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てのひらの物語

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物語を綴るように、体験を通したエッセイ。
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2022年3月の記事一覧

失われし故郷

失われし故郷

今はもう主のいない、夫の祖母宅の居間の壁には、横幅が1メートル以上はある大きな風景画が掛かっている。
絵の中には、そこだけ立派な教会を囲むように、質素な家々が肩を並べる小さな集落が、油彩で描かれている。
北極海に臨む村は、カーブを描くフィヨルドの入り口にあり、遠くに山が連なっているのが見える。
起伏に富んだその景色は、真っ平らな土地ばかりが続くこの国の典型的な地形とは、だいぶ違っている。

おばあ

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