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あの子の日記 「だからわたしはスカートを」

白いビニール袋が車にひかれて、宙に舞っている。白が鮮明に見えるようになり、このまちにも夜がきたのだと気づく。信号の色は昼間よりはっきりとしていて、向こうからこちらにやってくる自転車はライトをチカチカさせている。ずいぶん上向きなライトだ。点滅している光の粒がだんだんと大きくなる。視界は次第に白になる。

おととい買ったチョコレイトがまだ手元にある。たったの4粒で2000円くらいする高級なぶん。とくべつな友人に渡すために選んだぶん。彼女と指を絡めてみたい。なだらかに盛り上がったからだの曲線をていねいになぞってみたい。うるんだ瞳に映ってみたい。チョコレイトが入ったボルドーの紙箱はあたたかい滴でしずかに濡れていく。

タンスの奥からお気に入りを引っぱりだす。ボルドーの色をしていて、やわらかい生地が何層も重なっている。それを身につけてまちへ出かけると、チュール素材でできた表面のうすい一層が風とじょうずに踊ってみせて「かわいいでしょう?」とわたしに問う。だからわたしはスカートを。

あたまのネジが何個か抜けちゃったので、ホームセンターで調達したいです。