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取材した怪談

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私が取材した心霊的・不可思議現象の話です。
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2021年6月の記事一覧

【取材した怪談話148】とびっこ(成人向け)

※成人向けのエピソードです。 ・・・ 女性Aさんは、女性Sさんと同居している。 本エピソードは、同居人SさんがSMの女王様業をしていた時の話である。 ぶぅん、ぶぅんぶぅんぶぅん……。 二人がリビングで寛いでいた時、どこからか静かな振動音が聞こえてきた。耳をそばだてて音の在り処を探ったところ、Sさんの仕事用バッグから聞こえてくる。Sさんが口を開いた。 「〈とびっこ〉が勝手に動いてるみたい」 〈とびっこ〉とはアダルトグッズの一種で、小型のリモコン操作式ピンクローターの

【取材した怪談話147】指示

女性Aさんが通っていた中学校では、コックリさんが禁止されていた。上級生がコックリさんを実行した結果、精神異常を呈して入院しているという噂があった。その真偽は不明だが、禁止されていたのは事実だ。 それにもかかわらず、中学一年のある日の放課後、Aさんは友達B、C、Dさんと四人でコックリさんをした。教室で行うとすぐに教員に見つかる可能性が高いため、教室に隣接する生徒会室の前の廊下で執り行うことになった。廊下に太い柱があり、その陰に身を隠せるためだ。 その時のコックリさんには、A

【取材した怪談話146】とばっちり

女性Aさんが中学生の時の話。 ある日の五限目と六限目の間の休み時間に、クラスのノリの良い男女六人ぐらいのグループが教室の一角を陣取ってコックリさんを始めた。 「お前ら、ふざけてコックリさんやるなよ」 その様子を傍から見ていたB君が、真顔でクギを刺した。彼は地元では著名な寺院の跡取り息子だ。 だが彼の忠告は受け入れられず、コックリさんは速やかに進行された。 それは、開始数分後のことだった。 ぱらぱらぱらぱらぱらっ。 教室中に、軽い音が響き渡る。 B君が身に着けていた数

【取材した怪談話145】死神の部屋

「死神の部屋、というのがあるんです」 声を落としながら、Jさんは語り始めた。 彼の母親は看護師で、数年前に建てられた病院で勤務している。 その〈死神の部屋〉は、ある六人部屋の病室だそうだ。自力歩行が困難な高齢患者が割り当てられる病室だ。その病室の中には、個室トイレが設けられている。 「母が夜中に巡回する時、その病室の個室トイレの電灯が点いていることがあるみたいです。暗がりの中、トイレの扉の下の隙間からオレンジ色の光が漏れているのがすぐ分かるそうです」 そのトイレの電灯

【取材した怪談話144】夜間警備・寺院

元警備員のJさんから伺った話。 彼が若手の頃、夜勤時に会社で待機中、とある寺院から設備異常を知らせる警報が鳴った。原因を確認するため、Jさんは会社の車両で現地に急行した。警備員の巡回・点検は、単独で行う。 寺院に到着したのは、夜二~三時だった。夜間は無人のため、照明もなく真っ暗だ。敷地内の駐車場に車を停める。 その時から、何となく厭な予感に包まれていた。内心は行きたくなかったが、仕事なので仕方がない。車から降りて、歩いて本堂に向かう。防弾用鉄板が埋め込まれた五キログラムの

【取材した怪談話143】夜間警備・病院

Jさんが警備会社に勤務していた頃、先輩男性から聞かされた体験談だそうだ。 先輩が夜間の病院に点検を担当した時のこと。その病院は夜間に無人となるため、夜勤の警備員が巡回点検することになっている。警備員の巡回は、一人で実施する。 夜の一時ごろ、先輩はその病院に到着した。真っ暗の大型の病院のため、点検場所を正確に把握できない。このような場合、警備会社の管理センターに連絡して病院内の各所に設置された監視カメラを遠隔操作で起動してもらうことになっている。センターに居る担当者がカメラ

【取材した怪談話142】夜間警備・高校

Jさんが警備員として勤務していた頃の話。 ある夏の深夜、彼は夜勤の巡回として担当エリアの学校の外周点検に赴いた。外周点検とは、外から校舎を目視し、ガラス、窓、壁面の損壊の有無を点検して巡回する業務である。警備会社と契約している小中高の学校を、一晩で巡回する。 とある高校の外周点検をしていた時、三階の一室に明かりが灯っているのを見つけた。 持参している鍵で職員用の出入口の扉を開錠し、靴を脱いで校舎に上がる。校舎内に設置された機械警備システムを確認すると、正常に作動している

【取材した怪談話141】夜間警備・小学校

Jさんが警備会社に勤務していた頃、仲の良い直属の男性上司が教えてくれたエピソードだそうだ。 その上司が夜勤時に、とある小学校の外周点検に赴いた時のこと。外周点検とは、外から校舎を目視し、壁、窓、ガラスなどが損壊していないかを点検する業務である。特に通報がなくても、夜間に巡回して点検する契約になっている。その小学校は夜勤の際には必ず点検に行くため、建物の配置や構造は熟知していた。 いつものように校舎外周をぐるりと点検したところ、職員室のカーテンから明かりが漏れていた。時刻は

【取材した怪談話140】出産予定日

Uさんの母方の叔母は、死産を経験している。 女児が生まれる予定で名前も決まっていたが、生を受けることはなかった。 女児が生まれるはずだった予定日(仮にX月Y日とする)の夜、Uさんの母方の祖母がある夢を見た。 夢の中では、祖母の母親(Uさんの曾祖母)と、5~6歳ぐらいの女児が手を繋いで歩いていたそうだ。女児の顔は見えず、誰かは分からなかったらしい。 その1年後、Uさんの曾祖母が亡くなった。 X月Y日に。

【取材した怪談話139】クレーム

「ほんっと、しょうもない話ですよ」と、何度も念押しされてようやく聞けた話。 およそ1年前、沙耶香さんは実家で昼夜が半分逆転したような生活をしていた。その夜も、自室で夜中3時ごろに目を覚まし、寝っ転がってiPhoneで映画を鑑賞していた。「確かSF系の映画だった」とのこと。 薄暗い明かりの下、音量を大きくした状態で、本体を横にして画面に見入っていた。映画の場面が、落ち着いた静かなシーンに切り替わった時。 突然、動画が停止して、画面にSiriのメッセージが表示された。 うる