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【コンサルこぼれ話】プール制度の実態

こんにちは,もりおです。
今回は「プール制度」についてお話ししていきます。

プール制度とは

 まず,プール制度の概要を解説します。
 プール制度とは,コンサルファームの若手人材(〜新卒入社5年目前後)の所属ユニットを一つに固定せず,様々な分野・業界のプロジェクトを経験させる社内ローテーションの仕組みのことです。
 特に,総合ファーム(PwC/デロイト/KPMG/EY/アビーム/ベイカレント等)ではこの制度を採用しているところが多くなっています。
 なお,「プール制度」に類する呼称を使用しているファームとしてはデロイトとベイカレントが代表的で,今回は他のファームの同様の制度と併せて「プール制度」と呼称します。

 就職活動においてはこうしたプール制度が学生へのアピールポイントの一つとなっており,「戦略策定・マーケティングからシステム導入までの幅広い業務を,あらゆる業界の案件で経験できる」と謳われます。
 コンサル業界はそもそも,新卒時に特定の業種・業界を定めることなく「色々な業界・業務を経験したい」という理由で入ってくる人が非常に多くなっています。

そういう人たちにとって,プール制度は一見素晴らしい制度のようにも思えますが,実際には様々な問題が存在するのも事実です。
では,具体的にプール制度にはどんなメリット・デメリットがあるのかを見ていきたいと思います。

プール制度のメリット・デメリット

 まずはメリットから見ていきます。

メリット①様々な業界・分野のプロジェクトを経験できる可能性がある

万能ビジネスウーマン

まずはこちら。
 公式アナウンス通り,あらゆる業界に対して様々なサービスを提供しているので,実に多様なプロジェクトを経験できる可能性があるという点は確かに魅力があります。
(あくまで「経験できる可能性がある」というのがポイントです)

業界の例:自動車/家電/通信/エネルギー/運輸/不動産/官公庁など
提供サービスの例:戦略/マーケティング/人事/M&A/システム導入など

メリット②幅広い社内人脈ができる

ネットワーク

2つ目はこちらです。
 業界も提供サービスも越えて様々なプロジェクトに従事することになるので,自然と多種多様なユニットにおける人脈形成ができるようになります。
自分自身が多様な人間関係を築けるのはもちろん,特に新卒入社だと,自分が将来的に関わりたいユニットの上位メンバーと関わるため,同期に頼んで,その同期と一緒に仕事をしていた上司の紹介をしてもらうことは非常によくあります。

では,デメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
こちらも代表的なものを2つ紹介したいと思います。


デメリット①専門性がつきにくい

疑問マン

まずはこちらです。
 様々な業界・サービスをまたいで経験を重ねるということは,裏を返せば,特定の業界やサービスに関する知見(=専門性)が形成されにくいということです。
 コンサル業界に新卒入社して10年以上勤める人は非常に稀(戦略ファームでは3~5年,総合ファームでは5~8年程度が平均勤続年数の体感値)です。
 その10年弱のキャリアの中で最大5年程度に渡って色々な業界・サービスを広く浅く経験することがその後のキャリアにどの程度良い影響を与えるのかは未知数なところがあります。
 先輩方を見ていると,プール制に従って様々なユニットを転々としている方ほど「自分には何の専門性があるのか?」と自問している印象です。


デメリット②アサインのセルフコントロールの大変さが尋常ではない

部下を操る上司

 これがプール制度の最大の問題点であり,まさに私が苦労してきた(している)点でもあります。

 プール制度の運営側は「様々な仕事を経験することが厚みのあるキャリアを形成する」「仕事を選ばないのが一流のプロである」などと言って,若手人材を意のままに操ろうとします。
 これらの言葉には頷ける部分が一定程度あるのも事実ですが,誰がなんと言おうと,自分のキャリアは自分自身が決めるものです。こうした言葉を真に受けて「なるほどそうか」と大人しく従っていると,常に人手不足のプロジェクトを転々とさせられるだけです。
(先輩方を見ていてもそうした例は枚挙にいとまがありません)

 アサインにある程度自分の意志を反映させるのに必要なのは,何よりも政治力・交渉力です。具体的には,行きたいユニットの上位メンバーとのコネクションを形成して自分を引っ張ってもらう必要があります。
 こうしたアクションを,プロジェクトの合間を縫い,さらに現所属先のメンバーとの関係も構築しながら実行するのには大変なエネルギーが必要となります。

 この辺りの事情は,いずれまた別の記事で自分の体験を交えて詳しく書ければと思います。

まとめ

いかがだったでしょうか。
 プール制度は,導入された当初はその理想に近く,様々なプロジェクトを若手に経験させることで中長期的な成長を促すような仕組みでした。しかし近年,コンサルファームの急激な組織規模拡大に伴い,どちらかというとファームの都合で若手のアサインを決める面が目立ってきてしまっているのが現状です。
 こうした中で私たちのような若手メンバーは,目の前の仕事にはきちんと取り組みつつも,自分のキャリアを責任を持って築いていけるのは自分自身だけという確固たる意志を持って主張すべきことは主張し,かつ有効なコネクションを築いていくことが求められています。
 個人的には,コンサル業界への転職を希望される方で,もし初めからある程度興味のあるユニットが決まっているのであれば,そのユニットへの配属が確約される中途採用での入社をお勧めします。
 新卒/第二新卒/中途採用でプール制度が適用されるユニットに応募する際は,上記のメリット・デメリットをよく理解の上で応募されるとギャップがないかと思われます。

それでは今日はこの辺りで!
ここまでお読みいただきありがとうございました!!

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