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【IDと教員研修13】問題解決学習の設計に活用 ”学びの第一原理”

前回の記事では,M・デイヴィッド・メリルが提唱した,ID第一原理について考えました.様々なよい教材の共通点を集めて,要素を抽出し,基盤的原則として位置付けたということでした.

第一原理…と聞いた時,私は,第二は?第三は?と考えてしまいましたが,ここでいう第一とは,「最初におかれる原理」ということですね.インストラクショナル・デザインで設計する際に,その筆頭となる代表的な原理ともいえます.

この「第一原理」について,学びの視点から考えた人がいます.
デイヴィッド・ジョナセンです.


「問題解決」が最も意味のある学び

これが,ジョナセンが思索し,深め,原理にまでまとめるまでに至った考え方です.

日常において,当たり前に存在する「問題」
- 家の中に鍵を置き忘れたけれどオートロックがかかってしまった.
- 電車に乗り遅れた
- 今日の夕飯が決まらない

人によっても大小の異なる問題が,日常にはいくつも存在します.
多くの場合,それらの問題について,人は過去の経験や情報収集によって解決をします.

- 合鍵を持っている家族に連絡をする.
- バスやタクシーに切り替える
- パーソナライズドされたレシピサイトでおすすめにアクセスする
といった具合です.

「問題」を「解決」するための側面

これらの問題は,なぜ解決できたのか.なぜ解決策を導き出せたのか.そもそもこのような「問題」という事象にはどんな側面があるのか.

このような,「問題」そのものを中心に置き,そこから4つの視点を用いて「解決」できそうな活動を考える,これが学びの第一原理です.

類推する(Analogizing)

解決に必要なアイデアを,どこかの場面の類似性から考えてみたり,別の場面との共通項目を書き出してみたりすることが考えられます.
電車という移動手段が無理→他の移動手段なら可能?
といった考え方です.

モデル化する(Modeling)

もし〇〇のようにしてみたら…と理想的な形での解決状況を考えてみることが考えられます.
モデル,ですから,そこに現実的な要素や非現実的な要素が混じりあうこともあるでしょう.

ただ,形として解決の道筋が見えることは,問題を分解して並べなおしていくように,「どこをどのように改善すれば解決するか」を探し出すヒントになります.

因果関係を説明する(Reasoning causally)

問題の中にある因果関係をみる,という側面です.
原因は何か?
結果はどうなるか?
疑問点は何か?
といった視点で,問題を分解することで,その関係性を説明し,解決を論理的に考えることができます.

主張する(Arguing)

問題解決における過程,原因,結果等について,論証的に主張する活動を行う側面です.

「こうなれば解決する」という主張は,上述の問題場面ではあまり起こらないかもしれません.

例えば,解決策が複数あるような場合では,この「主張」という役割が明確化されます.ここでいう主張は,論証的なスキルによるものです.前提から論を進めて,結論まで導き出すことです.どのように解決するか?ではなく,問題解決を行う活動を設計する際に取り入れることで,その解決の確からしさを考えることができそうです.

教員研修においては…

学校にも,様々な問題場面が存在します.
今回の原理は,世界に様々に存在する問題を解決するための活動を検討するための視点として適しています.
生徒指導に関する問題であれば,似た場面はないか?(類推),学校全体でどんなスキームがあるか?(モデル化),原因と結果はどうなるか?(因果関係),その解決策はいつどこで主張されるか?(主張)といったことが考えられます.

何かの問題を解決するための検討方法そのものを研修していくことに役立ちそうです.

問題解決そのものの側面について考えてきました.
次回は,経験から学ぶことについて考えていきましょう.

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