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【IDと教員研修7】Attenntionで導入の工夫を行う

前回の記事では,ARCSモデルについて概観しました.
具体的に1つずつ掘り下げて,教員研修への生かし方を考えてみましょう.


Attentionの要素は3つ

教材を開発するとき「面白そうだな」と思うような導入になれば,学習への意欲付けに繋がります.何をもって「面白そうだな」となるのかを考える視点,それがAttentionです.

Attentionには,3つの要素があります(IDの道具箱参照).
1つめは,「知覚的喚起(Perceptual Arousal)」.
2つめは,「探究心の喚起(Inquiry Arousal)」.
3つめは,「変化性(Variabillity)」です.

それぞれ,教材開発をする際に,どのような工夫ができるでしょうか.まずは3つの言葉のイメージを自分なりに広げてみてくださいね.

知覚的喚起(Perceptual Arousal)

目をパッチリ開けさせる,という工夫です.
新しい発見がありそうだ,考えてみたくなる,もっと知りたくなる,といった工夫ともいえます.

授業でも,導入ではさまざまな工夫があります.図画工作科では,タイトルの工夫をするだけでも,子供たちは興味津々で盛り上がります.
例えば,「紙を…」とだけ板書した後,「紙を,今日はどうするんだろうね」と尋ね,子供達から面白おかしい想像を引き出した後,「立てると」と追記します.
「紙を…立てると」どうなるんでしょう.紙は立つんでしょうか.どうやったら立つんでしょうか.立たせ方にはコツがあるんでしょうか.立たせ方は何種類くらいあるんでしょうか…

と,こんなふうに,タイトルだけでもさまざまな工夫ができます.今の場合は,段階的に示すことで興味を持たせるという工夫でした.これを,一部を隠す,パズル的に出す,クイズから入る,といったこともできます.少しの工夫でいろいろできそうです.

教員研修であれば,多くの場合事前に内容が示されていることがあるので,そのままのタイトルでは惹きつけられません.「ポイント丸わかり!忙しい先生のためのスピード仕事術」のようなタイトルなら,少しだけ目がパッチリする・・・かもしれません.

探究心の喚起(Inquiry Arousal)

好奇心を大切にし,「なぜそうなるのだろう」「どうしてだと思います?」といった疑問を投げかけたり,相手がそう思うような仕掛けをつくったりするという工夫です.

例えば,「本日の内容」として,箇条書きのメニューを見せるとします.
そのままの内容でも伝わりますが,これを全て疑問系で示したらどうなるでしょう.

「スピード仕事術のコツを理解する」→「スピード仕事術のコツとは?」
という感じです.疑問系にすると,ちょっとだけ立ち止まって,考える時間をつくることができそうです.少しでも自分に引きつけて考えられるようにしたり,主体性をもてるようにしたりする工夫ができそうです.

他にも,エピソードを混ぜて教材の内容の奥深さを伝えたり,教材の内容が一目でわかるような表紙の工夫も考えられます.

私の場合は,タイトルを英訳した情報を見せ,どういう意味なのか,どうしてその訳になるのかを聞いて考えてもらうことがあります.例えば,教員研修は,「Teacher's traning」となります.トレーニングって,研修なんでしょうか.イメージが少し違いますよね.だとすると,研修にはどんなイメージがあるのか.改めて考えると,少しだけ違う価値観に気づくことができそうです.

変化性(Variabillity)

マンネリを避けるという工夫です.
講義を聴き続ける,単純作業を繰り返す…これらは,学習内容によって必要な場合もありますが,多くの場合は集中力が途切れてしまう原因になります.変化を入れることで,テンポやリズムを意識して研修を計画できるようになります.

先ほどの例で示した,タイトルの英訳クイズも,毎回同じでは飽きがきます.「手を替え品を替え」という言葉のとおり,いくつかのパターンや,いくつかの引き出しによって,様々な工夫の組み合わせを生み出せるようにすることが大切です.

私の場合,クイズをするときには,いつも「誰でもすぐにわかる回答」と「少し考えないとわからない回答」を用意しておきます.前者は,アイスブレイクの時などに,ただ声を出すことが目的だという場合に使います.後者は,研修内で,数人に指名し,様々な答えを想像してその場が「もっと知りたーい」となるような雰囲気作りとして使います.

このテクニックは,あくまでもやり方の工夫なので,正直なところ,クイズの中身はどんなものでも適用できます.答えが一つに絞られそうなものは,簡単なクイズにできますし,答えが複数になったり,価値観が入り込むようなものは後者に該当します.心理クイズみたいなものも,盛り上がりそうですね.

次回は,Relevance(関連性)について考えていきましょう.

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