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あなたは、キジムナーを見たことがあるか?

キジムナーとは、沖縄で昔から言い伝えられている、ガジュマルの木に住む精霊のことなのだそうだ。
ということを、学生時代からの長い付き合いである沖縄出身の友人に聞いたことがあった。

その昔、私はキジムナーらしきものに遭遇した、のだと思う。

場所は沖縄ではなく東京・杉並区内の住宅街、キジムナーは子供くらいの背丈で小さいと聞いていたが、彼はひょろっと痩せた体で背も割とあり、サラサラのワンレングスの黒髪が腰まで届くほどだった。
そしてガジュマルの木ではなく、木造オンボロアパートの入り口奥に生えている杉の木にしがみつくような格好で、腕も脚もぐるっと絡ませていた。

あれは真夏の夜11時頃のこと、私はアルバイトを終え疲れた体を引きづりアパートへ帰りついた。
ふと視線を感じた先を見ると、そこだけ常夜灯の灯にスポットライトのように照らされて、木に絡んでいる彼と目が合った。

ーえっ…何…?

ーも、もしかして…キ、キジムナー…ですか…?

コクン、コクンと頷くキジムナー。

ーうそぉ!ほんとにキジムナー!?

またコクン、と頷くキジムナー。

ーうそぉ!

私は急いで自分の部屋に駆け込むと、例の沖縄出身の友人に電話した。

ーこんな時間にどした?

ー出た!出た!キジムナー出た!

ーはぁ?どこに?

ー今アパートにいる

ーアパートに住んでる人じゃないの?

ーあんな人、今まで見たことないよ

ーえ〜でもそれはキジムナーじゃないでしょ

ーじゃ、あのひと何…?

ーユーレイ…とか?

ーいや…なんかもっと生々しい感じだよ…生きてる人っぽいよ…

ーじゃ…生霊いきりょう…とか?

ーうわぁっ!!もっと怖いってば……!

数十分後、恐る恐る外に出て確認して見たが、すでにキジムナーの姿は闇の中に消えていた。


ところで、朝ドラ「ちむどんどん」の登場人物の中で、やんばるの村の共同売店で働く、まもるちゃん(松原正隆さん)の存在が密かに気になってる。
いつもシーンの隅にさりげなく映るまもるちゃんは、暢子家族や共同売店にやって来る村人を優しい眼差しで見守っているのだが、いまだに一つもセリフを発したことがない。
巷では、まもるちゃんは "妖精" なんじゃないか?とか、「できるかな」の "ノッポさん"  がモデルになっているとか、いや "スナフキンだ"(この人はこっちの国の放浪の旅人)とか、その中に "キジムナー" なんじゃないか?という声もあり、そうか!まもるちゃんはキジムナーなのかもしれない…と妙に納得した。

暢子の母・優子が戦時中、米兵に捕まり弟も失った収容所のシーンに、まもるちゃんが映り込んでいた!という情報があり、私も1946年・沖縄の収容所で若かりし父・賢三が母・優子と再会するシーンを確認したのだが、本当にまもるちゃんみたいなハットを被り、座って本を読んでいる男の人がいるではないか…!
そうすると、まもるちゃんはいったい今、何歳なのか!?というか、全然歳を取っていないように見える…。
まもるちゃんは、やっぱり人間じゃないのでは…姿が見えているのは村人だけなんじゃないか…と、ますます不思議な気持ちになるのだった。


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