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願い事は突然に。

タバコを咥えて歩きながら
コンビニで買った酒を片手に家まで歩く。
これを買いに外に出るのさえだるい。

財布の中身はもうない。

明日の酒を買う金が無いことに、
イライラしながら頭を掻き毟る。

「金、借りるか…」

別に今帰ってるのは
自分の家でも何でもない。
最近できた女の家だ。

金も最近はそいつから借りて生活してる。

今は仕事もしてない。
まぁでもあいつが稼いでるから
俺は別に働かなくても生きていける。

「あっちぃな~、クソっ、」

帰り道のちょうど中間にある古びた商店街の中を通りながら、足元に落ちていたアルミ缶を蹴り飛ばした。

(カランカラン、、、カンっ)

缶がぶつかった先には、商店街に毎年この時期に設置される大きな笹があった。近づくと、おそらくこの商店街の近所に住む子どもが書いたであろう願い事が書かれた短冊が飾ってあるのが分かった。

「七夕か、、、」

別に興味があるわけではなかったが、いくつかの短冊に目を通してみた。

【ゲームをたくさんかいたいです。たいち】
【妹がほしいです、かみさまおねがいします♡ あいり】
【1万円ください💴 ゆうき】

「フッ、この願い事書いたガキ、俺みてぇなお願いしてんな」

四枚目の短冊に手を伸ばしてみる。
【パパにどうしても会いたいです。どうしても。神様お願いです会わせてください。 友梨佳】

「友梨佳、、、、気のせいか」

その名前を見た瞬間、過去の記憶が思い返される。

・・・・・・・・・・

17の時に付き合っていた彼女を妊娠させてしまった俺は、高校を中退し、彼女と二人で子どもを育てながら生活していくことを決めた。

最初は仕事を頑張っていた俺だが、何もかもが面倒になり、仕事もやめ、ろくに子育ても手伝わなくなっていた。

娘がある程度一人で家で過ごせるようになったころから、嫁は俺の代わりに夜の仕事に行くようになった。俺は嫁の稼いだお金で、酒とパチンコにはまり、家にいるときは嫁にも娘にも手を挙げるようになった。

そして、ちょうど10年くらい前のこの時期だったと思うが、酒を買った帰りに家に帰ると、机の上に離婚届が置いてあった。

今の帰り道が、その瞬間と少し重なるような気もした。

・・・・・・・・・・

俺は、もう40になろうとしている。
あれ以降、娘の顔は見ていないが、今普通に生活しているなら成人したくらいだろう、、、

「あの、、すみません、、、」

急に後ろから声を掛けられ、我に返った。
後ろを振り返ると、若い女が険しい顔で俺の顔を見ながら立っている。
見覚えのあるようでないような顔だ。

「山下、けんじさんですか、、?」

「はっ、、?そうやけど、、、。誰やおまウ””ッ、、、‼」

・・・・・・・・・・



「次のニュースです。昨夜未明、○○市▽▽商店街の通りで、◇◇市に住む無職の男性が、何者かによって殺害される事件が発生しました。目撃者の証言によりますと、体には刺されたような傷が複数個所にあり、、、」


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