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元少年ゲーマーの保育日記#2〜年長クラス編

ゲーマーだった少年が、成長とともに
葛藤を経験し、保育士として働き始めた、
自伝的エッセイ風物語。
今回は年長クラス編の第2話です。
新米保育士編(全10話)はこちらから↓


【あらすじ】
将来の夢なんて何もなかった
元少年ゲーマーフォルテ。

そんな彼が
初めて自分の意思で歩んだ保育士の道。

だが、就職した保育園は
高い離職率、
ピリピリした雰囲気、
はびこる同調圧力のオンパレード

まさに、最悪の環境だった。

新米保育士時代、
彼を待ち受けていたのは
保育園で、絶対的な権力を持つ
ベテランのカミナリ⚡先生。
そして彼女がTOPとして君臨する
カミナリ⚡一族の保育士たち。

運悪くも、カミナリ⚡の女王と一緒に
組むことになったフォルテは

彼女の超強大な圧力に
ボロボロになりながらも
保護者や子どもに助けられ
何とか1年を乗り切る事ができた。

そしてその2年後、
彼は1年目に担当した子どもたちを
年長になってからもう一度、
受け持つことになったのだが

彼が目の当たりにしたのは
変わり果てた子どもたちの姿だった…


     崩壊したクラス

久しぶりに同じ部屋で
この子たちと1日を過ごす。

やっぱりすごく成長している。

朝の支度も、生活面も、友達同士の関わり方も、
すべてが3才の時とは全然違う。

と………初めはそう、思っていた。



進級してから

1週間、2週間と
時間が過ぎるにつれて

彼らはその本性を
少しずつ現しはじめる。

集まりには参加しない。
遊んだおもちゃは片付けない。
物を平気で投げる。
部屋を走り回る。
トラブルが絶えない。

生活、遊び、全てにおいて
落ち着かない。

今までずっと我慢してきた何かを
全力で吐き出すように……


彼らの姿は…荒れていた…


   1年前…年中クラスの時

3才児クラスで
カミナリ⚡先生の支配から
開放されたのもつかの間

4才児クラスで
待ち構えていたのは
カミナリ⚡一族の保育士2名。

これは彼らにとって
カミナリ⚡一族の支配が
2年続く事を意味する。

そりゃ、荒れるだろ。
2年間も我慢したんだ。

しかも4才児クラスの担任、
ヘビー先生とサイレン先生は
カミナリ⚡一族の保育士であるのに
いがみ合うことが多く

クラス内は、常にピリピリした雰囲気だった。

そして、クラスの日常は
この2人の争いに、まきこまれていった。


    スネーク⚡サンダー

ある日の午睡時間。

クラス打ち合わせをしていた
年中クラスの担任2人。

通常、3時前に打ち合わせを終え
部屋に戻るのだが

その日に限って、全く戻ってこない。

打ち合わせが長引いているのか…

だから、元担任のオレが
2人が戻るまで
一時的に年中クラスに入っていた。

『ねぇせんせー、ビリビリ⚡の2人は
かえっちゃったの?😆もう、こない?😁』

「うーん…今、大事なお話しているから
もう少ししたら戻ってくると思うよ。」

『えー、もどってきちゃうんだ😱いやだなぁ🥶』

こんな事を子どもに言わせてしまうって
いったいどんな保育をしてきたんだ…


戻る気配のない2人を待ちながら、
子どもたちと久し振りのおやつを
満喫していると

突然、遠くから地鳴りのような
重たく、体に響き渡る音が
鳴り響いた。


ゴォぉぉぉぉぉ バリバリっ⚡バリバリっ⚡



  「…なんだ…この…地鳴りのような音
        そして圧倒的な…威圧感…」



『ふぉるてせんせー。
  これは、ビリビリ⚡だよ。
   ヘビみたいにねぇ クネクネぇ〜って 
    ゆかから ビリビリ⚡がくるんだよ!』



子どもが状況を説明する。

どうやらヘビー先生がどこかで
カミナリ⚡を発雷させたらしい。

そのカミナリ⚡は
重たく響く雷轟とともに
蛇の如く地面を這い進み
相手に向かって喰らいつく。

ヘビー先生の秘技


その名も


スネーク⚡サンダー




ヘビー先生は
カミナリ⚡先生の右腕として
一族を支えている。

その彼女の秘技、
スネーク⚡サンダーが
サイレン先生に向けて
発動されたのだ。


    サイレント⚡サンダー

スネーク⚡サンダーの重たい雷鳴が
遠くから響き渡ると

それを打ち消すかのごとく
乾いた雷鳴が聞こえてくる。



パチパチパチっ ピリピリっ⚡ピリピリっ⚡




「くっ……今度は…静電気みたくピリピリする…」


『ふぉるてせんせー。
        これは、ピリピリ⚡だよ。
  
 サイレンせんせーって 
     おこると かみのけが
           フワァ〜ってなって 

   ちかくにいくとね 
       からだがピリピリしちゃうの!』



またしても子どもが事細かに教えてくれた。

どうやらサイレン先生が
スネーク⚡サンダーに反応して
カミナリ⚡を発動させたらしい。


サイレン先生は一族の中でも
ちょっと特殊なカミナリ⚡使いだ。

他の先生みたいに直接
カミナリ⚡を落とさない。

彼女が怒る時……
それは静かにやってくる。

怒りとともに全身が震え始めたら
それがサインだ。

次に、彼女の髪ゴムが「ふぁさぁ〜」とはずれ
髪が逆立つ。

その瞬間
周囲のあらゆるものに、静電気が生じる。


パチパチパチっ⚡ パチパチパチっ⚡


パチパチ音が聞こえたら要注意。
それはすでに発雷しているからだ。

こうなるともう手遅れ。
近付くだけで
体中がピリピリ⚡する。

彼女の怒りは静かにやってくる…


空気を伝って…静かに…


その名も



サイレント⚡サンダー



サイレン先生は
年齢こそヘビー先生より上だが
保育経験がまだ浅い。

だから、同じカミナリ⚡一族ではあるが
素直にヘビー先生の指示を
聞けないことが多かったらしい。



こんな2人のバトルを

不謹慎ながら

近くで観戦してみたいと

ちょっとだけ思ってしまう

フォルテと子どもたちであった。


     そして年長へ…

こんな修羅場のような毎日を
過ごしてきた子どもたち。

そりゃ年長になって解放されたら
荒れないわけがないでしょう。

だから、これはクラス崩壊ではないんだ。

もし、これを崩壊と呼ぶのなら
崩壊させたのは、保育士だ。

だから保育士であるオレが責任を持って
この子たちを、受け止めてみせる。

子どもたちは荒れたくて荒れてるんじゃない。


自分たちじゃどうしようもできない
モヤモヤを…苛立ちを…

……ぶつけているだけなんだ。



だってこれは…




甘えさせてくれなかった先生たちへの

話しを聞いてくれなかった先生たちへの

一方的に決めつけてきた先生たちへの






子どもたちによる






反乱だから



               第3話に続く

マガジンにも掲載中↓

ここまで読んで下さりありがとうございました🙇


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