夏の思い出に 蝉の声は響かない 確かに聴こえていたはずなのに まるで初めからそこにいなかったように 体験だけが ありありと私の夏を象っている 汗で張り付いたシャツが…
私の二の腕を這うように あなたの柔らかい黒髪がさわさわと音を立てている 瞼の蓋をトルコ石のような涙で飾って ずっと私 見ていられる あるときは文字を あるときは身体…
森野オオカミ
2021年8月20日 22:09
夏の思い出に蝉の声は響かない確かに聴こえていたはずなのにまるで初めからそこにいなかったように体験だけがありありと私の夏を象っている汗で張り付いたシャツがくくった髪とその内側に篭る熱が頬張った製氷機のカルキ臭い氷が夏を私のものにしてくれる蝉は何をしていたんだろうそこかしこから聴こえる彼らの声も煩いから、邪魔だから私は思い出の中で知らないふりをしているのかもしれない
2021年8月18日 18:31
私の二の腕を這うようにあなたの柔らかい黒髪がさわさわと音を立てている瞼の蓋をトルコ石のような涙で飾ってずっと私見ていられるあるときは文字をあるときは身体をあるときは影をあるときは空を重ねて、混ぜて、結い上げながらこれからどうしようかなんて私たち心の臓でケラケラ笑った心地よい部屋の温度をなぞりながら私は私でいることを手放して私があなたの声になるあなたの指も溶けて