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一歩踏み込め、そこは極楽

合気道の先生から習った言葉です。
元は剣術の道歌で、宮本武蔵とも柳生石舟斎とも言われ、言い回しも様々あるようです。
敵に相対するとき、攻撃を恐れて離れていると返って危なく、覚悟を決めて一歩踏み込むと逆に安全であったり反撃の機会が訪れるという意味合いです。
多くの攻撃は加速度と遠心力を利用しますので、踏み込むことでその発生の手前で押さえられるという考え方です。
円運動も中心に近付くほど一周当たりの移動距離が短くなります。
速さ=時間×距離ですから、中心ほどゆっくり動いているので、近付くほど弱くなっているのだと考えられます。

さて、本題です。
経営の方針がコロコロ変わる、上司の意向に振り回されるといった仕事の不満はないでしょうか。
指示に忠実に動いているのに大元の指示が変わっては現場は大変です。
想像してみてください、そんな時のあなたの立ち位置や姿勢はどこにあるでしょうか。

朝令暮改の環境に振り回されたくないからと、敢えて距離を置いたスタンスになっていないでしょうか。
中心から離れれば離れるだけ遠心力が強くなっていくように、中枢から離れるほど変化は細かく激しくなっていきます。
何故なら本質的な意図も、そこから始まる予備動作も見えず、予測が立たないからです。

一歩踏み込め、そこは極楽。
上司の意図を知る為に、経営の方向性を知る為に、一歩でも多く踏み込んで理解しようとすると見えてくることがあります。
今まで気付かなかった意図を知れば動きやすくなるでしょうし、行き当たりばったりだと分かってしまったとしても危機管理の方向性が明確になります。
見えてくるものが些細なものでも、何もわからず振り回されるよりもずっとましな状況になることでしょう。

一歩踏み込め、そこは極楽。
覚悟の一歩は新しい変化を生むことでしょう。


古の剣豪の言葉に因んでこのような話を書きましたが、現代を生きる私たちには双剣を操る赤い弓兵が残したこんな言葉もあります。
「おい、その先は地獄だぞ」
覚悟を持って踏み込んだ先にあるのは更なる地獄かも知れません。
そう、踏み込む覚悟を持つということは、踏み込んだ先のことも覚悟するということなのです。
臆病風に吹かれたなら踏み込むよりも背を向けて全速力で逃げる方が良いでしょう。
ジリジリと距離を測りながら素早く走り去る猫のように。

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