のきのき

のきのき

最近の記事

5月17日

今日、周りに誰もいなかった。から、小さな声で学生時代を歌いながら歩いた。私の行動がプラスマイナスどっちにもならないと分かっていて、誰もいない坂道は気持ち良かった。五個入りのロールケーキを持って歩く。腕を振ってみた。少し形が崩れてもいいよ、と思った。私が食べるだけだから。ロールケーキには申し訳ないけれど。 完璧じゃないどころか、もう全然、なんも、やろうと思っていたことをやらなくて、たくさん寝てしまって、買おうと思った本は一冊も買わずに、違う本を買って、観た映画は面白くなくて、

    • 5月13日

      「暑くなってきたね」と思ってもないのに言ってしまった。そして言ってから、暑くなってきたんだなあ、と思った。思えば、もうとっくに暑くて、夜は汗をかいたりするし、昼は扇風機を回したり、毛布も一枚減らしたし、それでも「暑い」と思っていなかったらしい。どういうことだろう。 転んでできた怪我を理由に泣いたことがある。でも本当は違った。泣きたくない。良し悪しなどないと分かっていても、私は。 夏が近い。 夏だった。 更衣室の夢を見た。狭くて、暑くて、柑橘系の甘い匂いがする。バレーボー

      • 4月30日

        四月の三十日に世界が終わる話ばかりを書いていた、昔。何かの始まりというよりも、あらゆるものの終わりを、即ち世界の終わりみたいなものを、四月から連想してしまうのは何故かなあと考えてみるけれど分からない。世紀末なんて、私は望んでいないのに。 世界が終わるから私とあなたが死ぬのではなく、私とあなたが二人で死ぬために世界が終わる。そんな終末の方が好きだよ、と言うと、セカイ系だねと笑われる。そうだねえと思う。私、じゃなくて、物語における「私」の話。別に最後くらい、最低最悪破茶滅茶な弩

        • 4月25日

          旅するかばん屋さんのガラゴが家に帰ると、たくさんの友人がガラゴのもとを訪ねてくる。雑貨屋さんのとらちゃんや、ピーナツ売りのらくちゃん、床屋のぷるどちゃん……他にもたくさん。そうして、みんなでおいしそうなカレーと焼き林檎を食べる。『うちにかえったガラゴ』(島田ゆか先生) の、大好きな場面。 お山の形に盛られたご飯の真ん中に、カレーがたっぷり入っていて、ご飯の隣にミニトマトが添えられている。焼き林檎はまるくて、きっととろとろで、いい匂い。みんなが手に持っている赤紫のジュースはぶど

          4月21日

          晴れ。カーテンの隙間から差し込む夕日が、笑っちゃうくらい見事なオレンジ色で、綺麗だなと思った。夕日を綺麗だと思う自分、を認識したのは久々で、というか過去にも一、二回あるかないかくらいで、そういうのって少し恥ずかしい。でも全然嫌じゃなかった。 昨夜は勉強を頑張ったから、試験は成功した。成功、大成功。二日前まで分からなかった構文が今は全部分かる。それがとっても嬉しくて、やっぱり夕日は綺麗だった。ノートに小さくはなまるを描いて、もう一度大きめのはなまるを描いた。 暗い部屋で勉強を

          4月16日

          貰い物のりんごジャムはとっても大切で、でも思い立って少し鍋の中に入れると、手羽先煮はすごく美味しくなった。甘辛。美味しくて特別なジャムを他の料理に入れるのは、謎の背徳感がある、と知る。なんでだろう。手羽先煮になっても、りんごジャムはそこにあるのにな。でもみんなりんごジャムがあることを、きっと分からないからなのかな。名前も、手羽先煮、だし。見えないけれどあるものは、あるが略されて見えないものになりがちで、でも、それは私だけが知っていればいい秘密みたいでわくわくもする。特別なりん

          4月11日

          私のかわいいお菓子たち。 出来上がると可愛くて美味しいお菓子は、材料を見ると意外と可愛くなくて、砂糖80gとか、チョコレート100gとか、バター90gとか、そういうのを全部混ぜて混ぜて完成する。致死量の毒を練り込むみたいに、ゴムベラで優しく、均等に、柔らかく。私は悪い魔女になる。 お菓子のもと の箱を買わずに、初めてクックパッドを見ながら作ったお菓子は、ド定番のチョコチップマフィンだった。どのレシピを参考にしたのか、メモしておけばよかったな。大学二年生の春、嘘つきのマフィン

          4月10日

          甘いものがとても好き。 今はもうない九品仏のケーキバイキング。好き。静かな街、踏切の音。桜の木が綺麗だった。 小さなそのお店には、五組くらいしか入れなくて、炎天下の中二時間並んだこともある。手作りのケーキは、ひとつひとつが宝石みたい。ありきたりな比喩、本当はきっともっとふさわしい言葉があるのに悔しい。キラキラしていて可愛くて、初めてマカロンが美味しいと知った。いちごのババロア、ガトーショコラ、色々なクリームの入ったエクレア、小さなシュークリームは皮がさくさく。出来立てのキッ

          4月9日

          渡さないことを前提に書く手紙に、綺麗な紺色の便箋を使う。私以外の誰かに読まれることは絶対にないのに、一文字一文字方眼からはみ出ないように、インクが染みないように、そっと、五枚分書いた。お久しぶりです、から始まるその手紙を、渡さない手紙入れ にしまう。 私の家、私の机の隣、本棚の一番下の段には、渡されなかった手紙がたくさん入っている箱がある。赤くて、小さい鶴が二羽飛んでいて、不思議な花の模様の、お気に入りの箱。 箱の中には中学生から今までの、宛先はあるけれど渡せなかった手紙、渡

          4月3日

          銀河鉄道に、乗ることができない私たち。 午前一時、私は水中にいて、真っ暗だった。真っ暗だったのは目をつむっていたからで、なんにも変なことじゃない。「ぷかぷか浮かぶ泡が神秘的」「このまま魚になれたらいいのに」エトセトラ、物語に出てきそうな文章を想像して、でも全然そんな気持ちにはならなかった。水の匂いがする。狭いし痛い、まぶたの裏は暗くてさみしい。文学的にはなれない。 修道院で夜中、友人とひそひそ話をしながら、湿ったオレオを食べたことがある。音を立てないように、口の中でふやふ

          4月2日

          この時間に起きている。おばけこないね。 電車に乗ったら、四号車には私しかいなかった。でも新宿夜九時のガストの前は行列で、深夜一時を過ぎると家の外からカラオケの声が聴こえてきた。 誰もいない電車に乗って、遠くの街に行く想像をたまにする。したことない人、いるのかな。遠くの街で、私は違う名前を名乗って、違う髪型と洋服で、決してにこにこと笑わない。そこは信号がない街で、青信号が点滅するたびにそわそわしなくて良くて、夜遅くに道の真ん中を歩いてみせる。六つ入りの卵の五つが割れても、ま

          3月26日

          秘密基地、と私たちが呼んでいる場所があった。けれどそれは、実は周りから丸見えで、みんなみんな知っていて、誰もが一度は秘密基地にしただろう場所で、それでも私たちはそこを秘密基地と呼んでいた。秘密基地で私たちは漫画の貸し借りをした。中学一年生の時に見つけたその場所に、高校三年生の時には一度も訪れなかった。そこはみんなの秘密基地で、でもやっぱり私と彼女の二人だけの秘密基地だった。 世紀末みたいだなぁ、と思う。毎日。まあ世紀末なんか見たことないんですけど。 みんなに優しくできる人

          3月24日

          note、三日坊主になりませんでした。紙媒体に書いている日記は、中学生の頃からずっと続いている。私以外の生物に見せる気は一ミリもないのに、すごく綺麗な字で、方眼ぴったりに書けないと嫌だ、とか思う。誤字も許せない。し、ノートにもこだわってしまう。濃い茶色がいい。もしくは薄い青色、緑色。ペンも決まっていて、サラサビンテージカラーのレッドブラック0.5。昔はサラサならなんでも良かったけれど、今はこれじゃなきゃ嫌。 サラサが好き。0.5が好き。年賀状は滲むので、0.4を使うとよい。

          3月22日

          花粉症だから目が赤い。くしゃみがとまらなくて、喉が痒くて目も痒くて、たまらん!って擦ったら真っ赤になって、終いには咳も出て、最低最悪状態になる頃に、桜が咲く。体調悪化で春を知る、毎年こんな感じ。 大学一年生の時に花粉症になって、「花粉症だから鼻声でごめん」っていつもティッシュを持っていた友人がめちゃくちゃすごい人に見えた。みんな平然と花粉症と生きていて、すごい。何故? 花粉症、想像の5億倍つらいのに。花粉全然許せない。木切りたい。ブタクサって名前、なんか……なんか、だし。花粉

          3月20日

          昨日書いたから、とかいうよく分からない動機で今日も書いている。日記、正直日記帳につければよい。というかつけてる。でもnoteもよいよね。noteも好きです。とかぐだぐだ言うのださいな、百パー承認欲求です。 ピスタチオのムースやピスタチオのアイスが美味しいことを知ってから、食べるたびに「ピスタチオが好きなんです」と話している気がする。何故? 文章にするとなんだか愚かで、次からはやめたい。でもどうせまた「ピスタチオが好きなんです」って言うんだろうな。ピスタチオが好き、好きなの。

          3月19日

          雨の匂いがしたから雨が降るんだと思った。でも本当は逆だって分かっていた。「雨に濡れないでね」とあなたが二回言ってくれたから、雨には絶対に濡れたくなかった。から、帰り道、ちゃんと傘をさした。紫色の小さな傘からは、乾いた雨の匂いがした。雨が好き。けっこう好きだよ。本当は、雨に濡れるのも嫌じゃない。 待ち合わせ場所は母校の最寄駅で、それなのに電車を間違えて、それがなんだかかなしかった。毎日通った場所なのに、知らない場所みたいで、だって駅はこんなに綺麗じゃなかったし、待合室は木の色