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取材した怪談

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私が取材した心霊的・不可思議現象の話です。
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#職業

【取材した怪談話144】夜間警備・寺院

元警備員のJさんから伺った話。 彼が若手の頃、夜勤時に会社で待機中、とある寺院から設備異常を知らせる警報が鳴った。原因を確認するため、Jさんは会社の車両で現地に急行した。警備員の巡回・点検は、単独で行う。 寺院に到着したのは、夜二~三時だった。夜間は無人のため、照明もなく真っ暗だ。敷地内の駐車場に車を停める。 その時から、何となく厭な予感に包まれていた。内心は行きたくなかったが、仕事なので仕方がない。車から降りて、歩いて本堂に向かう。防弾用鉄板が埋め込まれた五キログラムの

【取材した怪談話143】夜間警備・病院

Jさんが警備会社に勤務していた頃、先輩男性から聞かされた体験談だそうだ。 先輩が夜間の病院に点検を担当した時のこと。その病院は夜間に無人となるため、夜勤の警備員が巡回点検することになっている。警備員の巡回は、一人で実施する。 夜の一時ごろ、先輩はその病院に到着した。真っ暗の大型の病院のため、点検場所を正確に把握できない。このような場合、警備会社の管理センターに連絡して病院内の各所に設置された監視カメラを遠隔操作で起動してもらうことになっている。センターに居る担当者がカメラ

【取材した怪談話141】夜間警備・小学校

Jさんが警備会社に勤務していた頃、仲の良い直属の男性上司が教えてくれたエピソードだそうだ。 その上司が夜勤時に、とある小学校の外周点検に赴いた時のこと。外周点検とは、外から校舎を目視し、壁、窓、ガラスなどが損壊していないかを点検する業務である。特に通報がなくても、夜間に巡回して点検する契約になっている。その小学校は夜勤の際には必ず点検に行くため、建物の配置や構造は熟知していた。 いつものように校舎外周をぐるりと点検したところ、職員室のカーテンから明かりが漏れていた。時刻は

【怪談実話89】見守り

前話に引き続き、獣医師Nさんから聞いた話。 彼が獣医になって2年目の6月、勤務していた動物病院にチワワが救急搬送されてきた。高齢の雄だ。時刻は20時ごろだった。 速やかに診察・検査したところ、肺水腫と判明した。心機能の低下に伴って肺に水が溜まり、呼吸困難に陥る疾患である。即入院となり、飼い主さんには事情を説明して帰宅してもらった。 「入院して数時間後、チワワの容態が悪化したんです。心拍が低下して、チアノーゼ(舌色が紫に変色:危険な徴候)を呈してました。重篤な状態のため、

【怪談実話88】子牛

※動物に関して酷な描写が含まれますので、苦手な方はご遠慮ください。 ・・・ 男性獣医師Nさんが獣医学部生だったころ、2年次の必修科目『解剖学実習』で子牛を解剖したことがあった。 解剖学実習の流れは、以下のとおりだ。 ・生きている新鮮な子牛を、学生が屠殺する。 ・皮を除去し、筋肉をスケッチする。 ・筋肉を除去し、内臓をスケッチする。 ・内臓を除去し、骨格をスケッチする。 ・廃棄処分。 実習は、解剖専用の実習室(解剖実習室)で行われる。1日では全て終わらないため、屠殺し

【怪談実話86】青木ヶ原樹海1(山梨)

元陸上自衛官Sさんから伺った話。 2015年の秋、深夜2時ごろ。 彼が所属していた部隊は、夜間戦闘訓練の最中だった。 訓練の内容は、最初にヘリコプターで山梨県の青木ヶ原樹海、いわゆる富士の樹海の上空を移動し、所定の目的地に降下後、想定上の敵部隊(実際は他の自衛隊員)と模擬交戦するというものだ。 どの地点にどのくらいの敵の数が配置されるかはSさんらには知らされておらず、駐屯地の作戦本部が把握・管理している。何か異状事態に陥れば、本部に無線で逐一連絡して指示を仰ぐ規則だ。

【怪談実話85】移転後のエステサロン

「もともと霊感があったんですが、人に触れる仕事してから、ますます色んなことが見えたり、起こるようになってきました」 エステティシャンのAさんが、教えてくれた話である。 彼女が20歳のころ、男性社長が経営するエステティックサロンで働いていた。 そのサロンでは、スチーマーの電源を消しても蒸気が出続けたり、カーテンの隙間から小柄な女性の霊(全身像は確認できず)が覗いてきたりといった怪現象が生じていた。だが彼女によれば、これらの現象は「可愛いもの」だった。 そのサロンは10人

【実話怪談73】紳士

看護師Rさんから、病院の内科病棟で勤務していた時の体験を教えていただいた。 ・・・ 今から5年前、外科病棟から内科病棟へ異動となった時の不思議な体験です。 内科病棟で半年入院していた患者Aさんがいました。 Aさんは70代の男性で、とても紳士的でした。挨拶をしっかりして頂き、その際もニコニコしていました。またいつも労いの言葉をかけて頂き、口調もとても穏やかでした。 その方は余命宣告を受け、歩くことも食べる事もできなくなっていました。 そんなある日、夜勤業務をしていた午

【実話怪談72】サイン

看護師Rさんから、病院の外科病棟で勤務していた時の体験を教えていただいた。 ・・・ 外科病棟でも、人生の最期を迎える患者さんがたくさんいました。 ある夜勤の日です。 個室部屋で亡くなられた70代の男性患者Aさんを、先輩看護師と一緒に霊安室へお見送りしました。夜中の1時ごろです。そのすぐ後、彼が入院していた個室に、状態の悪い女性患者Bさんを移動させました。 その後、夜中2時すぎ、先輩と一緒にその個室へ見回りに行ったのですが……。暗がりのベッドに横たわっていたのは、さっき

【実話怪談71】夫の写真

看護師Rさんから、病院の外科病棟で勤務していた時の体験を教えていただいた。 ・・・ 外科病棟でも、人生の最期を迎える患者さんがたくさんいました。 今から10年前のことです。 ある日、20時を過ぎた頃、60代の女性患者Aさんの状態が急変し、すぐにご家族に電話を入れました。 その際にご家族から、こんな返答をいただきました。 「5分前に母(Aさん)から電話があって、亡くなっている父の写真を持ってきてほしいと言われました。今日は面会時間が終わっているから、明日仕事が終わった

【実話怪談69】訴え

「長らく放っておいた人型の物には魂が宿っているかもしれないので、捨てる時にはご注意を」 そう戒めるのは、エステサロンを経営する女性Rさんだ。 彼女がサロンを開業するにあたり、知人が経営する美容院の2階を借りることになった。当時、2階は物置部屋として使われていたため、開業前に知人と一緒に片付けをしたそうだ。 片付け当日、ふたりでゴミの分別や掃除に勤しんだ。 物置部屋には、業務用の備品やカタログなどの資料の他、美容院に特有の物品が保管されていた。 マネキンである。 ヘアカ