見出し画像

マスク被った狂人が犯罪者を追い回す映画:ザ・バットマン感想

ホラー映画なんよ、追い詰め方が(相席食堂の存在しないツッコミ)

というわけで表情が実写バットマン史で一番表情の死んでるブルース・ウェイン(演:ロバート・パティンソン (正直なトレイラーでの呼び名もとい蔑称:シャベル顔))が犯罪者をぶちのめす映画ことザ・バットマンを観ましたわよ。
まぁ、恐ろしく疲れた。というの3時間もの長尺で恐ろしいくらいにハードな作風で癒やし所がほとんど皆無で殺伐としてるのでこれで上映を推し進めた人間ほんとすげぇよ。嫌味なしでほんと敬意に値する。
例のごとく、実写バットマンはフォーエバーとミスターフリーズを観てないにわかでコミックもイヤーワン(原語版)を序盤とデスストロークしか読んでないクッソにわかからの視点なのでイラつく人はかなりキレそうな感想の内容かも。あとボカして書いてはいるけど展開のネタバレあり。

元の企画は記憶が正しければ、バットマンVSスーパーマン(以下BvS)から引き続いてベン・アフレック演じるバットマンの単独映画の企画でしたね。しかし当時のDC映画はDCエクステンデッドユニバース(以下DCEU)というマーベルシネマティックユニバースの猿真似を仕掛けたわりに出来と観客の振り回しがアブノーマルだった。まだ見捨てていなかったファンが期待していたジャスティスリーグはテコ入れでなんか変なことになったり再撮影の事情が地獄めいてベンアフももう勘弁願いたいほどだったとか。そのお陰で彼の友人からは「この映画の仕事引き受けたらあんた死ぬわよ(意訳)」と言われてお蔵入りに。
その後、DCEUとは関係ないDC映画というややこしい立ち位置として上映された『ジョーカー』がヒットし、こういう風にユニバースとして繋げなくてもヒーロー映画は作れるというコペルニクス的転回を覚えたワーナー・ブラザースはDCEUに繋がらないバットマンの単独映画を作るに至った……でいいんだよね?
ワーナーに対しての「おまえほんまそういうところやぞ」ってツッコミは置いておいてもう感想に入らなきゃね。

主演は過去にトワイライトシリーズに主演したはいいが、「正直なトレイラー」に目を付けられシャベル顔とネタにされたが、コツコツとキャリアを積んでTENETで主人公の相棒のニール役を勝ち取り見事に全世界のカプ厨やシッパーを虜にしたあのロバート・パティンソン。見習いたいその努力。
どんな時も表情自体が死んでおりバットマンじゃない時もしんどそうな顔をしてて「こいつ絶対バットマンだろ」と言われたら否定出来ないくらいにハードなオーラを纏っております。まさに『復讐』の権化。ゴッサムシティを根城に暴れ回ってるけど正直パンピーでも見かけたら逃げると思う。そんな変態ヴィジランテと3時間も観客は共にするのでこいつヤベェ感がトップクラス。
BvSから本格的にバットマン映画を観直して、アーカムナイトをクリアあしたりコミックシリーズそんな知らないのになぜかデスストロークの単独作品を読んだりと、曲がりなりにバットマン作品を履修してわかったのは「やっぱりこいつ異常だよ」って所ですね。
その異常ぶりが今作ザ・バットマンでかなり顕現されてて、BvSでのストイックかつ容赦ないバットマンの名残が見えて素晴らしかった。というのもスタイリッシュなアクションでもスマートな身のこなしではなく、相手を無力化するためにボコボコに相手をめった打ちにするのに特化してるんですよね、DCEU版と今作。それに加えて今作はなんとバットマンもボコボコになるし被弾する。それでも立ち上がったり防弾仕様なところがホラー映画の文脈をなぞってるよね。そりゃ悪人にとっての恐怖だよ。お前はどこのマイケル・マイヤーズだよ。
過去作実写バットマンも「かかって来いよ、テメー終わりだよ」オーラがムンムンしてましたが、パティンソン版はなんというか世捨て人に片足突っ込んでいて過去作ではまだ見えていた余裕が無い。
過去の実写版バットマンではプレイボーイで遊び人の大富豪で思い出したかのように実業家をするブルース・ウェインを見せたり、相棒で執事で擬似親のアルフレッドとの軽妙な掛け合いがあった。パティンソン版はというと、ブルース・ウェインとしての姿ですら表情が死んでては世の中の役に立っている訳でもなく、アルフレッドに対しても反抗期どころか「親父でもないのにウェイン印のボタン付けんじゃねーよ」って言ってしまう始末。あまりにも常時ギスギスしてて自警活動よりストレスが原因で死にそうにしか見えない。
今作はそんな彼の成長劇でもある。自称『復讐』としてゴッサムで暴れ回る彼だけど周りからは狂人扱い。じゃあどうすれば『復讐』という闇から抜け出せる?悪人へ恐怖を与える以外にどうすれば世の中をマシに出来る?そんなアンサーが詰まっており、そこへの答えが見つかった時のシーンの画はまさにヒーローの姿が見えました。宗教画か?(相席食堂の存在しないツッコミ)

そんな彼に敵対するのがポール・ダノ演じるリドラーやコリン・ファレルが扮するペンギンにトランスフォーマーでマスコットのシモンズ捜査官を演じたジョン・タトゥーロが演じるファルコーネ。
この方々もバットマンに負けず劣らずに怖い。とにかく関わりたくないし、関わってなにかヘマしたらもれなく海に沈められそうなオーラがプンプンしてる。
この三人のヴィランを余すことなく描いているので消化不良になることなく一つひとつの物語(プロット?)を見せてくれた。そうか、だからこんなに胃もたれするような疲れが出たのか。こんな怖い奴らを一つの作品で濃く見せたらそりゃバテるわよ。ペンギンはこの映画唯一の癒しである尋問シーンが華でしたね。
特にリドラーはジョーカーから引き続くテーマの『社会的弱者として育ったヴィラン』として描かれて、物語の転換点となるシーンやバットマンに追い込まれた時の様子はなんとも。環境で生まれてしまったヴィランの描かれ方としてはかなり良かった。リドラーが暴くある人間のエゴがバットマンの転換点として働くのだけど、なにも出来ない立場に生まれたのにそれでいて目上の人間がエゴを振りまくというのが許せないというのは親近感が湧くよね。そこが映画ジョーカーと繋がっているテーマに思えるの。あれは目上の人間共がろくでなしのマジの身勝手だったけど。
そしてジョーカーと繋がるのが一つの悪人が着火の点となって暴れたいだけの無法者のつがいが外れる所。SNSというかダークウェブでリドラーの悪行が広まってそいつに影響された人間が映画ジョーカーの終盤よろしく暴れ回ろうとする。しかしその作品と違うのは、善の心を持つゴードン警部補をはじめとする警察、感化されたキャットウーマン、苦境に立たされたにも関わらずめげない市長候補。そして彼らを導くバットマン。世界は腐ってるけどこういう風に立ち上がる人間や正しい方向へ導こうとする人間が居るという事を示したのが映画ジョーカーとの違いだと思うしここら辺がバットマン映画というかヒーロー物だなぁって思えるよね。

と、まぁ。思いのままに感想を書いたけどなかなかにめちゃめちゃだなぁこの文章。どうせ見る人間もそこまで居ないだろうし見直すのも面倒なのでここらで打ちやめにしましょ。
あと、吹替版で観たけど素晴らしかったなぁ。とにかく丁寧なローカライズでキャストも豪華で渋い。俺のツボにめっちゃハマって良かったし、辻親八ボイスのゴードンはめっちゃ最高。3時間もある映画だから字幕で観るより疲れを抑えて確実に情報を的確に追えるのでおすすめ。ちょい役で千鳥ノブと佐藤隆太が出てたけどめっちゃ上手だったね。だから相席食堂ネタをここでしつこく出したんです。

以上、オチはありません。

この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?