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スパイス・ハーブについて

割引あり

スパイスとは?

今回は特別編として、スパイスについての話になります。
日本人がスパイスや香辛料という単語を聞くと、カレーやらエスニック料理などをイメージする。
つまり、日本料理などにはあまり使われず、どちらかと言えば暑い国で食べられているイメージである。

実は日本でもスパイスは普通に使われており、ワサビや大葉、言ってしまえば大根ですらスパイスという定義になる。
ではまず、言葉の定義の整理から始める。

【スパイス】
風味が凝縮されている植物の部位のこと。
種子、果実、根、茎、花、樹皮など全て含む

【ハーブ】
一般的には植物の葉

【香辛料】
スパイスのこと

となる。
ただ、明確な定義があるわけではなく、国によっても違ってくる。
今回は、全てスパイスと表現する。

スパイスな基本的な性質を知る

スパイスを単純に分解すると
香り(風味)+※味(刺激)
となる
※辛味は味ではないが、今回は分かりやすくするため

まずは、「香り」の性質から話をする。

①揮発性である
人が香りを感じるためには、香り分子が空中に漂わなければならない。
つまり、常温で気体に性質(揮発性)をもっていなければならない。
常温でも気化するため、加熱すればさらに気化が進み香りが立つ。
言い換えれば、飛び去ってしまう。

分かりやすい例では、ワサビである。
揮発性が高いので、すりおろしてから3~4分でどんどん香りが抜けていくのである。

②親油性の物が多い
香り分子には親水性(水に溶けやすい)ものもありますが、親油性(油にとけやすい)ものが大多数となっている。

料理で言えば、アヒージョがこれにあたる。
ニンニクの香りをオリーブオイルに移している。

③香りが変化する
1:揮発することで全体の香りが変化する(粉末の方が揮発しやすい)
2:含まれる成分間の化学反応
3:成分(脂肪等)の酸化

例えば、料理に醤油を少量入れるだけで、一気においしそうな香りになったりする。

④引火性
植物から抽出した香り物質には引火性のものも多い

特に重要なのは②親油性の物が多いというもの
香りは水に溶けにくく、油脂やアルコールに溶けやすいのである。

ここから少し話を発展させると、爬虫類の肉(カエルやヘビ)などは鶏肉のような味になる傾向がある。
これは、脂肪が少ないので、あまり香り(味)がしないのである。
加えて、肉が白っぽい(ミオグロビンが少ない)ため、風味がすくないためである。
逆に臭い肉などは、脂を焼いて落とすと臭みがましになる。

また、バーなどに行くとハーブを入れたお酒があるが、これも香りがアルコールに溶けやすい性質を利用しているといえる。


次に味(刺激)の性質の話をする。

唐辛子、サンショウ、ワサビ、カラシなどを食べて、日本人は「辛い」と表現する。

しかし、擬音語で表現すると
唐辛子は「ヒリヒリ」
サンショウは「ピリピリ」
ワサビは「ツーン」
カラシは「ヒリ!!」

これらは全て違う化学物質によって引き起こされる現象である。
これらの化学物質を2つに分けることができる。
「酵素作用なし」と「酵素作用あり」である。
酵素(こうそ)とは、簡単に言えば化学変化する物質という意味

まずはイメージをつかんでもらうため、ざっくり書く

「酵素作用なしのスパイス」
唐辛子
コショウ
サンショウ
ショウガ

「酵素作用ありのスパイス」
ワサビ
カラシ
大根
ニンニク
玉ねぎ
ラッキョ
ネギ

などである。
これらの分類を見て、なんとなく共通点は分かるが言語化できないといったところだろう。

酵素作用なしのスパイスは、ホット系と言われており
●焼けるような辛味
●持続性がある

酵素作用ありのスパイスは、シャープ系と言われており
●揮発性がある
●鼻に抜ける辛味

となっている。

酵素作用なし、酵素作用ありについて

もう少し詳しく見てみると
「酵素系なし」(ホット系)は、口の中に入れても一瞬で辛味が来ず、じわじわ辛くなってくる。

この理由は、舌や口の中は何層にも細胞が重なった比較的厚い構造になっており、その層の下に、辛味物質を感じる神経細胞がある。
辛味物質のほとんどが脂溶性(油に溶けやすい)で、一般的に脂溶性の物質は細胞膜の脂質の層となじみやすいという特性がある。
したがって、カプサイシン(唐辛子の辛味成分)をはじめとする辛味物質は、何層にも重なる細胞膜をゆっくりと通り抜け、辛味物質を感じる神経まで到達するのである。

なお、いったん何層もの細胞膜にしみこんだカプサイシンなどの辛味物質は、なかなか唾液では洗い流せないため、辛味が長続きする。
さらに、水を飲んでも辛味は収まらない。
これは、カプサイシンが水に溶けない性質があるため
ただし、水で43℃以下に舌を冷やすと辛味が抑えられる。

ちなみに、唐辛子を食べると「熱い」「痛い」「辛い」と表現する。
実はこれ、どれも同じことを意味しているのである。
舌のカプサイシン受容体の本来の役割は、43℃以上の熱に反応してカルシウムイオンを細胞内に入れることで、感覚神経に電気的シグナルを発生させる。
簡単に言えば、唐辛子を食べると、43℃以上の時に反応する感覚神経が反応する。つまり、熱いと感じる(錯覚する)のである。
だから、43℃以下に冷やすと、辛味が収まるのである。

ちなみに、他の方法として辛みを抑えるのに牛乳を飲めばいいとされている。
これは、牛乳に含まれるたんぱく質がカプサイシン受容体のカプサイシンを置き換える作用があるため。
また、乳製品やパンなどの炭水化物にも同等の効果が期待される。


一方で「酵素系あり」(シャープ系)は、口に入れた瞬間に辛味が来る。
例えばワサビを食べると口の中で揮発して鼻腔(びくう)にまで広がる。
これにより、鼻腔内で痛覚を伝える受容体をアリルイソチオシアネート(ワサビの辛味成分)が刺激することで、鼻にツーンとくる感覚がおこる。

さ酵素作用ありのスパイスは、酵素によって辛味が発生する。
逆に言えば、酵素を止めれば辛味は発生しないのである。

酵素を止める方法はいくつかあるが、簡単なのは加熱である。
つまり、加熱をすると辛くなくなるのである。

例えば玉ねぎを切ると涙が出る。
これは、タマネギの細胞から酵素(アリナーゼ)が出て反応した結果、色々化学変化が起こって最終的に塩化アリルという成分ができる。
玉ねぎを焼くと、酵素が失活し辛味が生成されないのである。

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