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あの子の日記 「となりで眠るひと」

となりで眠るひとのあたたかい寝息をめいっぱい吸いこんでみる。暗闇のなかに愛がただよう。

時計のみじかい針は6と7のあいだに挟まっていた。遮光率の高いカーテンで1日のはじまりを拒んだワンルームに、夜と朝の区別はないけれど、窓の外では、とろりと気だるいこの時間帯を朝と呼ぶらしい。

空。カーテンの端っこをめくると、ひろい空の遠くのほうがうっすらとあかるくなっている。長いまばたきをして、もう一度カーテンをめくる。となりで眠るひとはまだ夢のなかなのに、深い藍は、光を透かしてひとりでに夜を終えようとしている。

ぬるい海にゆらゆらと、ぷかぷかと、ただ浮かんでいるような気持ちがした。ふたり分の体温がこもった布団に包まれて、生まれたままの姿をして、この部屋にやって来なければいいと願っている朝を待つ。

あ。あ。となりで眠るひとがほんのすこし動いた。時計の短い針と同じくらいゆっくりと、ほとんど分からないくらいに。やわらかい前髪が目元にかかって、ゆるやかにカールしたまつ毛と合わさる。

うつくしいひとが、まだわたしのとなりで眠っている。

あたまのネジが何個か抜けちゃったので、ホームセンターで調達したいです。