美容とSDGs

【美容業界】SDGsへの取り組み〜新時代のビジネスデザイン思考〜

SDGsで定められたゴールまでいよいよ10年を切った。SDGsが国連サミットで採択されたのが2015年9月の事。

2016年から2030年までの15年間で達成させる目標を掲げて既に5年以上が経過している。

SDGs(持続可能な開発目標)とは,2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標です。持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)ことを誓っています。SDGsは発展途上国のみならず,先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり,日本としても積極的に取り組んでいます。<外務省HPより>

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私は美容師である。まず初めに起こしたアクションはSDGsの上の画像をプリントアウトしてサロンのバックヤードに貼り付け、自分のスマホにも画像をホーム画面に設定した。

そしていつもはAmazonしか利用しないのだが、わざわざ書店に足を運びSDGs関連の書籍を手に取った。


物事を多角的な視野で捉えるためのSDGs

昨今のビジネスのトレンドを眺めていると、答えは既に溢れていてその答えに対するアプローチをどうビジネスデザインするか?

または、インターネット以後の時代においてアイデアには価値がなくなり、そのアイデアにどうやってインセンティブを発生させるか?と言うルートを構築できる起業家が成功を収めているように思える。

例えばメルカリを例に挙げると、モノが溢れた今の時代にそのモノの所有者を手軽に変換する仕組みをデザインしたビジネスモデルだ。インターネット以前ではお店でモノを買い、使わなくなったらリサイクルショップに売りまた新たな所有者を待つ。

その仕組みを個人と個人を繋ぐプラットフォームをインターネット上に作り、ダイレクトに所有権を動かすことによりモノの寿命を伸ばす事に成功した。

つまりSDGsの12項目「つくる責任、つかう責任」17項目「パートナーシップで目標を達成しよう」に当てはまるビジネスモデルだと思う。

このようにモノが溢れ、サービスやインフラが行き届いた日本において新たなビジネスを生み出すためには物事を違う角度から見る。つまり多角的な視野が不可欠だと私は思っている。

実は日本には古くからそのような思想が存在していて世阿弥が唱えた「離見の見」や禅の「禅問答」の本来の意味などはそれにあてはまる。

その多角的な視野の1つにSDGsを加える事で見えてくる世界観があるのではないだろうか?

言い方を変えれば、既存のビジネスにおいて新たな発想としてのSDGsへの取り組みは物事を多角的に捉える事ができる非常にポジティブな活動である事は間違いない。

ここで1つ、昨年私がSDGsの観点からデザインした美容室における新たな新規集客システムを紹介したい。

簡単に説明すると、Amazonの荷物を弊サロンで受け取れるサービスを始めた。それによる第一の目的はに配達業者が抱える再配達問題の解決にある。その問題解決にあたりECサービス最大手のAmazonの荷物の一時預かりをコンビニに頼り切らず、コンビニよりも約5倍の店舗数がある美容室で同様のサービスを展開したのである。

それを可能にしたのがecbo株式会社が提供するAmazon カウンターサービスである。

そうする事で美容室近隣住人が同サービスを利用し、美容室に足を運ぶ事で新規集客の動線を確保した。まさにSDGsの17項目「パートナーシップで目標を達成しよう」である。

配送業者、Amazon、ecbo株式会社、近隣住人、美容室。これは「三方よし」ならぬ、「五方よし」のビジネスモデルだ。

このように、経済活動において今後のビジネスモデルの構築は多角的な視野が必要であり、そこにSDGsの観点を是非取り入れるべきだと思う。

おそらく多くのビジネスマンが目標に向かってひたすら走り続けている時代だと思うが、ふと立ち止まって後ろを振り返ってみたり空を仰いでみたり、時には横道に逸れてみたりする事で多角的な視野を持てるならそれらの行動に少し忘れられていた人間本来のあり方みたいなものが存在しているのではないかと感じている。


個人が取り組むべき持続可能な活動

では、個人レベルではどのようにSDGsに取り組めば良いのだろうか?

その答えはやはり先に述べた多角的な視野を日常生活に取り入れれば問題ないと思う。既に一般誌にもその取り組みは溢れている。

「サスティナブルファッション」というキーワードは皆さんもよく目にするのではないかと思う。

読者が何だろう?と興味を持つには一般誌や広告会社の活動が与えるインパクトがとても大きい。美容室では雑誌との関係性も高く、お客様と美容師が一緒にSDGsについて会話をする機会も多くなってきている。

一方で、SDGsを意識高い系のブームだ。と言ったり、ファッションに取り入れるのはどうなの?などという意見もある。

しかし私はそうは思わない。地球規模のマクロ課題を解決しようとしているのだから、その解決方法はミクロ単位での意識改革に始まり行動に移していく必要があるのではないか?

つまり、国連で掲げられた目標が各国政府に降りて、そこから大企業へと降りるトップダウン。そして個人から家族、さらに地域コミュニティへのボトムアップ。このようにいくつかのレイヤーにまたがり活動していく事で10年後の目標達成に近づけると思う。

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ESG投資のような環境や社会貢献度が高い企業に投資が集まる傾向は世界中で増加している。つまりSDGsへの取り組みをしている企業の方がそうでない企業よりも投資家の目に止まりやすい世の中になっているのだ。

結果、資金が集まり持続可能な企業活動も行えるという好循環が生まれる。

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では、個人レベルの日常生活においてはどうだろうか?

実はSDGsを意識しなくとも既に日常生活の中にその活動意識は溢れている。スーパーのレジ袋の有料化、紙ストロー、さらにはシェアリングサービスもそれにあたるだろう。分かりやすく言えば「エコロジー」や「環境に優しい」というフレーズとして捉えればイメージしやすい。

そして最近注目を集めるエシカル消費は個人の取り組みにおいて非常にわかりやすい指標だと思う。つまり、日々の買い物の時に「こっちの商品の方が環境や社会の事を考えて作られた商品だよね。」という選択をする消費活動の事である。

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日本のGDPは6割を個人消費が支えていると言われている。つまり、政府や企業の活動よりも個人の最終的な消費判断がとても大きな意味を持っているのだ。

もちろん、既にそのような消費活動は無意識のうちに実践している方も多いとは思う。しかしそのような活動をSDGsやエシカル消費のような少し大きなフレームを意識する事で地域や社会、さらには地球規模の取り組みへの自分自身の貢献度を感じる事ができるのではないだろうか?

そして、その意識を家族や友人に伝える事で2030年までの目標に飛躍的に近づく事ができるはずだ。


SDGsは慈善活動ではなく新時代のビジネス指標

ここまで読んでいただければ既にお判りいただけたと思うが、SDGsは慈善活動ではない。

普段、経営者の方とお話しする中でSDGs関連の取り組みについて話題が及ぶと「大切な問題だと思うが、取り組む時間と予算の余裕がない。」といった答えが返ってくる事が多い。

しかし、そのような方はSDGsの本質が見えていない。

前述したように投資や消費は今後、確実に地球環境、教育福祉、次世代エネルギー、ダイバーシティへの取り組み。つまり持続可能な開発活動を行なっている企業や団体に資金が集まる傾向にある。

言い方を変えると、今の資本主義経済はこれからの未来に向けた新しいエコシステムを構築しようとしていて、各企業や団体は既存のビジネスに新たな「意味」や「ストーリー」を加える事でより多くの利益を得られる時代になった。という事である。

ここで言う「意味」や「ストーリー」がSDGsに関連する活動や目標に当てはまる。つまりビジネス活動において既存の事業や業務を差し置いてSDGsに取り組むのではなく、従来通りのビジネス目標にプラスアルファの要素としてSDGsへの取り組みを加える事が重要なのだ。

では実際に美容室においてSDGsへの取り組みはどのようなものがあるだろうか?

紙のカルテから電子カルテに移行したサロンも多いと思うが、これも環境に配慮する立派な「意味」がある行いだ。
ご新規の方に顧客情報を記入していただく際に、性別項目を削除する事も「ジェンダー平等」に当てはまる。
少額のチャリティーメニューを作り、そのメニューの売上は全額寄付する事でお客様と共同体験での取り組みが実現できる。
ヘアードネーションへの取り組みも価値ある共同体験だろう。

このように少しだけ多角的な視野を持ち、日常のサロンワークに目を向けた時に従来のKPIに縛られない新たな利潤動機が見えてくるのではないだろうか?

「SDGsを取り入れた新しいサービス」をテーマにミーティングを開けば今まで出てこなかったアイデアに出会えるはずだ。そのためにも多角的な視野を持つための知識をインプットする方法として、SDGsを分かりやすくマンガで解説しているこちらの書籍をスタッフやお客様、または家族や友人で共有してみるのも良いと思う。

さらに本記事よりもより詳細なSDGsへの取り組み方が知りたい方はこちらの書籍が大変参考になると思う。


本当の「幸せ」が何かを考えてみよう

最後に、私たちがが思う「幸せ」とは一体どのようなものでしょうか?

よく耳にする「スタッフ、お客様、業者さん、地域住民。美容室に関わる全ての人を幸せに」というフレーズがあります。

しかし、「幸せ」の定義は今の時代において人それぞれ違ってきているように思えます。多様化し混沌とした現代において、全ての人が共有できる「幸せ」があるとすれば、それはとてつもなく壮大な課題解決に地球上の全ての人が共に取り組みその目標を達成し、次の世代に繋げる事ができた時に全ての人と「幸せ」を共有する事が出来るのではないでしょうか?

私は、そう思います。





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