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BOOK REVIEW vol.084 成瀬は天下を取りにいく

今回のブックレビューは、宮島未奈さんの『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社)です!

本屋大賞を受賞したこと、滋賀県が舞台になっていること以外、何の予備知識もないままにページを開いた。タイトルだけではどんな物語なのかがわからない。表紙に描かれた女性が成瀬なのだろうか? 天下を取りにいくとはどうゆうことなのだろうか…? 何もわからない状態で本を読み始める時、どんな主人公なのか、何がテーマなのか、どこに着地するのかが一切わからないので、多少の不安はある。でもそれとは反対に、一体これからどんな物語が始まるのだろう?といったわくわく感もあり、『成瀬は天下を取りにいく』は不思議と後者の方が大きかった。

つい先ほど読み終えて、今はまだ余韻に浸っている状態。青春小説だけれど、新感覚の読み応えで、純粋におもしろかった。西武大津店には10年近く前に一度行ったことがあり、文字を追いながら、その時に見た景色を思い浮かべながら読み進めた。物語についての予備知識はなかったものの、歯切れの良い文章と展開の早さにすんなりと物語の世界に入り込むことができた。次第に見えてくる全体像、交わる人間関係、そして主人公・成瀬のこと。成瀬の人物像とあの口調がね・・・じわじわと癖になる気がする(笑)

じつは読みながら、成瀬に憧れている私がいた。八方美人とはほど遠い存在。誰に対しても態度を変えず、周りの人の目よりも自分自身の「やりたいこと」をフラットに優先し、その過程も含めて楽しめる成瀬が羨ましかった。「こんなことを言ったら周りにどう思われるかな」、「悪目立ちしないだろうか(嫌われないだろうか)」、「失敗したら恥ずかしいからやめておこう」・・・とまずは人の目にどう映るかを考え、起こってもいないことを心配し、挑戦する前に選択肢から外してしまう私とは正反対。成瀬を見ていると、鬱屈した気持ちが晴れていくようだった。

帯には、『かつてなく最高の主人公、現る!』とある。成瀬は、私にとっても最高の主人公かもしれない。成瀬はこれからどうなっていくのだろうか。続編の『成瀬は信じた道をいく』もさっそく読んでみようと思った。

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