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『君が夏を走らせる』夢を見失った少年とイヤイヤ期の女の子の成長物語

本日は瀬尾まいこさんの『君が夏を走らせる』をご紹介します。

自分には何もないと自信を失ってしまったり、やりたいことが見つからない人におすすめの本です。

この物語の主人公の大田くんは、高校2年生です。

いわゆる不良が集まる高校の雰囲気に馴染むことができず、気づけば学校へ行かなくなっていました。

やることもなく日々を過ごしていた大田くんのもとに、中武先輩から思いもよらぬバイトの依頼が!

金髪少年×イヤイヤ期の女の子


昔はやんちゃをしていた中武先輩も、今は仕事をして家庭を持ち、奥さんは2人目を妊娠中。

その奥さんが切迫早産で急遽入院することになってしまいます。先輩も日中は働きに行かなければならないことから、1歳10ヵ月になる娘の鈴香の子守りを大田に任せたいと依頼してきたのです。

もはやムチャぶりともいえるような、アルバイトの依頼に戸惑う大田くん。

金髪の16歳の少年と、イヤイヤ期にさしかかろうとしている鈴香の突拍子もない組み合わせは、最初からハラハラしっぱなしでした。

言葉でのコミュニケーションも難しく、まだ幼い鈴香との日々がぎこちなく始まります。

大田くんも自分なりに育児を工夫しながら、母親に代わって鈴香のために尽くします。

一筋縄ではいかない育児の苦悩や、成長の喜び、日々の楽しみを通じて、大田くんの時間も動き出していきます。

先輩夫婦はそんな彼の人柄や可能性を信じたのかもしれなと、心が温かくなりました。

「得意」は自分が当たり前にできること


大田くん自身は、「できること」がたくさんあって、その意外性にとても驚かされました。

母子家庭で育った彼は、簡単な料理なら作ることができたのです。

例えば、昼ご飯を食べない鈴香のためにチャーハンを作ってあげたり。おにぎりやだし巻き卵を作ったり。

とても美味しそうな描写に我慢ができなくて、私もだし巻き卵を作ってみました。

小説って、再現することでも楽しめる!

家事はかなり高い能力を問われるスキルだと思うのですが、大田くんはひょいひょいとこなせるようになってしまうんです。

最初は抵抗があったおむつ替えも、難なくできるほどに。

公園では、ママや幼い子どもたちとコミュニケーションをとるのも上手!

片付けや掃除もこなし、高校生でこれだけできるなんて逸材すぎない?とホレボレしました。

人の強みって、自分では意外とわからないものですよね。

自分には何もないと思っていても、掘り起こしてみれば何かしらあるはずです!

「自分が得意なことや、好きなことは何だっけ?」
と思い出しながら読んでみて欲しいです。


信じてくれる力が「レジリエンス」になる


誰にとっても、やりたいことが見つからずに焦ったり、将来に漠然とした不安を抱える経験はあると思います。

大田くんは、とにかく目の前の育児の課題に対して、どうしたらもっと良くなるか?どうしたら誰かが喜んでくれるようになるか?

と、日々考えながら工夫をしていきました。

そんな底力を見抜き、信じて娘を託した先輩夫婦もすごいなと思いますけどね。

子守りのバイトも主体的に取り組むことで楽しみややりがい、達成感を見出すまでに成長します。

自分の中にくすぶっていた走ることへの思いは、鈴香や公園の子どもたちとの遊びの中に生かされていきます。

そして何よりも、大田くん自身が走ることの楽しさを再発見していくきっかけとなったのです。

ちょうど、読んでいたのは箱根駅伝も真っ只中のお正月だったので、大田くんの姿が重なりました。

彼も中学時代の駅伝での活躍を思い出しては、気持ちを引きずっていたからです。

本当は風を切って走ることが大好きなのに。

どこにも気持ちの持って行き場がなくて悶々と過ごしていただけで、実は彼自身も突破口が欲しかっただけなのかもしれません。

鈴香の声援が、大田くんを奮い立たせます。
何にも勝るエールだったでしょう。

弱っているときにこそ、周囲に信じてくれる人や支えてくれる力強い存在が必要なのかもしれません。

誰もが「自分という存在」を認められたいし、いくつになっても孤独はつきまといます。

けれど、きっと一人ではない。

誰かの信頼に応えようと動いているとき、生きる道が見つかったりするのかもしれません。

人の優しさに触れて、生きる勇気を奮い立たせてくれるような本でした。

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