『メタバースはZoomと比べて何がいいの?』~【新しいWeb3ビジネスのアイディアのタネ】・Web3ニュース2022.7.14
■メタバース、Zoomと比べて何がいいの?はごもっとも。
メタバースが来る!とはよく言われますが、実際に体験してみると「これ、ホントに来る?」と思うこともしばしばあります。
疑問を持ってしまうメタバースのユースケースは多くの場合、コンテンツ側に問題があるように思います。
・3D空間だけがあって人がいない
・一見立派な建物や光の演出がされているが、展示内容に意味がない
・薄い情報が得られるだけなのに移動に100倍時間を費やす
こんな感じのメタバースイベントに出くわしたことがある方は多いんじゃないかと思います。
遠隔地で生の声を聴くという目的を叶えるならZoomでもYouTube Liveでも可能です。
表情や身振りなどが不要で肉声を聞くだけなら最近はTwitter Spaceで文字通り生の声を聴く機会も増えてきました。
リアルタイムでなくていいのであればWebサイトやSNSで文字情報として読む方が短時間に情報を得られる場合も多いと思います。
今回の記事の記者さんのようにメタバース発表会で「資料が見られて音声が聞ける」という体験しかできなかったら既にあるメディアテクノロジーと比較してしまいます。
Zoomでよくない?むしろZoomの方が聴き逃しが少ないし人間の表情もわかるし優秀じゃない?メタバースいらなくない?
それはメタバースが役に立たないのではなく、Zoomにできないことをやっていないコンテンツ側の問題だと思うんです。
■ではメタバースらしい使い方とは?
結論を一言でいうと「できないことをできるようにすること」だと思います。
Zoomにできないこと、YouTube Liveにできないこと、リアル展示会にできないこと、リアル会議にできないこと。メタバースでしかできないこと。
この「できないことをできるようにすること」があまり考えられておらず派手なVR空間と建物やオブジェだけが置かれているだけのハコモノがあまりにも多いことが今のメタバースのツマラナイところです。
今回のアクセンチュアの発表会ではハコモノに留まらないように、メタバースでしかできない演出を入れています。しかしあまり良い効果が得られなかったようです。
と、会場から南の島への移動時間ゼロで、一方通行のプレゼンテーションから双方向の囲み取材の場に切り替えて見せる演出を入れています。
しかし「あまり砕けたムードは感じられず」とある通り試みとしては成功していません。
これは記者の「取材」という目的とズレた演出だったからだろうと思います。
先日のIVS2022ではまさしく南の島、沖縄のビーチリゾートという現実世界を使ってフィジカルな交流会が行われました。南国の美しい海と砂浜、酒、爆音のEDM、ネオンカラーの派手なライティングと、砕けたムード演出を徹底した結果、参加者が打ち解けて交流が一気に進みました。
そんな雰囲気をメタバースの「一瞬でワープ」という演出で作りたかったのだろうと思いますが、実際には人混みの熱気も気を緩ませるBGMや酒もない南の島に連れてこられてもその雰囲気は出せないはずです。
むしろ囲み取材用の小さなブースで個別に詳しく取材できたり、より詳しく知りたい部分だけをバースのワープを駆使して自分だけに見せてくれる1on1の方が、記者の取材目的とメタバースでしかできない演出を伝えることの両方を叶えられてよかったのだろうと思います。
メタバースにしかできないことを盛り込むことは重要ですが、それが来場者の目的にかなうこと、意図通りの効果を発揮するために見た目以外の部分やユーザーの置かれている環境(酒は飲んでいない、BGMは鳴っていない、取材で来ていて浮かれていないなど)も含めて演出する必要があったようです。
行けない場所に行く、一瞬でワープする、は確かにメタバースでしかできないことなのですが、上記の例で「新しいビルのお披露目」なら新しいビルの売りの部分を場面転換・移動時間ゼロで案内してみせたり、竣工後は壁の内側で見られない部分を透過して見せたりすれば「新しいビル」の凄さを知りたい来場者の目的にかないます。
宇宙ステーションや南極基地を無意味にどんどん見せられても「すごいねー」だけです。そしてYouTube動画で見ればよくない?説明はZoomでよくない?となります。
今回は触れませんでしたが、お互いアバターであることも必然性があれば、Zoomなら表情がわかるのに、というビハインドも優位点に変わります。
今回の記者さんは一方通行より双方向コミュニケーションの方がメタバースに向いているのではないかとおっしゃっていて私も同意ですが、双方向であればメタバース、という感じでもないかなと思っています。
Zoomでも電話でも距離を感じさせない双方向コミュニケーションですので、さらにメタバースでしかできないこととして「体験的に情報伝達できること」の要素があったり「アバターで社会的シガラミなくコミュニケーションできること」のようなものがあってこそだと思います。
■世界中をVR旅行するのは参加者と目的を一致させやすい
体験的に情報伝達できることで多くの人にとって身近な例が「VR旅行」ではないかと考えています。
一瞬で行けること、体力を使わないこと、安全であること、安価であること、行けない場所や入れない場所に行けることなどがメタバースなら提供できます。
参加者の目的は旅行で、旅先で見たいものを体験的に見るということは叶います。旅行というもの自体が体験そのものであって、旅行ガイド誌を読むのと違って身体性が求められます。
現地の人との交流や現地の美味しい料理を頂くなどメタバース旅行だけでは叶えられないものももありますが、旅行に求めるかなり多くの部分をメタバースなら叶えることができます。(もちろん旅行者のニーズに依りますが。)
■ビジネスシーンでの上手なメタバース活用方法はこれから
来場者の目的×メタバースでしかできないことの掛け合わせが重要で一致点を作りやすい例として「VR旅行」を挙げましたが、今回の記者さんの取材ケースのような「展示会」でメタバースを活用するシーンは今後もっと増えてくると思います。
ビジネスシーンでの上手なメタバースの使い方や演出方法は確立していませんが、展示会専用に機能を充実させたバースが今後登場し、場面転換や個別商談ブースへのワープ、申し込みや契約の電子化機能提供なども備えて普及していくのではないかと予想しています。
メタバースだからすごい、VRゴーグルで没入感、というだけの時代感覚からもう具体的なユースケースの洗い出しの時代に入った感覚がありますので、今年後半からよりメタバースの凄さが伝わる事例や、逆にものすごく身近で親近感が湧く事例が数多く出てくることを期待しています。
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