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はじめての「ユーレイ」

YOASOBIのライブに当たったので、「はじめての」の再読とずっと聞いていなかった「はじめての」のMV鑑賞中。

今回は、辻村深月さんの「ユーレイ」とYOASOBIの「海のまにまに」

情景がきれいで、主人公が過去の私のようで、MV見て涙が出てきました。

電車は、夜の合間を縫うように走っていく。

電車から漏れる黄色い明かりが、密度の高い夜の世界を行くりと優しく切り裂く。

季節が夏から秋に変わる時に特有の透明度の高い夜の空気

たった1ページでこんなにも美しい光景が広がっていてこれだけで十分満足できる。
まだ夏すら始まっていない季節に、ひんやりと冷たい、少し湿った秋の空気を感じた。

 あれだけ好きだった吹奏楽の、楽器を見るだけで、音を聞くだけで、胸が苦しくなって鼓動が速くなって、皆の声が追いかけるように背中の向こうから響いてきて、クラリネットを支える指が震え―、その時に思った。
 私は悪くない。だから、見せてやるしかない。自分が死んで、いなくなった世界で、あなたたちがみんな、反省すればいい。

高3の夏、ずっとずーっと、そう思っていた。
サックスを吹くことがつらくて苦しくて、こんなことになるのなら早いうちにやめればよかったと。
コンクールのために。2年間ひたすら努力して下克上を果たしたのに、コンクールとかどうでもよくて。
私は、死を選ぶ勇気も、辞める勇気も、逃げることさえもできなかった。
毎日「死にたい」と思っていた。
夕日のきれいな帰り道、「道路に飛び出したらどうなるかな」なんて、毎日考えた。

だから、こんなに共感できることがあると知れただけで、
今、少し救われた。


「そんな人たちのために、死ななくてよかった」

ほんとにそうだね。

本だけで、ずっと抱えていた、暗くて苦しい過去が救われたような気がした。
それなのに、YOASOBIの、Ayaseさんの曲はすごいや。

きらきらとした夜
夕焼けのきれいな電車の中
それと全く反対の私の気持ち
小説「ユーレイ」の世界

すべてが凝縮されたMVに、胸がぎゅっと締め付けられた。

何度も何度も、清算しようと頑張ったけど、やっぱり過去に囚われている自分がいて、鮮明に思い出してしまうから、

心無い言葉や
きつく向けられた視線
陰口を言っていた空気を。

そのたびに猛烈な速さであの日へ引き戻される。
そしてまた深く傷つく。

ユーレイみたいな子、私にも現れてほしかった。
あの出来事から、今年の夏で5年たつ。
やっと現れてくれたんだと思った。
きっとこれからも何度も思い出して、必要以上に傷ついてしまうと思う。
でも、心の支えができたから、きっと大丈夫と思える。

辻村深月さんに何度救われてきたことか
YOASOBIとこうしてコラボして
小説以上の鮮やかな辻村深月さんの世界を見せてくれて
本当にありがとうございます。!!!

中高生の吹奏楽の世界は、きっとよくあることなんだと思う。
友情、恋愛だけじゃない。実力主義の女社会。
だからより複雑で、深い傷が容易にできてしまう場所だと思う。

吹奏楽の世界で傷ついてしまうと、
大好きで罪のない、本来楽しむべきものである
音楽や楽器が、大嫌いになってしまって
そんな自分を許せなくて追い込んで、負のループに陥ってしまう。

そんな罪悪感を抱えながら生きていくことは本当に辛い。
だから、吹奏楽が大好きだったのに嫌いになってしまいそうな中高生へ
届いてほしいなと思う。

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