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「秋夜」

秋の嵐は夏を殺した。
火照つた頬を冷やし
夏の残りを吹き消してゆく。
綿毛の失せたタンポポのやうに
どこまでも頼りない空。
たまに煌めく遠鳴りの雷光が
夜を昼に戻さうとするのだ。
優しい月明かりを犯して
頼りなく立つ僕を曝して
嵐は嵐で生きてゐた。
          令和二年十二.十一金

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