡くした父の決意

          バーニング劇場版 薄気味悪い向こう側

          「シークレット・サンシャイン」「オアシス」で知られる名匠イ・チャンドンの前作から8年ぶり監督作で、村上春樹が1983年に発表した短編小説「納屋を焼く」を原作に、物語を大胆にアレンジして描いたミステリードラマ。 村上春樹の原作ははるか昔に読んではいるが、すっかり覚えていない。 そしてこの映画を見ても思い出せない。 まあ、原作は原作として、この作品にも村上春樹の小説と共通する何か得体の知れない薄気味悪さのようなものが存在している。 象徴的なのが「井戸」だ。 村上春樹の小説では

          バーニング劇場版 薄気味悪い向こう側

          ボヘミアン・ラプソディ 音楽映画の傑作

          クイーンの演奏シーンの素晴らしさ オープニングのフレディがライブエイドの舞台に上がるシーンで、なぜだかわからないが涙が滲んでくる。 多分、ライブエイドのシーンの素晴らしさを想像してしまったからだと思う。 この映画の素晴らしいシーンはやはりクイーンの演奏シーンに尽きる。 逆を言うと、ドラマのシーンは想像していた通り、人間フレディの人生を深くえぐり出す訳ではなく、通り一辺倒のものである。 一応、彼の出自の苦悩やスターの孤独さゆえの暴走などが描かれるが、それが映画のメインでは

          ボヘミアン・ラプソディ 音楽映画の傑作

          未来のミライ 家族という奇跡の物語

          2018年製作、『サマーウォーズ』『バケモノの子』などの細田守監督作品。 当時あまりに酷評が多く、あまり期待はしないで見たのだが、酷評を覆された作品。 確かにCV上白石萌歌のくんちゃんの声の違和感はあるのだが、次第に慣れた。あまりにこの声の不評感が見る人のイメージを引っ張ってしまっているのではないか。 また、今までの細田作品に比べてエンターティメントの要素が少ない為、その期待感に応えられていない部分で評価が低下しているようにも思える。 いずれにしても、前作の「バケモノの子」

          未来のミライ 家族という奇跡の物語

          万引き家族 家族の解体

          偽三世代家族 2018年の是枝裕和監督作品。第71回カンヌ国際映画祭最高賞パルム・ドール受賞。 貧困、犯罪、虐待、誘拐などを扱っているのにこの映画に悲壮感は無い。 むしろ楽しそうに見えなくも無い。 ここにあるのは昔ながらの三世代の肩を寄せ合う家族だ。 しかしこの家に集う家族はそれぞれに心の闇を抱えており、健全ではない。 是枝監督は血のつながらない家族、万引き、詐欺、ゆすり、窃盗、誘拐などの犯罪を犯す最低の家族を登場させることで映画による家族の解体を図る。 その上で、逆説的に

          万引き家族 家族の解体

          ブレードランナー2049  人間という存在の危うさ

          前作とは全く違う世界観 前作のブレードランナーはリドリースコット監督がSFとハードボイルドの融合を試みて大成功した映画だ。 ハリソンフォードはまさにハードボイルドの主人公として典型的なかっこよくて強いが少しドジで人情深い役を演じきってみせた。 その点で今作のブレードランナーは意図するところが全く違う映画といえる。そうした違和感が「これはブレードランナーではない」といった論評を生んでいるのだろう。 この映画はブレードランナーの設定や世界観を踏襲はしているが、ドゥニ・ビルヌー

          ブレードランナー2049  人間という存在の危うさ

          パターソン 毎日普通の朝が来る幸せ

          1週間の出来事を淡々と描く 2016年公開。ジム・ジャームッシュ監督。 米ニュージャージー州パターソンに住むパターソン氏の何か起こりそうで、何も起こらない1週間を淡々と描く作品。 しかし、日常の中に不思議なエッセンスが散りばめられており、ある意味ドラマチックですらある。 個人的には村上春樹の小説を想起したが、現代アメリカ小説的といった方がいいかもしれない。 パターソンは退役軍人でバスの運転手 パターソン(アダム・ドライバー)は退役軍人。(ベッドで眠るサイドボードに軍人の

          パターソン 毎日普通の朝が来る幸せ

          メッセージ 非ゼロ和(ノンゼロサム)と過去現在未来の話

          哲学的SF映画 2016年公開、ドゥニ・ヴィルニューヴ監督の出世作。 観る前は「未知との遭遇」的なSF映画を想像していたが、「2001年宇宙の旅」の系譜の哲学的SF映画であった。 物語の軸は2つ。 1つは突然現れた宇宙人の目的を探る話。 1つは母親と娘の話。この2つの話が時間軸に関係なく同時進行する。 非常に静かな映画なのだが、この2つの構成が謎なためサスペンスとして退屈することなく集中して見ることができる。 世界12ヵ所に現れる謎の物体 物語のキーとなるのが宇宙から

          メッセージ 非ゼロ和(ノンゼロサム)と過去現在未来の話