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哲学的な問いと実用的な問いとーー『限りある時間の使い方』を読んで

オリバー・バークマン著 高橋璃子訳 かんき出版 2022年出版

 本屋さん歩いてたら、発売されたばかりのこの本があって、ちょっと面白そうだな、と思ってたが、買わなかったら、あれよと売れていったので、やっぱり読んでみようと思って購入した。

 ニューヨークタイムズのコメントが帯に載ってたけど、アメリカのこういうエッセイみたいなビジネス書みたいななにか、って独特なアメリカの文化があるよな、と思った。

 所々に哲学者など引用もあり、こんな本からも引くのか、と思ったり、国も結構まばらにいろんな思想家や心理学者などの本の引用がとりいれられていたりして、博学だな、と感じる。ただの啓発書としてよりも、読み物として面白いと思う。啓発書だったり、ビジネス書とかそういうたぐいの本を中心に読んでいる人はどう感じるかわからないが、あまりこういうタイプのエッセイ読んだことのない私としては物珍しかった。

 やはり、アメリカはライターが日本とは全然違うように独立している仕事として成り立っているようにも感じた。新聞社で働いていたライターたちがすごく仕事としてしっかりしたポジションにあるというか。しっかりした地位があるんだな、と思った。そういうライターもいる、ということなんだろうか。日本の新聞記者ではあんまり聞かないな、と思った。

 あと、なんか文章の書き方の違いも感じた。英語の原書ではなく、翻訳本読んでて思うことだが、レトリック的な次元の話で、なにか日本のライターたちとは違うものを感じる。最後には、まとめも載っており、「限りある時間の使い方」を簡単に要約している。そういうの見ると、さすが、アメリカの実用的な面を感じる。

 「時間」というものは、とても哲学的な概念を含んだものであると同時に、もっととても実用的な面でも語れるものであるとこの本読んで思った。時間管理など、ビジネスマンにとってはそれを制覇したものが、ビジネスでも成功する、みたいな考え方があって、いかに有効に使うか誰もが知りたいところだ。私としては、始めは一日の時間の使い方を考えたいという気持ちの元に読み始めたが、やはり、哲学的な問いの方が私には合ってるな、という気がした。実用的な問題は、自分が実際無職から普通に仕事するようになってから、就職したらそんなの大した問題じゃなかったな、と思うようになった。普通に朝から夕まで拘束されるから。無職の時、あまりにも一日の使い方を自分で管理しなきゃいけなかったから、こういう本を私は読んでみようと思ったのだと思った。

 でも、アメリカのこういう哲学的な問いから一般的な実用性のあるものまで網羅した考え方が受け入れられる文化は好きだ。

 どちらかというと、こういうタイプのエッセイを書けるような人間に私はなりたい。


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