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【IDと教員研修9】「できそうだ!」を生む工夫 Confidence

前回の記事では,では,ARCSモデルにおけるRelevanceを確認し,実際の教員研修への生かし方を考えました.

今回は,Confidence(自信)についてです.


Confidenceにも,3つの要素があります(IDの道具箱参照).
1つめは,「学習要求(Lerning Requirement)」.
2つめは,「成功の機会(Success Opportunities)」.
3つめは,「コントロールの個人化(Personal Control)」です.

それぞれ,教材開発をする際に,どのような工夫ができるでしょうか.まずは3つの言葉のイメージを自分なりに広げてみてくださいね.

学習要求(Lerning Requirement)

ゴールインテープをはる,という工夫です.
本題に入る前に,あらかじめゴールを明示し,どこに向かって学習をするのかを意識させることが考えられます.
学習目標を伝える,学習成果のモデルを見せる,研修後の自分をイメージさせるということができそうです.

「学習」は,わからないことを知り,わかるようになるためのステップや道筋を描けることが大切です.自分が今何を知っているのか,何ができるのか,何を学ぼうとしているのかを知り,ゴールまでどのくらいのステップがあるのかを自覚する・・・こんな場面があると,研修のゴールを描きやすくなります.

ギャップを確かめる,という言い方もできるでしょう.
ゴールまでのギャップ,実力と目指す姿とのギャップ,想像していたことと学ぶことの現実とのギャップ・・・などです.
このギャップは,大きすぎると目標が霞んでしまいます.ほどよいギャップ,ステップを描けそうなギャップにするためには,学習者と対話しながら,ギャップの距離感を見極めていくこともできるでしょう.

成功の機会(Success Opportunities)

一歩ずつ確かめて進ませる,という工夫です.
確かめる内容は,自分の進捗状況です.他者と比べる必要はありません.
ゴールまでの距離が,今どのくらいなのか.
どのくらいのステップにまで進んでいるのか.
モニタリングできるような手立てが考えられます.進捗管理をするためには,学習者にとってのガイドを使うこともあるでしょう.

確かめるときには,失敗が起こることも考えられます.TOTEモデルにおいても,操作(学習活動)が終わってテストを受けても,うまくいかないことがあるかもしれません.

「失敗しても大丈夫」「チャレンジできるから大丈夫」という環境づくりも,成功の機会を保障する工夫になります.

余談です.
以前大好きな演劇をみていたら,「すぐ人のことを怒ってしまう」という役がありました.小さなミス,小さな指摘が気になってすぐに怒ってしまう,という役です.その人は,自分が負けたりバカにされたりしたと思うと,なんでもかんでも怒ってしまいます.それが嫌で,周りの人に隠そうとしますが,すぐバレてしまいます.ジャンケンでもなんでも,負けるとすぐ怒ってしまいます.

そこで,周りの人が次のようにアドバイスしました.

「怒らなかったら,勝ちということにすれば…」

これにより,気持ちを落ち着けたら,自分は勝つことができると知り,怒りを抑えることがよい気持ちであることを理解します.

なんということはない例ですが,私自身は,このような,ネガティブな側面も,一歩ずつ成功の機会に変えてあげることで,自信がついていくのではないかと思います.

コントロールの個人化(Personal Control)

自分でコントロールできる機会をつくる,という工夫です.
成功の内的帰因を育てる,という言い方もあります.

例えば,問題に取り組む際に,全てが指示通りであるより,学習ペースを自分でコントロールできた方が,解決したときに達成感を得やすいでしょう.問題解決は,幸運や偶然ではなく,実力でできた,という実感が生まれるようにします.

難易度を変えられる,必要な資料を自ら探せる,ということもコントロールの要素です.自分なりにカスタマイズしながら学べる,まさに個別最適な学びの様相ですね.

しかし,全てをコントロールできることは,同時に,何もかも意図的でなくなってしまう危険性があります.つまり,「放任指導」となってしまうことも考えられるからです.

学習者に委ねるのは何か.学習者が自信をもって取り組めることは何か.
研修では,これらを事前に調べたり,自覚できるようにしたりすることも手立てになるでしょう.

ARCSのCまで来ました.次回は,Satidfactionです.

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