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春の秩父でレトロを探す温泉旅-DAY1|TRAVEL LIGHT #8

桜とレトロな街を愛でる

東京からの身軽旅にぴったりな秩父。少し前に宿だけ予約して、埼玉なら近いしなんとかなるかなと準備もなしに、土曜の朝にゆっくり起きた。

リュックに着替えをつめて池袋へ。まもなく来る特急の指定席券を慌てて買う。電車がホームにやってきてびっくり。こんな電車、見たことない。

特急ラビュー、窓が大きくて外にいるみたいな開放感

黄色がおしゃれ。事前に調べてないからこそ、新鮮な驚きがあっていいのかも。外を見ながら音楽を聴いていたら、一時間半はあっというま。

秩父駅に着くと、人の流れに沿って歩いてみる。着いた先は“羊山公園“。東京ではすっかり散った桜が、なんとここでは満開。一気に晴れやかな気分に。

たんぽぽもいっぱい
ゆったりお花見中の人たち

東京では余裕がなくて桜をじっくり見た記憶もないけど、お花見っていいもんだな。桜を見てすっかり満足してたけど、ここはまだ場外だったようで、入場料を払って“芝桜の丘“へ。

芝桜が何かよく分かってなかった私。シバのように広がってサクラみたいな花が咲くということで、桜ではなかった。人が多くて早めに退散。

近くで見ると綺麗かも

街中に戻ると、レトロな蒸気機関車と遭遇。みんな窓から身を乗り出してるのがいいね。

汽笛が響き渡る

番場商店街をお散歩。古い建物が多くてタイムスリップしたみたい。大正ロマンも昭和レトロも味わえる。

リュックの色と微妙にシンクロ
煙草屋は今はカフェになってた
渋い印刷屋は現役みたい

一つ一つ看板を見ながら歩いていたら、かわいい喫茶店を見つけた。入り口の貼り紙によると、1967年創業、秩父初のパーラーとして開店。

老舗の喫茶店を見ると入りたくなる

店内もいい雰囲気。周りの席の人が食べているパフェに目を奪われながら、ひさしぶりに飲みたくなって“クリームソーダ“を注文。

こんなにおいしいものだったかしら

隣の席から「このプリンおいしい」と言い合う声が。かためのプリンいいなあ。若いカップルにはスパゲッティが運ばれてくる。おいしそう……。

あっというまに飲み干してしまい、お店を出てまた商店街を歩く。

この並びもいいな

ちちぶベーカリーの入り口には「昭和レトロ 元気の出る味」と貼り紙が。今回の旅のテーマが見つかったような気分に。よし、”昭和レトロ 元気の出る旅”にしよう、などと一人思う。

秩父神社でお参りをして、老舗の和菓子屋さんで今日のおやつ(宿で食べる)を買い、さて、お昼ごはん。マップで見つけたこちらのお店へ。

静かな住宅街にある

駅馬車“という洋食屋さん。名前を見た瞬間、ここにしようと思ったのは、ジョン・フォードの映画『駅馬車』(かなり古い西部劇)を思い出したから。

レトロかっこいい看板

店内は吹き抜けで広々としていて、木のぬくもりもあっていい感じ。地元の人も通うお店のようで家族づれも多い。注文したのは、“ポークソテー“。

スープとライス付き

お肉もおいしいし、トマトの酸味がきいたソースがよい。洋風だけどしっかりした味でごはんがすすむ。秩父といえば豚丼が有名だった気がするけど、あえての洋食屋でポーク、いいかも。

温泉宿まで歩く旅

温泉宿に行くときはなるべく長く滞在したい(何回も湯に浸かりたい)のでいつも早めに行ってしまう。

今日の目的地“新木鉱泉“までは、ここから徒歩50分。うん、歩こう。足を疲れさせて湯で癒やすという楽しみ(秩父駅から送迎もあるそう)。いきなり急な坂道に行き当たる。これはなかなかハードな予感。

坂を上りきると、グラウンドと満開の桜が見えた

高台には、広大な聖地公園墓地があった。道沿いは桜並木が続く。墓地だからこその静けさと見晴らし。こんなにたくさんの桜を見ることはなかなかない。

レトロなかわいい建物を発見。近づいてみると“旧秩父駅舎“と書かれている。大正時代に造られた建物で、かつては秩父駅の駅舎として使われていた。

ここにも桜があった
風で舞い散るのがきれい

墓地の横にひっそり佇む駅舎。人は誰もいなかった。歩いていると偶然の発見がある。だから、私は歩く旅が好きなんだろうなと思う。

今度は下り坂。田畑と民家が見えてきた。

畑にはネギが植えられていることが多い

畑を抜けて、川を越えると、今日の宿に着いた。

お待ちかねの新木鉱泉

創業は江戸時代の1827年。歴史を感じさせつつも、入り口から素敵。中もとても綺麗であちこちにお花が置かれている。まさにレトロ旅にぴったりの場所。

手入れが行き届いている

泊まったのは一番シンプル(リーズナブル)なお部屋。お風呂までふらふら出掛けていくのが好きな私には縁がないけど、露天付きのお部屋もあるみたい。

お部屋からの景色

ちょっとひと息、お茶をいれておやつ。水戸屋本店で買った“ちちぶ餅“。

見た目以上にやわらかくておいしい

さて、着替えてお風呂へ。浴衣じゃなくて作務衣なのがいいな。浴衣だと寝にくいしはだけるし、これが正解な気がする。(お風呂に、温泉水で作った石鹸と化粧水が置いてあるのもうれしい)。

大きめの内湯と露天のほかに、サウナと水風呂もある。泉質は“単純硫黄冷鉱泉”で、源泉の温度は約15℃。水風呂はその源泉で、一人用の樽に入っている。この源泉に入るために、サウナがあるのだ。

まずは温泉に浸かる。なめらかでお肌がきれいになりそうなお湯。それから、熱いサウナの後の、冷鉱泉。一瞬ひやりとするけど、最高に気持ちがいい。ずっとこの中にいたいくらい。

ぬるめの露天風呂にちょこっと浸かって休憩。まだ明るい夕方の日差し、風が吹いてさわさわと揺れる葉っぱ。目は開いてるのに寝てるみたいな曖昧な中を漂う、ここは天国かもしれないーー。

風呂上がり、屋根裏部屋に上がってみた。

こういう場所、自分の家にもほしい

昔の漫画や絵本もあってお子さんのものだったのかな。寝そべって漫画を読む。小学生のときに友達の家でゴロゴロしてた時の気分。

くつろぎすぎて、時が経つのを忘れていた。なんとご飯の時間で慌てて会場へ。

なかなか盛りだくさん

ワンドリンクがサービスになっていて、このあともサウナと冷鉱泉を楽しみたかったのでそば茶にしたけど、お酒も選べるなんてすごいな。

煮物と胡麻豆腐
お刺身
つぶ貝がうれしい
たけのこおいしい、自家製の肉味噌もいい
虹鱒もつい先に食べてしまった
お好みの焼き具合で

これ以外にも、天ぷらにご飯に味噌汁など。全部おいしくいただいた。佐渡のお米がおいしかったけど、満腹でおかわりはできず。デザートも美味。

ついたての向こうの席から、瓶ビールでお腹いっぱいになってごはんが食べられないのが悔しいとの嘆きの声が聞こえてきた。案外お茶でよかったかも。

もう一度ゆったりお風呂に入って、分厚いお布団でごろり。日帰り入浴もあるしまたいつでも来られるかもとか、でもいい宿だからやっぱり泊まりたいとか、桜の次はどんな季節がいいのかなとか、ぼやぼや考えながら、眠りについた。

つづく

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