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一人の部屋で目を覚まして

日曜日。よく晴れた午後16時30分。部屋の中にオレンジ色の光を取り込んで、カーテンは開けたまま。私はひどく眠たかった。一休みしようと思い、セーターを脱ぎ、ジーンズを脱ぎ、ベッドに寝転んだ。大きく伸びをした。首筋から今朝つけた香水の香りがした。カーテンの隙間からは、オレンジ色の光が長方形に入り込んできた。外はまだ明るい。20分だけ眠ろう。20分だけなら、まだ窓の外は明るいだろう。そう思って眠りについた。アラームが鳴って、でもまだ体は重くて。でもまだ外は明るくて。安心して眠って。またアラームが鳴って。外は少しだけ光を和らげていたけど、まだ明るかったから安心してまた眠って。そしてしばらくアラームの音を見送って、ふと目が覚めたとき、外はすっかり暗くなっていた。カーテンから漏れる光は、人工的な光。コンビニの看板と信号機の点滅。暗闇に慣れた目が部屋の輪郭をなぞる。蛍光灯の丸みがよく見える。影のグラデーションがやけに鮮明に見える。暗闇の粒子が見える。扉の影。カーテンの影。心臓が少しだけ早く脈打っている。まるで追い立てられるように目を覚ました。でも私は一人で。この部屋は真っ暗で。私は一人だった。体が重くベッドに沈んでいる。寂しい気がする。心臓が鐘を鳴らしている。心はここにあったんだ、と思う。いつも寂しさや悲しみを上手く感じることができない。だから時々、こうして追い立てられるように目を覚まして、感情はここにある!ここにある!と私は訴えられる。感情に訴えられる。昼間はあんなに眩しかったのに。明るくて眩しいくらいだったのに。強い光はそれそのものが過去の色を帯びている。光を受けたそばから私たちは過去に飛ばされた。現在に拒否された。いつの間にか。抗うことなんてできなかった。そんなことは誰も教えてくれなかった。みんな、本当のことを知っているのに、知らないふりして生きている。そんなのどうして許せるんだろう。感情はどうして私を責めるんだろう。遠くで車が行き過ぎる音。音。音。窓の外は忙しなく時が流れているのに、人々は生活しているのに、私のこの1人の部屋は、まるで私さえも拒むように静かだ。

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