見出し画像

【IDと教員研修8】自分との繋がりをつかませる仕掛け.Relevance

前回の記事では,ARCSモデルにおけるAttentionを確認し,実際の教員研修への生かし方を考えました.

今回は,Relevance(関連性)についてです.


キーワードは「やりがい」

「やりがいがありそう」と思えるように仕掛けを工夫するのが,Relevanceです.

Relevanceにも,3つの要素があります(IDの道具箱参照).
1つめは,「親しみやすさ(Familiarity)」.
2つめは,「目的指向性(Goal Orientation)」.
3つめは,「動機との一致(Motive Matching)」です.

それぞれ,教材開発をする際に,どのような工夫ができるでしょうか.まずは3つの言葉のイメージを自分なりに広げてみてくださいね.

親しみやすさ(Familiarity)

自分の味つけにさせる,という工夫です.
学習者の関心や課題意識に合わせて,自分の中にある事例と結びつくようにする投げかけが考えられます.
「あなたの場合はどうですか」という言葉掛けや,「今回の講座は,みなさんの学習の〇〇と〇〇につながっています」と明示的に伝えることができそうです.

身近なイラストも効果的です.あくまでインナーな研修になってしまいそうですが,例えば,学習者の誰もが共感してイメージできるような某有名漫画の名台詞を引き合いに出したり,某有名映画の一場面と結びつけて,それを例示にするなど,テクニックとして使えそうです.

目的指向性(Goal Orientation)

目標を設定し目指せるようにする,という工夫です.
課題を示して,これを解きましょう!と投げかけるだけでは,受動的なままです.
学習者が,研修を通して学びたいことをイメージしたり,自分の中にある課題を明確に意識したりする手立てを行います.

目標があいまいなこともあるかもしれません.
そんな時こそ,他者と共通の話題を通じて自分の目指すところを明確にしたり,複数の中から選んだりできるようにすることが大切です.

意外なことに,目標を設定する際に,「自分の目標はなんでしょう.考えてみましょう」と,そのまま伝えている場面があります.確かに,大人が自分の課題意識を掘り下げるという意味では,そんなに準備は必要ないのかもしれません.しかし,目標を設定するにも,材料が必要です.何をもとに,何について課題意識をもつのか,そして課題をクリアするためにはどんな学習成果をねらうのか,といったことを考えるためには,やはり視点や見通しにつながる材料を少しでも想起できるように工夫したいところです.

この場合の材料とは,どんな「もの」なのでしょうか.
多くの場合,それは「経験」だと考えます.事前に課題意識を高める資料等があれば素晴らしいことです.例えばある時の新聞記事や,ニュースの話題などを導入で挟むことで,多くの情報が想起され課題意識をもちやすくなります.
ただ,このような資料を読んだ場合も,想起されるのは「経験」です.自分とって,これから学ぶこととの関連を探る際,大人にとってはまずは経験に紐づいた内容が一般的だと考えます.

回りくどくなりました.つまり,「経験」を用意できるようにすることが工夫になるということです.
材料と聞くと,特別な新規の素材というイメージがあるかもしれませんが,「経験」はその人自身の内にあるものなので,材料は掘り起こされるイメージです.問うことで自覚できるような,そんな工夫が考えられそうです.

動機との一致(Motive Matching)

プロセスを楽しませる,という工夫です.
「この方法で,この問題について,この時間までに,このくらいの量で解決しましょう」と指示することの,逆です.
一方的に決めずに,選択肢を設けたり,自由裁量について保障したりすることが考えられます.

当然,一律の指示の方が見通しをもって課題解決ができるという場合も考えられます.しかしそれは,多くの場合,一定の答えが決まった内容について,一定のレベルに達すれさえすればよいという基礎的な課題にとどまるでしょう.

特に教員研修において,例えば授業づくりのような内容であれば,答えが一つに決まることはほぼありません.流派等はあれど,指導法は先生の数だけ存在するはずです.子供においても,「個別最適な学び」の重要性が指摘されていることと同様,教師においても,学習が個性化する研修にしていきたいものです.

さらに,「楽しませる」という言葉がキーワードです.
「自分なりにやってみてください」という指示だけでは,四苦八苦することになる人もいるかもしれません.
このようなことが想定される場合は,アドバイスやヒントなどを,見たい人が見たい分,見たい時だけ見ることができるような環境の工夫が考えられます.自分なりの方法がわからない時には,無理させる必要はありません.誰かの真似をしながら,誰かの考えに触れながらやってもよいことを,むしろ推奨します.これも,個別最適な学びが孤立した学びにならないようにと考える,協働的な学びの側面ですね.

次回は,ARCSモデルのC(さて,なんの略だったでしょう)について考えます.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?