見出し画像

世界史を振り返るーーにしむらじゅんこ著『クスクスの謎』を読んで

 にしむらじゅんこ著 平凡社新書 2012年出版

 最寄りの図書館で、世界の料理フェアをささやかにやっていて、この本が選書されていたので、おもしろそうだから借りてみた。

 クスクスという粉でできたパスタのような食べ物について、歴史や、いろんな国での料理方法や、組み合わせるスパイスの話が書いてあった。

 クスクスは挑戦してみたい料理だったが、なかなか日本では売っていなくて今まで作ったことがなかった。この本を読んだ後、iHerbで売っているのを見つけて購入した。届くの楽しみ。タジン鍋も買いたいなと思っていたけど、クスクスもいろんなのがあって、蒸す方法と、ゆでこぼす方法もあるようだ。

 クスクスの歴史を探っていくと、バルバル人と関係がある食物で、異国から来た人という意味で「バルバル人」という語が使われるように、そういう人たちが持ってきた食材なので、いわゆる人種というか国というかそういうので括れない食材のようだ。

 興味深かったのは、マグレブ五国と呼ばれるアルジェリア、モロッコ、チュニジア、モーリタニア、リビアの西部が日常食でクスクスが食べられており、「クスクスライン」といわれるらしい。

 「マグレブ国、とりわけモロッコで料理の伝統を口承で受け継いできた、しばしば料理人として雇われている黒い肌の女性「ダダ」たちの存在である。ダダは、単なる家政婦ではなく、モロッコ料理の伝統をずっと守ってきた「時の守人」でもあり、薬草や台所医学に精通し、子供の躾・教育係も兼ねており、モロッコでは一目置かれる存在であり続けた。」p. 59

 という記述がとても面白かった。料理人として雇われている黒人の女性は歴史上で何か特別な存在だったのかもしれないとふと思った。大学入試で世界史をとった私としては、そのときに取得した知識が蘇ってくるようなことがこの本を読んでいたらいろいろあったが、そのなかでも、いわゆる王道の歴史から外れた道が、このクスクスという料理には流れているのかもしれないと思った。マイノリティの歴史のようで、現代にもいろんなところで食べられている料理で、そんなクスクスの辿ってきた道を知りたくて、私も今度料理してみようと思ったのでした。


この記事が参加している募集

#読書感想文

188,766件

#新書が好き

722件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?