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取材した怪談

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私が取材した心霊的・不可思議現象の話です。
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2021年7月の記事一覧

【取材した怪談話155】共犯

理香さんは、フランス人形を九体所持している。ひとりひとりに名前を付けており、毎日の手入れを欠かさない。人形と触れ合う時間は、何物にも変え難い至福の時だ。 これらの人形は、五段のコレクションケースの中で保管されている。下から一段目に一体、下から二段目から五段目まではそれぞれ二体ずつ並べて配置していた。配置は固定していた。段ごとにガラス戸が設けられている。以下の図参照、〇は人形を指す。 常にケースを閉め切ったままだと人形が可哀想だと思い、昼間はケースのガラス戸を少し開けて空気

【取材した怪談話154】新車でドライブ中……

※動物好きな方は閲覧注意 ・・・ Aさんの父親が大学生の頃、苦労してバイトに励み、紫色の軽自動車を購入した。その記念にと、友人を含めて四人でドライブに出かけたそうだ。父親の運転で、昼過ぎに出発して少し遠方の目的地に向かった。 好天のもと仲間と歓談しながら道路を運転中、左カーブに差し掛かったときだった。路面の左側に、何か黒いものが視界に入った。それが微動だにせず横たわる猫だと分かった時点では、もう車を避けきれなかった。 がこん、と、柔らかい肉塊を左タイヤが乗り越える感触

【取材した怪談話153】物色

デザイン系の専門学校に在籍していた女性Aさんが、デザイン画の実習を受けていた時の話。 その日の実習では、各々が洋服のデザイン画を描いて、教壇に座っている担当教員に提出することになっていた。実習には四十人ぐらいの学生が参加しており、七~八割が女子学生だ。皆もくもくと描画しており、教室内は試験中のように静かだった。 そんな中、Aさんの隣に座っていた女性Bさんが突然、プッと小さく吹き出した。何かに対して思わず笑ってしまった、そんな様子だ。Bさんは、いわゆる霊感体質者だ。 「ど

【取材した怪談話152】謎部屋

え? 怖い話ですか? 不気味な体験というか、場所がありますよ。オバケも出ないし、怪奇現象があったわけでもないんですが、そんな話でもいいですか? わたし、学生時代に宗教系の学校に通ってたんです。部活やってて、部室がある棟によく出入りしてたんですよ。その棟に地下があるんですが、そこは全然使われてないんです。ずっと入ってみたいなと思ってたんですが、なかなか行く機会がなくて。立入禁止になってるわけじゃないんですよ。 で、ある日の昼休みに、友達と五人ぐらいでその地下に降りてみたんで

【取材した怪談話151】八王子城跡/たっちゃん池(東京)

「夜景を見に行こう、って彼氏がドライブに誘ってきたんで付いていったんですが、到着した場所が心スポ(心霊スポット)だったんです」という、玲奈さんの体験談。その心霊スポットとは、東京都八王子市に位置する八王子城の城跡だ。 【八王子城】 武蔵国(東京都八王子市)に存在していた山城。北条氏の本城である小田原城の支城で、関東西部に位置する軍事上の拠点であった。1590年、豊臣秀吉の軍に加勢した前田利家らの軍勢に小田原征伐の一環として攻め込まれ、陥落した(八王子城合戦)。 落城間際、城

【取材した怪談話150】青い作業服の男

本エピソードについては、怪異の本質的部分を変更しない程度で事実を一部変更しています。人物・場所の特定を防ぐためです。 ・・・ 宏明さんは、法律関係の事務所で弁理士として働いている。弁理士とは、特許、商標などの知的財産に関する国家資格者だ。彼は主に、中小企業の特許戦略のアドバイス、出願や訴訟の代理などに従事していた。 十年ぐらい前、とある中小企業から知的財産に関する無料相談の依頼が舞い込んだ。無料相談の場合は通常、企業の人間に事務所まで来てもらうケースが多いのだが、諸々の

【取材した怪談話149】離婚の理由

Aさんのママ友に、Yさんという女性がいる。Yさんはいわゆる霊感体質で、霊媒師に「あなたは霊媒師になるべき」とお墨付きをもらっているほどだ。 ある時、そのYさんから電話が掛かってきて「話を聞いてほしい」と切り出された。 「最近さぁ、旦那が帰ってくるのが遅いことが多いんだよね」と、低いトーンで話し出すYさん。Yさんは、夫の転勤に伴って引っ越して3〜4ヶ月が経過していた状況だった。 冗談混じりに、Aさんは訊いてみた。 「えっ、もしかして浮気?」 「うん、浮気だよね」 声の