水の揺蕩い
魚座なだけに、私は水辺が好きだ。
海辺、湖畔、川べり、池、沼、とにかく水の側に居ると落ち着く。
きらきら陽の光を反射し、揺蕩いながら様々な表情を見せる水の波紋を見つめていると、吸い込まれそうになる。
いつまででも眺めていられる。
セイレーンというギリシャ神話に登場する人魚が岩礁に座り、美しい歌声で船乗りたちを惑わせ、荒海に誘いこみ船を難破させる、という伝説もあるが、水辺にはそんな魔性の魅力も潜んでいそうな気もする。
こちらの国の海は、だいぶ日本とは様子が異なる。
内海だからか、波が高くなるということはほぼなく、海はいつも凪いでいる。
まるで湖のような海だ。
塩分濃度も低いため、日本の海のような潮の香りというものもない。
このところ、秋晴れのいい天気が続き、海辺を散歩するのも気持ちが良い。
吹く風は涼しいけれど、夏の名残りが感じられる。
まだ海で泳いだり、船から釣り糸を垂らす人の姿もある。
岩の上に座りヨガをする人、木の間にハンモックを張り寝そべりながら読書する人、相変わらず、この国の時間はゆっくりと流れている。
あと一ヶ月もすれば、また長い長い冬が始まる。
今はそれまでの、助走期間といったところだ。
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