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メッセージ 非ゼロ和(ノンゼロサム)と過去現在未来の話


哲学的SF映画

2016年公開、ドゥニ・ヴィルニューヴ監督の出世作。
観る前は「未知との遭遇」的なSF映画を想像していたが、「2001年宇宙の旅」の系譜の哲学的SF映画であった。

物語の軸は2つ。
1つは突然現れた宇宙人の目的を探る話。
1つは母親と娘の話。この2つの話が時間軸に関係なく同時進行する。
非常に静かな映画なのだが、この2つの構成が謎なためサスペンスとして退屈することなく集中して見ることができる。

謎の物体が世界の12ヵ所に同時に現れる

世界12ヵ所に現れる謎の物体

物語のキーとなるのが宇宙からの謎の物体が世界の12カ所に同時に現れるというシチュエーション。日本では北海道に現れる。
ここで、あれ?と思うのだが、各国がバラバラに各国の知見でこの物体との接触を試みる。この映画ではアメリカの対応が描かれる。
ある国は相手を理解する為の対話、ある国は攻撃の準備に入るなど足並みはそろわない。

非ゼロ和(ノンゼロサム)

人間は子供の頃から競争や勝負を教え込まれ、無意識に相手に勝つことを目指す。よく、ゼロサムというキーワードを耳にすると思うが、これは誰かが勝てば負けるものがいる、総体としてみれば勝って負けるのでゼロという概念。
非ゼロ和(ノンゼロサム)という言葉がこの映画で登場しキーワードになるのだが、これは要は誰も負けずに相対的に勝っている状態を指す言葉との事だ。

世界はどこが勝つとか負けるとかに関係なく一つになれるのか・・宇宙人と地球人も非ゼロ和になれるのか・・もう一つ重要な設定が宇宙人は行為と文字に連動性がなく、過去現在未来の時間の概念も持たないということ。
これは正直難しくて今ひとつ理解できないでいる。そして、主人公のルイーズもこの宇宙人との接触を通じ、この感覚に支配されていく。これが母親と娘の話のポイントになっていくのだ。

主人公の言語学者ルイーズ(エイミー・アダムス)

そして、ルイーズは重要な決定を下すのだが、これは非常に重く、切なく、賛否が分かれるところ。
多分この部分がこの映画の賛否が分かれるところなのだろう。


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