見出し画像

素朴な感想ーー『スティーブ・ジョブズ ⅠⅡ』を読んで

 ウォルター・アイザックソン著 井口耕二訳 講談社

 兄の本棚にあって、長いけど、まあ読んでみようかな、と思って、読んでみた。

 二巻に別れてる分厚い本なのだが、夢中になって読んだ。伝記というものは、自分が迷ったりしているときに読むといろいろ感化される。わくわくした。

 一巻は、ジョブズの若かりし頃のことが書かれていて、瞑想など、東洋思想に夢中だったヒッピーだったようで、こういう風に瞑想とか毎日してたから、クリエイティブな発想とか、徹底的にこだわる集中力が仕事で発揮されたのかな、と思った。

 天才なのだが、気性が荒い。他人を平気で罵倒する。いやなやつだな、とも思えるのだが、アップルで一緒の会社の人たちがすごいな、と思った。ジョブズの付き合いにくいところをユーモアとして取り込んで付き合っていく様子など、日本の会社ではこういう関係は成り立たないのでは、とちょっと思った。

 下巻はジョブズが癌になってから、アップルもipod、ipadなどを販売してノってくるところである。癌が発覚してから、早期発見だったにもかかわらず、はじめは手術をせずに、有機栽培のニンジンジュースを飲む、とかそういったことをやっていたらしく、それで、治るはずだった癌が手遅れになった可能性もある、と言われているらしいが、それはどうなんだろう。手術した後も、食事にうるさく、こんなもの食べられない、と拒否したり、マスクをつけるのでさえ、こんなデザインのものはつけないといったり、めんどくさい人だったらしいが、ここまでこだわりがあるのも、すごいな、と思う。

 総じて、仕事ばかりで家族や娘息子、また、自分は父親じゃないと否定した娘に対しても、まともに父親らしい態度をとってこなかったらしいが、ジョブズがアップルでやったことが並大抵のことじゃないと思うと、人間、欠落はあるよね、と思ってしまう。実際自分が彼と関係する周りの人間だったら、なんてやつなんだ、と思うことはあるだろうが、大物の伝記としてこういう話を読むと、そういうストーリーはありえると思って、許せる。

 ジョブズが時に周りに横暴だと思わせるような態度をとっていたことや、人前で怒鳴ったり、泣いたりするのは、どうしたらそこまで自分に素直になれるのかな、と思う。天才、と言って片付いてしまうことならそうなのかもしれないが、そこまでさらけ出せるほど、仕事が楽しくて、新しいものを創造することが楽しかったんだな、と思うと、その情熱は何ものにも代えがたいんじゃないかな、と思う。

 イッセイミヤケの黒のタートルを何枚も持っていたという彼は、とにかく自分のスタイルというものを持っていた人なんだろう。だからこそ、好奇心旺盛で、自分にはないものを探していた人なんだと思う。それが、クリエイティブな発想に繋がったんだろう。


この記事が参加している募集

#読書感想文

189,685件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?