月草偲津久

小説だとか詩だとか短歌だとか、それで身を立てようと思い描いた成れの果て。小出しに気まま…

月草偲津久

小説だとか詩だとか短歌だとか、それで身を立てようと思い描いた成れの果て。小出しに気ままに作品公開。誰かの目に留まればいいな。現在教鞭を執りつつも、未だに書くことを辞められない25歳の若造。 Twitter @moon_grass12

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四行詩「ドッキリなら」

取り返せない時間があるから ドッキリって言葉が大好きで あの時のことも総て、凡て 笑ひ合へたならほんと良かったのに

    • 『醒めないやうに。』

      安らかな笑みを浮かべて眠るあの人は、 春の野原に一人でタンポポの隣りに立つて、 決して散らない花弁に息を吹きかけながら、 遠くなつてしまつた大切な人へ。 さよならが何度も風のやうにやつて来るのは、 あなたにも永続的に逢へるといふことで、 忘れられない歓びを花束みたいに抱きしめて、 溢れた記憶が足許に散らばるのにも気づかないのでした。 黙殺されたのはあなたの現実でせうか。 それともわたしの夢でせうか。 遠いところでひとつだけ浮かぶあの雲が、 ゆつくりこちらにやつて来る頃に

      • 四行詩「風が聲吹く」

        天命は愛も哀も等しく我らに与へ給ふ いかなる時も詠へ聲で「まだ生きてゐる」と 聲は丘を越え山も海も君のまへでは風景で やがて君も風のなかで高らかに詠ふだらう!

        • 『届きますやうに。』

          丘のうへの鐘が遠鳴りする真昼間の静寂、 その音が躓いたあなたの膝の疵口に届きますやうに。 もう歩かなくてもいいのです。 そこらの野石でほんのわずか休んではいかがでせう。 窓硝子のやうに透き通つた感情に、 爪で何度も瑕を付けやうと試みるのですが、 陽光のまぶしさに負けた私は、 瑕の有無を確認する間もなく眠りに落るのです。 真昼間は夢の前では闇に沁み込み、 私だけの舞台上には主人のゐないマイクスタンドが、 出力のしない私の言葉を待ち続けてゐるのです。 「私の言葉は腐つた未完」

        四行詩「ドッキリなら」

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        記事

          四行詩「心もとない」

          心を詮らかにしやうとすれば 言の葉の意は賽の目で 伝ふ人々各々で転じて 意義こそあれど雲のかたち

          四行詩「心もとない」

          「とり残されないやうに」

          雪の結晶を拡大すればあんなに奇麗だなんて、 教えてくれてゐたならば、きつと私は良い子でした。 潮の満ち引きと友達になりたくて、 磯にとり残されたときの歓びを忘られないのです。 真夜中の学校は卒業式よりも美しくて、 誰もゐない教室の椅子たちは支配者からの解放を高らかに唄ひ、 差し込む月灯かりは昼よりもなほ昼らしく、 この独立記念日を祝ひながら私の心を捉へたのでした。 それが刹那の幸福であつて、 陽が昇ればまた尻に敷かれるやうであつても、 一瞬の幸福だからこそ、我々はより確実に

          「とり残されないやうに」

          「踊らされないやうに。」

          あの頃奇麗だつた踊り子の衣裳も、 もうすつかり青ざめてしまつて、 月の凪い夜だけならとこつそり、 影のない陰が舞を捧げてゐるのです。 「しあはせな人生を送りませう!」 にんまりとした先生の口からは、 よだれのやうな讃歌が止め処ないので、 思はず堪へた嘔吐きが気づかれないやう必死で、 美しい黒板の文字がずつと思い出せないのです。 心の重さを知りたいから、放課後は 電子秤のうへにボールペンを置いて、 あとは指先を乗せてみたのですが、 数値は変はらず「21g」を表示しつづけるの

          「踊らされないやうに。」

          四行詩「春聲」

          枯れ枝そぞろに春に手を 伸びる吟聲、なに想ふ 誰が応ふれば和するか 吾れ唄へれば応ふるか

          四行詩「春聲」

          四行詩「刻吹く」

          軛はやがて風と朽ち 草生す地となりませう 人の魂緒も刻と霞み 夢を和する歌枕となりませう

          四行詩「刻吹く」

          四行詩「鳥の詩」

          もしも私、空を自由に飛べたら 大切なものだけ右脚に括つて、 左脚は自由にさせておきます。 だつてこの先も離したくないから。

          四行詩「鳥の詩」

          四行詩「樹木に傚ふ」

          かうして僕らはひとりだ 草花は枯れて、鳥は遠く去つた 一面真白なこの荒野に 突き立てる足はまだ折れてゐない

          四行詩「樹木に傚ふ」

          四行詩「待ち人は来ず」

          なにかを抱えることってね、 実は偉いやうで悲しいことなんだよ。 気づかないうち私たちやっぱり子供で、 あたたかい虚しさだよ。

          四行詩「待ち人は来ず」

          四行詩「風が呼ばふ」

          夏影が目を差すごとに 僕のあの日が還つてくる それはまるで欠片で 水しぶきのやうに明滅する

          四行詩「風が呼ばふ」

          四行詩「寂しく彩色く」

          緑の木陰でちらちらと 光りの粒が降りてくる それは座つた僕の肩に 手を置く君の温もりに似て

          四行詩「寂しく彩色く」

          四行詩「悔い」

          私はいつも怖気づいてしまつて 春が往くのに耐えられない 桜も君もゐなくなつてから 悔いては蝉と共に啼いてゐる

          四行詩「悔い」

          四行詩「不幸論」

          晴ればかりだと枯れてしまうから やつぱり草木に雨は必要だ 幸福ばかり追ふ我々もきつと同んなじで 時々不幸が必要なのかも ほんのちよつぴりね

          四行詩「不幸論」