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解説:日本フライングディスク協会の基本計画

ゴールデンウイーク改め「ステイホーム週間」が始まりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。ステイホーム週間どころかステイホーム月間に直面した私は、特にこれといったイベントも発生せず刺激のない日々を過ごしております。

フライングディスク関係では、全日本選手権の予選がすべて中止になるという大きなニュースが多くの競技関係者の印象に残っていると思います。しかし、実はもう1つ大きなニュースがありました。それは、4月22日より、「一般社団法人日本フライングディスク協会中長期基本計画2020-2024(理事会承認案)」に関する意見募集(パブリックコメント)が始まったことです(協会HP「中長期基本計画の意見募集」)。この計画には、日本フライングディスク協会(JFDA)が目指す方向性が示されています。この計画の内容は、JFDAの会員であれば自身の競技人生などに大きく関わってくると思われます。まさに必見です。

そこで今回のエントリーでは、"解説シリーズ"第二弾として、「解説:日本フライングディスク協会の決算」のエントリーに続いて、この基本計画について解説していきたいと思います。計画書の本編は以下のリンクからもダウンロードできますので、ここから先は計画の中身を一度ご覧になったうえで読み進めてみてください。

計画の全体像

「一般社団法人日本フライングディスク協会中長期基本計画2020-2024」(以下、「中長期基本計画」)は、「競技発展」と「協会経営」それぞれの方向性を、5年という期間を見据えて定めたものです。また、計画策定の背景として、まず「環境の変化」が挙げられています。以下、計画書の要約。

環境の変化①:日本オリンピック委員会や日本スポーツ協会との関係性の強まりにより、フライングディスクの中央競技団体として果たすべき責任範囲が拡大している点
環境の変化②:会員数の増加が見込まれることから、協会の経営体制の強化会員サービスの向上に努めていく必要がある点

そして、次に「スポーツ庁からの要請」が挙げられています。スポーツ庁がスポーツ団体のガバナンス強化のための原則・規範を定めた「スポーツ団体ガバナンスコード」の中に「組織運営等に関する基本計画の策定、公表」という原則があり、中長期基本計画の策定はこの原則に従うものです。こちらについては、「スポーツ団体のガバナンス」のエントリーもご参照ください。

計画書は30ページ以上に及んでおり、噛み砕くと以下のような構成になっています。フライングディスク競技全体として目指す中長期ビジョンの達成に向けて、事業・人材・財務の各分野の中長期ビジョンと施策が紐づいており、図の下段に行くほどより手段的、具体的になっています。

<図 中長期ビジョンと各計画・施策の関係性>

このような計画は地方自治体も必ず策定しています。参考までに、東京都の基本計画に関する情報がまとまっている東京都のホームページのリンクを貼り付けておきます。東京都の「長期戦略」とJFDAの「中長期基本計画」、東京都の「実行プラン」とJFDAの「事業・人材・財務戦略」が、それぞれ対応するようなイメージです。

中長期ビジョン2020-2024

日本フライングディスク協会(JFDA)は、5年後の到達目標=「中長期ビジョン2020-2024」として、

持続可能な競技発展に向けた基盤を築く

というビジョンを掲げています。そして、計画期間である2020年から2024年までの5年間を"環境の変化に耐え得る基盤を改めて作り上げる期間"と定義しています。つまり、この後に続く事業計画・人材計画・財務計画は、「"持続可能な競技発展に向けた基盤を築く"ために各分野が目指す目標と具体的な施策」が掲げられることとなります。

フライングディスクに限らず、どの競技にもそれを支える基盤が存在します。建物を建てるのと同じで、強固な地盤の上にしか高い建物は建てられません。競技を発展させる(=建物を高くする)には、会員、協会機能、資金、知識・ノウハウなどをより強固なものにする(=地盤を固める)ことは必要不可欠だといえます。

<図 「競技発展に向けた基盤」のイメージ>

事業計画

事業計画には、中長期ビジョンの実現に向けてJFDAが実施している各事業(競技会・代表派遣・指導普及・ガバナンス)が目指す目標と、その達成のための施策がまとめられています。各事業の中長期ビジョンは以下の通りです。

〇競技会事業の中長期ビジョン (p.11):競技継続への動機付けとなる体験価値を提供する
〇代表派遣事業の中長期ビジョン (p.12):競技力向上を続け、「世界で勝てる競技」の立場を確立する
〇指導普及事業の中長期ビジョン (p.13):フライングディスクの魅力や価値を正確に広める
〇ガバナンス事業の中長期ビジョン (p.14):ガバナンス機能を向上させるとともに、誰にとっても安心・安全な競技環境づくりを推進する

個人的に大きな効果を期待したい施策は、代表派遣事業における「日本代表のオープンソース化の推進」(p.16) です。これにより、代表経験者が「日本代表」という肩書を持って広報活動などを行うことができるため、メディア出演や個人スポンサーの獲得に繋げやすくなるのではないでしょうか。具体的な仕組みの確立が待たれます。

人材計画

人材計画には、中長期ビジョンの実現に向けた目標とその達成のための施策について、「人材」という切り口でまとめられています。人材計画における中長期ビジョンは以下の通りです。

人材採用及び育成に関する中長期ビジョン (p.22):環境の変化に耐え得る人員体制を構築する

人材計画の前半に整理されている現状分析 (p.20~21) を見ると、人材不足に起因する業務上の課題があることがわかります。この課題を解消し、"環境の変化に耐え得る人員体制を構築する"ことが"持続可能な競技発展に向けた基盤を築く"ことに繋がります。

個人的に大きな効果を期待したい施策は、「専門人材の活用」(p.23) です。フライングディスク競技者の中には、一定の専門性が求められる職業に就いている人もいます。この施策は、そうした方々を非常勤の事務局員(パートナー)として迎え入れることで人員体制の強化を図ろうというものです。副業が推奨されつつある昨今の時流も追い風になるのではないでしょうか。

財務計画

財務計画には、中長期ビジョンの実現に向けた目標とその達成のための施策について、「財務」という切り口でまとめられています。財務計画における中長期ビジョンは以下の通りです。

財務に関する中長期ビジョン (p.30):環境の変化への備えを生むための財務活動を推進する

財務計画の前半に整理されている現状分析 (p.25~29) を見ると、JFDAは経営に余裕が無いということがわかります。「解説:日本フライングディスク協会の決算」のエントリーにも書きましたが、現在のような財務状況では、予想外のショックへの対応や将来を見据えた投資が困難であるといえます。この課題を解消し、”環境の変化への備えを生む”ことが"持続可能な競技発展に向けた基盤を築く"ことに繋がります。

個人的にインパクトが大きいと考える施策は、「会員費の改定」「競技会エントリー費の改定」(p.31) です。これらの施策は、収入増加策として効果的である反面、会員の負担が増加するという難点もあります。現在の水準が協会の経営に何らかの支障を来しているがゆえの施策ですので、会員が納得するような理由・根拠を示すことが極めて重要だと思います。

意見募集について

現在、協会HP「中長期基本計画の意見募集」にて、本エントリーで解説してきた中長期基本計画の意見募集(期限:5月11日)が行われています。地方自治体が基本計画や都市計画マスタープランなどの計画を策定する際にも同様の手続きが行われています。

おそらく、このような手続きが行われるのはJFDA史上初ではないでしょうか。JFDAとしても、中長期基本計画がフライングディスクの将来を決める重要な計画であるだけに公正な手続きをとっています。大変重要かつ貴重な機会ですので、計画に対して意見のある会員の方はぜひJFDAへ投げかけてみてください。

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