見出し画像

『音楽サブスクは地獄。ならばNFTは福音になるだろうか?』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2022.9.27

■アーティストにとってサブスクは地獄の入り口か?──ストリーミングが変えた音楽産業

9月20日にミュージシャンの川本真琴さんが「サブスクの利益がどれだけ少ないかを知ってほしい」とツイートで訴えたことをきっかけに、音楽サブスク周りの話題が盛り上がっています。

サカナクション山口一郎さんも反応しています。サカナクションほどのポップアーティストでも「収入はほぼない」とのこと。

仕組みがそうなっているので当然発生することですが「曲を777回以上聴いていただいた方に、もれなく特別グッズをプレゼントします!」というチートっぽいキャンペーンも増えているそうです。

Spotifyの収益案分の仕組みについては以下の記事が非常に詳しいです。



■NFTで「サブスクでは食えない」問題が解決できるか?

web3、NFTでこの「サブスクでは食えない」課題を解決しようとする動きはずっと以前から起きていました。

地獄の入り口か?」の記事でも、2022年の記事らしくNFTにバッチリ触れて可能性を探っています。

NFTの発想は、ファンにCDの複数枚購入を促すようなビジネスモデルより健全でもある。CDの複数枚購入は投げ銭の域を出るものではなく、「信者ビジネス」とも揶揄されるようにファンの射幸心を利用した宗教活動のようですらある。

NFTはタニマチ、アーティストを応援するモデルとして期待されるもので、かつAKB商法と呼ばれる同一CDを大量に買わせるモデルよりずっと健全。

より詳しいNFT×音楽の可能性については、IVS 2022 NAHAでお知り合いになった、ご自身でも音楽NFTプロジェクトを手掛けられている武田信幸さんの1万3000文字に及ぶ超大作記事がオススメです。

お題の「NFTで「サブスクでは食えない」問題が解決できるか?」についてですが、武田さんもサカナクション山口一郎さんも同じニュアンスをおっしゃっています。

サブスクの登場によって音楽の価値は形を変えていきました。音楽業界が得られた価値もあれば失った価値もあります。特にインディペンデントアーティストにおいてはその影響は活動を揺るがすほどに甚大です。今はNFTがインディペンデントなアーティストやそのファンに浸透し、既存の生態系へのカウンターカルチャーとしてまた音楽の価値を取り戻すことになったらいいなと思っています。

武田信幸さんの見立て

インディーズで自ら制作費を出した場合は原盤権をミュージシャンが保持できるため、サブスクで分配されるパーセンテージが変わり「メジャーより売れなくても結構ちゃんと収入になる」と分析。

サカナクション山口一郎さんの見立て

サブスクなのかNFTなのかに関わらず、ミュージシャンが音楽を生業として食っていくにはインディーズの方がいい。というニュアンスです。

インディーズは小~中規模で身軽なので、薄利なサブスク案分でも原盤権を持っていることで食っていくことに近づけるし、NFTでも国内で1万人しか買える人がいないにも関わらず「活動を揺るがすほどに甚大」な収益効果をもたらす、とお二人とも捉えています。


■FIREすればNFTで食っていける?

つまり、これまでのミリオンヒット連発のような規模で巨万の富を得るようなトップ層ではなく、必要な固定費をミニマムにすることで限られたファンのタニマチ応援費用でも十分食っていける、かつ自由な音楽による表現活動が続けられるバランスが取りやすいのがインディーズだということだろうと思います。

NFTの市場規模がこれからもっと大きくなった時でもおそらく、インディーズで食えるミュージシャンの人数が増える方向で広がっていくのだろうと予想しています。NFTで巨万の富を得るミュージシャンも一部出てくるとは思いますがミリオンヒット的な曲やアーティストの数はもっと減るでしょう。大きな世の中の流れとして「分散化・非中央集権化」が進むとすると、巨大な音楽プロモート企業もフラット化するしミュージシャンの人気規模もフラット化するのだろうと思います。

誰もが知っている共通の話題としてのヒット曲はテレビなど大型メディアの衰退によって今でも減っています。それはちょっと寂しい気もしますが、音楽の多様性が広がるのは良いことだなとも思います。

何より、好きなことで食っていくことができるアーティストが増えることはよいことですし、NFTのある意味での証券性によって推し活で食っていけるファンが増えることも良いことだなと思います。

その状態を実現するのに適切なサイズは、まずは小さいのだろうと思います。FIREを目指す人のような感じでしょうか。

FIREはお金に縛られない生活を手に入れることだと言われながら、固定費を下げることに血道を上げるというむしろお金を強く意識する生活ですし、家族を持つ、子どもを進学させるなどの選択肢を失わせてしまう可能性もあり課題はあります。巨万の富も極端なFIREも、なにごとも極端は良くない。

それでも大きな流れとしてはミュージシャンのインディーズ化によるFIRE的なベクトルと、ミニマム化した固定費を賄うだけのファンの数と、ファンの応援の証としてのNFT、でマネタイズしてくのが直近10年の音楽業界の流れなのだろうなぁと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?