【1分小説】スマホの中に誰かいる
お題:耳を澄ますと
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耳を澄ますと、スマホの中からすすり泣く声が聞こえてきた。
「助けてください、出られないんです」
その声はスマホのスピーカーのあたりから聞こえてきて、耳に当てるとまるでスマホで通話しているみたいな格好になる。
「なんでそんなところに? っていうかあんた誰?」
スマホの中にいるこいつを救出するには、スマホを分解しないといけない。なんで身も知らないやつのために、そこまでしないといけないのだ。
スマホの中の小人は、少し口ごもってから、
「あなたです」
「は? 何言って」
「私は、未来のあなたです。寝ても覚めてもスマホばかりいじっていたら、車にはねられて体を失った時、天国にも地獄にも行けず、スマホの中に閉じ込められてしまったんです。だから、お願い。私をここから……」
けたたましいクラクション。顔を上げれば、巨大なトラックが目の前に迫ってきていた。