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体験価値の加点と減点

製品には大きく分けて2つの価値があります。
機構や構造が物理的な効果としてもたらす機能的価値と、心理的に影響する情緒的価値です。
「モノ」から「コト」へ消費が移っているとは20年以上前から言われ続けていますが、コト消費の象徴として体験価値が追加されました。
体験価値は機能と情緒のバランスで成り立っています。
どちらか一方が欠けても成り立ちません。

メーカーのものづくりの発想にも体験価値は取り込まれており、製品を手にしてから使用し、評価を終えるまでの一連のプロセスの中で驚きや感動を盛り込むことで、ブランド価値を高めたり、ファンを増やそうとしています。

体験価値を高めるというと、一見顧客価値を高めるようにも見えますが、必ずしもそうではない場合があります。
お洒落な包装、グリーティングカード、開梱儀式を楽しませる様々な取り組み、そのコストを支払っているのは誰でしょうか。
勿論顧客自身です。
素敵な体験の為に支払う対価と、体験後の廃棄等の負荷を考えると必ずしも高い顧客価値を提供できているかは分かりません。

価値には無ければ減点されるものとされないもの、あることで加点されるものとされないものがあります。
機能的価値の有無は顧客と流通双方の意図を汲んだ場合、無くて減点になるものが少なくありません。
体験そのものを提供する場合は体験価値そのものが提供価値ですので加点もしくは減点の対象になります。
ところが、製品を提供するメーカーの場合は体験価値が必ずしも加点にならない場合がありますし、なくても減点にならない場合もあります。
例えばApple社が全ての製品のパッケージの再生紙比率を高めて段ボールの簡易包装に変えたらどう思うでしょうか。
開封時のワクワクは無くなるかもしれませんが、ブランドを毀損することにはならないでしょう。
むしろ環境配慮型の企業として名声を高めるかもしれません。
これは開ける時のワクワクという体験価値を失っても、再生可能部材を使い廃棄を簡易にするという機能が加わっている為、マイナスに働いていないからです。

ブランディングを考えた時、情緒的価値を高めようとした時、体験価値の向上を取り組みたくなります。
ですが、まずは提供する製品の本質的な価値を考え、追加しようとしているものの有無が加点や減点の対象になるかを考えましょう。

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