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「朝陽に微睡む」

ふと見るけふの朝陽は、本当に温かかつた。
窓辺にゐる私の身体を優しく包み込むそれは、
まうゐない筈の、彼女の言葉を憶ひ出す。
青空のあひだを翔け抜ける雲々は、
刻の流れの冷徹さを知らせる。

あつと云ふ間に雲は流れて、
あつと云ふ間に日は暮れかけて、
あつと云ふ間に、人は死んでしまう。
とつくに解りきつてゐるはずだのに、
やつぱり心がちよと辛い。
ただ、悲しみに冷え込む夜にも、
いま、かうして陽が差した。

大丈夫、ちやんと生きるから、
だからあと少しだけ、
この温かさのなかで微睡まさせてほしい。

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