moritama

趣味の映画鑑賞の記録として映画評を書いています。 特に好きなのはSFとホラーですが、完…

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趣味の映画鑑賞の記録として映画評を書いています。 特に好きなのはSFとホラーですが、完全なエンタメではなく、ひねりの効いた斬新な映像に惹かれます。 いいな、と思う作品の多くが「A24」作品だということに気がつきましたw そんなジャンルを中心に、お勧めの映画を紹介していきます。

最近の記事

君の名は。 時空を超えた赤い糸 

SFの古典的テーマタイムパラドックスやパラレルワールドをベースにしたSFは古典的なテーマで全く新しい切り口ではないので物語り自体はそんなに驚きはしない。 ただ、こうしたSFは10代から20代の若い世代はあまり読んだり見たりしていないのできっと斬新に感じるのだろう。 それよりも、多分だが、新海監督は純粋に「運命の赤い糸」はあるんじゃないか、というロマンチックな話を誰が見ても面白いエンタティメントとして描いてみたかったのではないかと思う。 よく聞く話として、「ひと目合ったとき

    • シン・ゴジラ 伝統的カイジューエイガ

      得体の知れない恐ろしいもの=カイジュー庵野秀明監督が自分の人格形成に影響を及ぼした過去の特撮作品、または自分の作品をリメイクするシン・シリーズの第一弾。 細かい設定についてはあえて説明せずに多様な解釈が出来るようにしていますが、実は作り手側もそんな深く考えてないかもしれないので、適当な解釈でいいように思う。そこはこの映画の大事な部分ではないので。 では、庵野監督にとって何が大事かというとかつてのゴジラ映画が当時の技術や大人の都合で本当はやりたかったのに出来なかった事を今の

      • エクス・マキナ 検索エンジンの薄気味悪さ

        AI vs.人間のサイコスリラー世界最大手の検索エンジンで知られるブルーブック社でプログラマーとして働くケイレブ(ドーナル・グリーソン)は、滅多に姿を現さない社長のネイサン(オスカー・アイザック)が所有する山深い別荘に招待される。 しかし、人里離れた別荘を訪ねてみると、そこで待っていたのは女性型ロボットのエヴァだった。 ケイレブはそこで、エヴァに搭載されるというAIの実験に協力することになるが、美しいエヴァに心を奪われてしまう。 平たく言うとAI vs.人間のSFサイコスリラ

        • レヴェナント:蘇えりし物 ディカプリオとイニャリトゥ監督のアカデミータッグ

          自然に対しての人間の業の小ささ単純に復讐とサバイバルを描いたエンタティメント映画として見ても十分面白いのかもしれないが、「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」のイニャリトゥ監督がそんな単純な映画を作るはずも無く、いったい何が描きたかったんだろうと考察する。 主人公グラスは瀕死の重傷を負いながらも息子を殺したジョンを追う 舞台は西部開拓時代のアメリカ、季節は極寒の冬。 雪が降り積もり、かすかな太陽の明かりしか届かない風景は限りなく美しいが、人間にとっては厳しい

        君の名は。 時空を超えた赤い糸 

          ヘイトフル・エイト タランティーノ夢の結晶

          タランティーノの映画オタク炸裂この映画は単純にストーリーを楽しみたい人には向かないのかもしれない。 しかし、映画を映像の総合芸術として鑑賞したい人にとってこんなにも魅力的な作品は近年稀だ。 タランティーノの映画オタク、特にマカロニウエスタン好きは有名な話だが、ここまでマニアックな夢を実現したのは奇跡的だったのではないか。 まず、よくぞやってくれたのが、ウルトラパナビジョン70という70ミリフィルムで撮影したということ。 デジタルカメラ撮影がスタンダードの今の時代によくも許して

          ヘイトフル・エイト タランティーノ夢の結晶

          スターウォーズ・フォースの覚醒 J・J・エイブラムスの職人芸

          新シリーズのプロローグを滞りなく全うウォルト・ディズニーによる新たなシリーズとして、ちゃんと期待に応える面白さ。 さすがJJエイブラムス。 ハリウッドが金と人を惜しみなく使い、マーケティング的に映画を作れば全世界の期待に応えるこれだけのものが作れるという事。すごい事だ。 逆に言うと期待を裏切るほどの新しい驚きや面白さはないという事。 なので職人芸。 ヒロイックファンタジーの要素が新しい 新しさでいうと、森の中での決闘や荒れた海に囲まれたヨーロッパを思わす島などヒロイック

          スターウォーズ・フォースの覚醒 J・J・エイブラムスの職人芸

          恋人たち 都市の底のドブ川からも見える小さな青空

          橋口亮輔監督の7年ぶりの作品美形の売れっ子俳優が一人も出ていないかつてのATG系の文芸映画。 それを大手の松竹が製作していることにまず驚いた。 超有名監督でないと興行的に難しい文芸作品は作れない現状で、才能のある若手監督に大手が出資するこの試みは評価されていいだろう。 そして、橋口監督が7年ぶりに監督した「恋人たち」は近年稀に見る日本映画の傑作といえるのではないか。 通り魔殺人で妻を失った男の苦悩 一見ふわっとしたタイトルのイメージとは180度違う、歯を食いしばって生きる

          恋人たち 都市の底のドブ川からも見える小さな青空

          キングスマン 品のいいおげれつ

          変化球のスパイ映画あまり内容や評価も確認せずに見たのだが、ひっくり返った。 面白すぎる。 タランティーノほどセンスは良くないかもしれないけど、似ている。 スケールの大きいタランティーノという感じ。 悪趣味というほどの残酷描写は突き抜けていてアートの領域。 多分、ブライアンデパルマをリスペクトしているようだが、このアクションは独自性を確立しているのではないか。 頭が次々に爆発するシーンはバカバカしすぎて大爆笑。(周りの人は引いていたようですが)これ、コメディーだかシリアスな

          キングスマン 品のいいおげれつ

          ロマンス 大島優子の当たり役

          「生きていればなんとかなる」という映画大島優子はAKBの頃からどこか影があるアイドルだった。 家庭環境で苦労したイメージ。少なくとも裕福で明るい家庭で育った雰囲気はない。 その意味で、女優として少し暗い過去がある人物を演じるとぴったりはまる。 この映画でも仕事は出来るが、男癖が悪い母親のいる恵まれない家庭で育った女性という役がはまっている。 この映画は全体に死の気配が漂っている。自殺をほのめかす母親からの手紙や何度映画を作っても失敗する映画プロデューサーは死のうかと思い(?

          ロマンス 大島優子の当たり役

          セッション デイミアン・チャゼル監督の出世作

          アートとエンタメの狭間特に劇的なストーリーの展開や重層的な複雑な展開もなく、ストーリーにかかわる登場人物は5人ほどというシンプルさ。 このシンプルな構成で2時間、息も付かせぬほどの面白さで見せてしまいます。 いやー本当に台本と演出の上手さ。これぞ映画。 テーマはたぶん今の世の中の温い教育では歴史に残る偉大な人物は出てこないのではないかという警告。 とにかくフレッチャー(J・K・シモンズ)という教師は常軌を逸した変態。 才能が有ると見込んだ生徒を集めて徹底的にいたぶる。 暴

          セッション デイミアン・チャゼル監督の出世作

          インターステラー クリストファー・ノーラン監督、渾身のSF大作

          2001年宇宙の旅×家族愛クリストファー・ノーラン監督恐るべし。 近年まれにみるSF傑作映画を作ってしまった。 2001年宇宙の旅のストイックさを除き、エンターティメント性と人間ドラマを加えたハードSF映画といったところだろうか。 テーマを一言で言うと「親子の絆は時空を超える」ということになるのだろうが、この使い古されたテーマを壮大なスケールと映像、説得力のあるSF考証、たたみかけるストーリー展開で描ききってしまう。 5次元という概念で科学的に時空を超えるのだがこの辺は今

          インターステラー クリストファー・ノーラン監督、渾身のSF大作

          リトル・フォレスト夏・秋 / 冬・春 橋本愛主演の傑作

          夏・秋編 橋本愛がひたすら作る、食べる橋本愛が作物を畑で育て、収穫し料理し食べる。そしてまた作り食べるシンプルな映画。 ただし、その繰り返す作業は全く退屈することなく美しく感動的ですらある。 原作が未読なので、今後冬春編で展開があるのか分からないが、夏秋編では特にストーリーが展開することも無く山里での生活が瑞々しく描かれるのみ。 主人公がなぜここで自給自足の生活をしているのか、母はなぜ姿を消したのかなどは冬春編で描かれるのだろうか。 クライマックスは鴨をさばき調理し食べる

          リトル・フォレスト夏・秋 / 冬・春 橋本愛主演の傑作

          LUCY/ルーシー リュック・ベッソンの快作

          無茶苦茶のようで意外に破綻していない駄作といえばそうかもしれないが、個人的には傑作と言いたい。 なぜなら、1時間半、時間がたつのも忘れて創造の世界にどっぷりとつかれたから。 アクション、フィルムノワール、コメディ、サイコサスペンス、SF、ホラーなど、これでもかというほど要素を詰め込んでいながら破綻していないのが驚き。 リュック・ベッソンはやはり只者ではない。 映画はストーリーではなく映像を楽しむものだという映画。 いろいろとメッセージもこめられているが、その辺は流しても充分楽

          LUCY/ルーシー リュック・ベッソンの快作