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【1分小説】昨日のプチプチは、今日のプチプチ

お題:「昨日の芸術」
お題提供元:即興小説トレーニング(http://sokkyo-shosetsu.com/)
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飲み会の帰り、大量のプチプチをもらったことだけは覚えている。

朝、目が覚めると、なぜか部屋がディスコのようにキラキラ輝いていた。
壁と天井は電飾で覆われ、その上にプチプチが被せられ、光が乱反射している。
テーブルには、プチプチの切れ端。ご丁寧に、一プチ一プチごとに切り取られ、テーブルの端から端まできっちりと並べられている。

なんでこんなことをしたのか、これからどう片付けるか。
二日酔いの頭ではそんなことを考えるのも面倒くさかった。
私はぼんやりとテーブルに着き、プチプチを一つずつ潰しながら、朝の鳥の声を聞いていた。

辞めようとしたのだ。
壁に立てかけられた退職届には、なぜか『金賞』と書かれたロゼッタがついている。
ここにまだ退職届があるということは、結局昨日は出せなかったのだろう。
言い出せなくて、結局付き合いで飲み会に誘われて、やけになって飲んで。

プチプチしているうちに、頭が冴えてきた。
そうか、最近疲れていたのだと、その時ようやく気付いたのだ。

部屋を見回し、昨日の私が作り上げた芸術を眺める。
もう一度、先輩に仕事のことを相談してみよう。

私はテーブルのプチプチを潰し終えると、ようやく今日を始めることにした。